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おひとり様の終活 気になる自分の介護や死後のこと

2015/3/25

ずっと独身、あるいは家族との死別・離別で、一人で暮らす高齢者が増えている。彼らの心配事は介護が必要になったり、死が迫ったりしたらどうなるか。募る不安を和らげるには、生前や死後に発生する様々な手続きの段取りをつける「おひとり様の終活」が欠かせない。
りすシステムの生前契約の説明会には多くの人が参加した(東京・千代田)

3月上旬、東京都内のビルの一室に150人ほどの男女が集まった。亡くなった後や生きているうちに必要な様々な手続きを請け負う「生前契約」の説明会。主催したNPO法人・りすシステム(東京・千代田)によると、参加者は夫婦連れも含め約7割が女性。60~70歳代が多い。想定より多くの人がやって来たため、会場は急きょ大きな部屋に移したという。

同法人は当初、跡継ぎがいない人向けの合葬墓を手掛けていた。今は「お骨はひとりで歩いてこられない」という声に応え、墓に入るまでの手続きも引き受ける。入院時の保証人や認知症になった際の後見人、自宅整理などメニューは様々。「あなた流の生、自己責任の死をサポートします」と代表理事の杉山歩さんは話す。

高齢のおひとり様の増加が目立つ。2010年の国勢調査では、65歳以上の一人暮らしの人数は男女合計で479万人と、5年前に比べて24%増えた。未婚率の高まりなどで、増加傾向は今後も続き20年後の35年には762万人に達すると予測される。

高齢者の一人暮らしには気がかりなことが多い。亡くなったときに見つけてもらえない恐れがあるし、認知症になったり、体が不自由になったりしたときに世話をする人の確保も必要だ。家族や親族に迷惑をかけたくないという人は多い。「こうした人たちは特別な終活が必要」と、行政書士の汲田健さんは話す。

終活は葬儀や墓などエンディングの準備を元気なうちにしたり、希望を家族らに伝えたりすることをいう。特別な終活とはそれらを「第三者に託して生前に契約すること」(汲田さん)。例えば存命中の安否確認や保証人、財産管理を代行する事務委任契約、判断能力が不十分になった場合の後見人を決めておく任意後見契約。加えて死後の届け出や葬儀の手続き、遺品整理などを任せる死後事務委任契約などが代表例だ。

「生前契約」を手掛ける事業者はNPO法人を主体に増えている。依頼に応じてスタッフが契約者を訪ねて実行する。終活事情に詳しい第一生命経済研究所主席研究員の小谷みどりさんは「情報提供するだけのNPOも含めると全国で20以上ある。寺や弁護士、葬儀社など主催者は様々」と指摘する。

費用は事業者で異なる。りすシステムでは死後事務の基本料金は50万円。入院や施設入居の保証人など生前の事務は必要に応じて依頼する。日常の見守りや外出時の付き添いもメニューにある。申込金(5万円)に預託金、公正証書作成費用などで「当初費用は100万円程度になるケースが多い」(杉山さん)。

昨年6月に会員になった富山明子さん(仮名、73)は、15年前に夫を亡くして埼玉県の団地でひとり暮らし。「突然息苦しくなって」病院に運ばれたのが契約のきっかけだ。りすシステムのことを調べて、死後事務と生前事務、認知症への不安から任意後見契約も結んだ。費用は100万円を超えたという。

汲田さんが代表を務める行政書士キートス法務事務所(東京都国分寺市)では「見守り・事務委任契約」「任意後見契約」「死後事務委任契約」などがあり、契約時にそれぞれ10万円かかる。これとは別に預貯金管理など日常業務に毎月5000円が必要。原則として、各種の契約や財産管理といった法律行為を本人に代わって行う。その都度、費用はかかる。

おひとり様でも、サークルや趣味の会、近所付き合いなど「コミュニティーに積極的に参加していれば、生前の見守りや死後の事務を頼めることもある」と話すのは弁護士の武内優宏さん。契約は不要で、その方が費用も安く済むだろう。「信頼できる人がいなかったり、依頼に法的効力を持たせたりする場合は、専門家に頼むとよい」と武内さんは続ける。日常の見守りを友人や行政のサービスに託し、家の片付けなど一部について業者と生前契約しておくのも選択肢だ。

「契約の範囲内でいろいろやってくれるので安心感は得られる。何かをしてもらえばその都度お金がかかることを理解したうえで、自分に合った業者や専門家を選びたい」(第一生命経済研究所の小谷さん)。契約は長期間にわたることもあるので、内容を吟味し、運営主体の収支なども併せて、自分でよく調べてから、決めるべきだろう。

(編集委員 土井誠司)

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