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今も昔も弁当こそ親子のコミュニケーション

立川談笑

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NIKKEI STYLE

 懐かしい弁当の思い出話をします。いまどきのおしゃれな「お弁当」ではなくて、おっさんや男子学生がぶら下げていた力強い「弁当」の話です。

我が国はお弁当先進国なのだそうです。最近ではクールジャパンの一環として外国からも熱い視線を集めているのだとか。お弁当にまつわる雑誌の特集やブログ記事が星の数ほどあります。幼稚園ではお昼休みにはかわいらしいキャラ弁であふれかえり、デパートにはきらびやかで小ぶりなお弁当箱がずらりと並ぶご時世です。お弁当はきれいで楽しくて、食べちゃうのはもったいないくらい。さあ、小さな宝石箱の世界へようこそ!なんて、そんな最先端お弁当についてキラキラした情報を、ご提供できるはずもありません。がさつな、それでいて懐かしい弁当だってあったという思い出話です。

「朝だ四時半だ。弁当箱下げて。あれはゆくゆく、おやじの姿。ウチのとうちゃん……」

これは戦中の子どもの間ではやった替え歌です。元ネタは「朝だ夜明けだ」で始まる『月月火水木金金』。その昔、働く男の手弁当といったらドカ弁が定番でした。ドカベン。アルマイト製の四角く深い弁当箱は、コンパクトでも容積は半端じゃありません。みっちりとごはんが詰め込まれた箱の隅っこにおかずがちょこっと。真ん中には大ぶりの梅干しがドーンとある。そう、日の丸弁当です。いつも同じ場所だと蓋の真ん中が酸化して穴が開きますから、梅干しの位置は毎日ずらしましょう、なんて豆知識もありましたっけ。その弁当箱を包んだのは新聞紙でした。

学生時代のことです。私の通っていた高校には学食もありましたが、クラスの半数は自宅から弁当を持ってきていました。昼休みになると各教室に熱々のお茶がたっぷり入ったヤカンが運ばれてきます。大きなアルマイトのアレです。

話はそれますがあのヤカンを見るとラグビーを連想するのはどの世代までなのでしょう。当時は試合中に激しいチャージでぶっ倒れる選手が出ると、誰かが走って行って必ずあのヤカンで水をかけました。どんな酷いダメージでもたちまち蘇生する。あれには「魔法の水」が入っているといわれたものです。近年はジャージーもぴったりボディーフィットになったりして、ラクビーはすっかりあか抜けちゃった。人気も実力も上がって、がんばれニッポン!……って話はラクビーじゃない。弁当だ。

そのヤカンのお茶を、弁当箱の蓋の裏に注いで飲むのが男子校ならではの常識でした。あちちちち、とアルミの蓋のカドから飲むお茶の薄かったことw

私は基本的に自分で弁当を詰めていました。前日の残り物だとかを手早くドサドサっと。だからいつも全体に茶色っぽい。同級生たちの弁当はお母さんが作ってくれますから、さすがに彩りの鮮やかなものばかりでした。うらやましかったなあ。

ところが中にはツワモノもいます。ラグビー部のSはいつも朝から泥だらけという変わった男でしたが、そのお母さんは毎日とんでもない弁当で我々を驚かせてくれました。彼が弁当箱を開くのは朝。登校して早々です。「弁当、開けるぞ!」の一声で彼の机には人だかりができます。そして弁当箱の蓋が開くと同時ににぎやかなやりとりが始まります。「きょうはいいおかずだよ。300円でどうだ」。「高いよ馬鹿野郎」。「じゃあ270円」。「寝ぼけんなよ」。「んん、250円ッ」

つまり彼は弁当を同級生に売りつけて、その売り上げで学食に通っていたのです。もっとも、ちょっと個性的な弁当なのでずいぶん売値は安くて、買い手がつかないことすらありました。"バイヤー"である同級生たちは厳しい目でその日の弁当を値踏みします。チェックポイントは全体の量、おかずの質、品数。それだけではありません。

「おまえの母ちゃん、たぶん箸箱洗ってないんだって。その箸、カビが生えてるじゃん」

「その箸箱、絵の具箱の臭いがするんだよ」

と、とかく箸が原因で大幅に値崩れを起こすことがよくありました。でも時には、「きょうは、割りばしだ!」。「おおー!」と歓声に包まれることも。

その日は皆が固唾を飲んで見守る中、弁当箱の蓋を開けると「何だこりゃあ!」と全員大爆笑でした。おかず部分になんと、大きなみかんが皮のまま丸ごと一個納まっていたのです。おかずスペースの半分以上がみかん。その横に無造作に放り込まれたホウレン草のソテーがみかんにべたっとへばりついています。もちろん仕切りなどはありません。

「やられたあ!」と、うなだれるS。ちなみにこのみかん弁当は売買不成立でした。

また、こんなこともありました。包みをほどくと、弁当箱の上にポツンとあるのはふりかけ。と思ったら永谷園のお茶漬けの小袋。「まさか。まさか…」と蓋を開けると、真っ白なごはんだけが。いやー、あの時は本当に笑った。

Sが持たされていた弁当はきっとお母さんからの無茶ぶりだったのでしょう。弁当を通じたコミュニケーションという意味では、キャラ弁に匹敵するものがあります。うーん、ないかもw。

(次回は4月8日更新予定)

立川談笑(たてかわ・だんしょう) 1965年、東京都江東区で生まれる。海城高校から早稲田大学法学部へ。高校時代は柔道で体を鍛え、大学時代は六法全書で知識を蓄える。予備校講師など様々なアルバイトを経験し、93年に立川談志に入門。立川談生を名乗る。テレビの情報番組でリポーターを務めながら芸を磨く。96年に二つ目昇進、2003年に談笑に改名。05年に真打ち昇進。古典落語をもとにブラックジョークを交えた改作に定評がある。十八番は「居酒屋」を改作した「イラサリマケー」など。
<今後の予定>都内での独演会4月21日、5月13日、吉笑(二つ目)、笑二(同)、笑笑(前座)の弟子3人とともに武蔵野公会堂(東京都武蔵野市)で開く一門会3月26日、4月24日、5月29日の予定。
立川談笑HP http://www.danshou.jp/ 

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