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スマホの使い過ぎか、手の病気「テキストサム損傷」

2015/4/20

日経ウーマンオンライン

 「テキストサム損傷」という言葉をご存じだろうか? 日本で使われ始めたのは2年ほど前から。スマートフォン(スマホ)の長時間使用で指が変形したり、痛みやしびれを感じたりする病気だという。この言葉が一気にネット上で広まったのは2015年3月4日のこと。大手携帯電話会社のツイッター公式アカウントが「スマホの持ち方によっては『テキストサム損傷』になってしまうことも」というツイートとともに、スマホを支えていた小指が変形した写真をアップし、大騒ぎになったのだ。
四谷メディカルキューブ 手の外科・マイクロサージャリーセンターの平瀬雄一センター長(写真提供:四谷メディカルキューブ)

 確かに、いつもスマホをいじってる人は多い。電車の中では、8割くらいの人がスマホを見てる気がする。2015年1月にデジタルアーツが1213人に行った調査によると、男子高校生の平均スマホ使用時間は1日4.1時間、女子高生はなんと7時間だった。そんなにスマホをいじっていたら、指も変形しそうだ……。

■「スマホの使い過ぎによる指の変形は考えにくい」

 そこで、「テキストサム損傷」の実態を探るべく、四谷メディカルキューブ(東京都千代田区)手の外科・マイクロサージャリーセンターを訪れた。

 「スマホの使い過ぎで指が変形することは考えにくい。変形するとしたら、タコができるくらい。そもそも『テキストサム損傷』なんていう病名は存在しません」、平瀬雄一センター長はこう苦笑する。

 冷静に考えてみたら、「サム(thumb)」とは親指のことで、小指ではない。欧米ではゲーム機みたいに両手でスマホを持ち、両方の親指で入力する人が多い。酷使された親指が腱鞘炎を起こすことがあり、それを「テキストサム損傷(text thumb injury)」と呼ぶようになったそうだ。

 正式な病名ではなく、スマホの使い過ぎで起こる「親指の腱鞘炎」を指す俗語だったのだ。

■スマホを使いすぎると本当に腱鞘炎になる?

 なお、「腱鞘」とは筋肉の両端にある腱を包んでいる部分で、腱を使い過ぎてここに炎症が起きた状態が腱鞘炎だ。痛みを感じて、スムーズに関節の曲げ伸ばしができなくなる。ごく軽い場合は冷やせば治るが、ひどくなるとステロイド注射や手術が必要に。

 親指を伸ばす腱の腱鞘炎は別名「ドケルバン病」ともいい、親指の腱がある手首に痛みや腫れが出る。親指を曲げるほうの腱鞘炎は「ばね指」といって、親指の根元が痛くなり、指を曲げるときに引っかかるようになる。

【携帶電話で起きる可能性がある手の疾患】
ドケルバン病(親指の伸筋腱の腱鞘炎)とばね指(親指の屈筋腱の腱鞘炎)
親指を伸ばしたり広げたりする腱の腱鞘炎。親指の使い過ぎによって起こることもある。ただし、指の変形は起きない。

 手の腱鞘炎はピアニストやマンガ家など、指を酷使する特殊な職業の人がなりやすい病気だが、「普通の生活をしていれば滅多に起こらない」と平瀬センター長は言う。

 とはいえ、1日7時間もスマホをいじっていればどうだろう? 実際、探究心旺盛な平瀬センター長はみずからを実験台にして試してみたという。

 「親指をタッピングし続けるスマホのゲームを長時間やってみたら、確かに親指に腱鞘炎が起きました。スマホの使い過ぎで腱鞘炎になることはあり得ます。指や手首に痛みを感じたら、作業をやめて流水で2~3分冷やすこと。冷たい湿布やアイシングのスプレーを使ってもいいでしょう」

 いわゆる「テキストサム損傷」とはドケルバン病か、ばね指であることがわかった。しかし、腱鞘炎で「指の変形」は起こらない。では、先に触れた大手携帯電話会社のツイッター公式アカウントのつぶやきは何だったのだろうか。次回で続きを紹介する。

この人に聞きました

平瀬雄一
 四谷メディカルキューブ 手の外科・マイクロサージャリーセンター長。1956年生まれ。東京慈恵会医科大学卒業。米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学後、東京慈恵会医大柏病院形成外科医長、埼玉成恵会病院形成外科部長などを経て、2010年より現職。日本手外科学会専門医。

(ライター 伊藤和弘)

[nikkei WOMAN Online 2015年3月20日付記事を基に再構成]

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