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首こりの原因、背骨のしくみから解き明かす

2015/4/5

日経ヘルス

首こり、肩こり、腰痛、しびれや痛み…。そんな体の不調を抱える人は少なくない。背骨の仕組みを知り、若く保つ生活習慣を実践してみてはいかがだろう。人体にとって背骨は「大黒柱」。大事な機能を果たしている。一方、かなりの負担を背負っている側面も。他の生き物と比較しながら、背骨の働きぶりを知り、不調の原因を理解しよう。

■二足歩行になったことで背骨と骨盤の働きが変わった

生き物の進化とともに、背骨の姿は大きく変化してきた。

魚の背骨は、全体にほぼ同じ形の骨(椎骨)が連なっている。焼き魚を食べたあとのあの姿は、全身を波打たせて泳ぐのに適した骨格だった。

その後、陸上生活に移った動物の背骨は、地上での暮らしに適応する中で、肋骨のない領域が生じた。首の部分が「頸椎(けいつい)」、腰の部分が「腰椎(ようつい)」だ。肋骨が消えた場所は、よく曲がる。地上に出た生き物は、首を大きく動かして視野を広げ、腰を前後に曲げ伸ばししながら地面を疾走するようになった。

(イラスト:もり谷ゆみ、以下同)

だが人類では、この骨格が思わぬデメリットをもたらすことになる。「直立姿勢になったため、背骨への負担が増大。特に、脆弱な首と腰に負担が集中しました」(順天堂大学教授の坂井建雄さん)。人間が首こりや腰痛に悩む原点は、「よく動く首と腰」にあるのだ。

直立姿勢の影響はさらに、骨盤にも及んだ。四足姿勢では、背骨は「梁」のように胴体を横に貫き、そこから内臓がぶら下がっていた。だが直立することで背骨は縦に走る「柱」へ変化。そこで内臓の重さを支えるため、平板だった骨盤がボウル状の形に進化したのである。

■首の後ろの筋力が弱体化、凝視すると筋肉が緊張して固まる

チンパンジーやゴリラなど、人間と近縁の動物たちと比較すると、人間の背骨の特徴がよりはっきりする。これらの類人猿は、二本足で立つこともできるが、基本姿勢は四足だ。そのため背骨は前傾していて、その先端に頭がついている。

[左]人間の骨格は、直立した背骨が頭の重さを真下から支えるため、首の筋肉が類人猿よりずっと弱い。そのためうつむき姿勢が続くと、筋肉への負担が増えて首や肩が凝る。 [右]人間と近縁の類人猿でも、骨格は四足動物の性格が強い。上半身が前傾し、頭を支えるため首の後ろに強い筋肉が発達している。

「頭の重さを支えるために、首の後ろの筋肉が非常に発達しています」(坂井さん)

一方、人間は直立姿勢が基本。頭の重さを背骨が真下から支える構造のため、首の筋肉は類人猿よりはるかに弱いという。

パソコンやスマホを使うときのうつむき姿勢は、この弱い首に負担が集中する。本来、人間の骨格が想定していない姿勢なのだ。だから、長時間続けると首が凝ってしまうわけだ。

さらに、パソコンなどの画面を集中して見つめることも、首の凝りにつながると坂井さんはいう。「何かをじっと見つめるときは、視線を安定させるため、眼球や首の筋肉が動員されます。長時間にわたって凝視することも、首を緊張させる要因といえるでしょう」。

この人に聞きました

坂井建雄さん
順天堂大学医学部解剖学・生体構造科学講座教授。1953年大阪府生まれ。78年東京大学医学部卒。90年より現職。専門は、人体解剖学と医学の歴史、とくに腎臓および循環器の微細構造。「椎間板ヘルニアは、頸椎と腰椎で起きます。よく動く部分なので、椎間板への負担も大きいのです」。

(ライター 北村昌陽)

[日経ヘルス2015年4月号の記事を基に再構成]

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