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研修先への移動は、労働時間に含まれるのか

2015/4/13

日経ウーマンオンライン

こんにちは、社会保険労務士の佐佐木由美子です。みなさんの職場では、研修や出張などで外出することが多いですか? 今回は、「用務先への移動は労働時間にならないの?」という素朴な疑問について、お伝えします。

東京本社に勤務している佳苗さんが、研修で3日間、朝から横浜支社へ行くことになりました。普段であれば、通勤時間は1時間程度ですが、横浜支社まで行くには2時間程かかります。いつもより1時間も早く家を出なければならず、夜型の佳苗さんにとっては大変つらいことでした。

そこで、「業務命令なのだから、会社に申請すればこの1時間分について残業手当をもらえるのでは?」と思ったそうです。あなたはどう思いますか?

■目的地まで行く時間はどうなる?

出張や研修などで、いつもより遠くまで移動しなければならない、ということは起こり得ることでしょう。業務命令で、目的地までに赴くための電車やバスなどの交通機関に乗っている時間は、はたして労働時間にあたるのでしょうか?

この電車に乗っている時間は、確かに乗り物から降りて自由に行動できませんし、目的地までは拘束をされている時間と言えますが、到着までは眠っていようが、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)をしていようが、飲食をしていようが、全く本人の自由です。

これは、外出が制限された事業場内の休憩時間と同じようなものですから、労働時間にはあたらないと解せます。

それでは、休日に出張のため移動した時間はどうなるでしょうか? たとえば、日曜日の夕方に出張先まで移動して前泊し、月曜日の朝から業務を開始するようなケースです。この場合も同様に、「出張中の休日はその日に旅行する等の場合であっても、旅行中における物品の監視等別段の指示がある場合の外は休日労働として取り扱わなくても差し支えない」(昭和23.3.17基発461号、昭和33.2.13基発90号)とされており、休日労働にはあたりません。

つまり、出張の目的が物品の運搬自体である場合や、物品の監視など特別な指示がある場合以外には、労働時間に含まれないため、給与は発生しません。

ただし、出張時の労働時間については、労働時間を算定するのが実際には難しいため、所定労働時間働いたものとする「みなし労働時間」を採用するのが一般的と言えるでしょう。

なお、出張などによる交通機関の利用で拘束時間が長くなる場合、その拘束の対価として、「日当」や「出張手当」などが支給されるケースが多いと言えます。

手当の支給自体は義務ではありませんので、企業によって手当の額も違いますし、支給されない場合もあります。気になる方は、会社の出張・旅費規定などを確認してみましょう。

■業種によっては注意を

ところで、居宅介護サービスなど、訪問介護をしている場合についての移動時間はどうなるのでしょうか? 訪問介護事業の場合、1日のうちに、複数の利用宅を移動することは珍しくありません。

こうした移動時間について、厚生労働省は「介護サービスの利用者宅間の移動を使用者が命じ、当該時間の自由利用が労働者に保障されていないと認められる場合には、労働時間に該当する。したがって、事業所や集合場所から利用者宅への移動時間や利用者宅間への移動時間であって、その時間が通常の移動に要する時間程度である場合は、労働時間と考えられる」という見解を示しています。「手待ち時間」が労働時間に解される場合もあります。

業務命令を受けて行っていることが、「労働時間」にあたるのかどうか、給与の支払いにも影響が出てくるので、疑問に思うことがあれば、一度確認してみるとよいでしょう。スッキリとした気分で仕事に取り組みたいものですね。

佐佐木由美子(ささき・ゆみこ)
社会保険労務士。米国企業日本法人を退職後、社会保険労務士事務所等に勤務。平成17年3月、グレース・パートナーズ社労士事務所を開設し、現在に至る。女性の雇用問題に力を注ぎ、【働く女性のためのグレース・プロジェクト】でサロンを主宰。著書に「知らないともらえないお金の話」(実業之日本社)をはじめ、新聞・雑誌、ラジオ等多方面で活躍。

[nikkei WOMAN Online 2014年11月4日付記事を基に再構成]

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