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保育園探し(保活)をする親の間で「3歳の壁」という言葉がささやかれている。待機児童対策のため0~2歳児向け保育施設が増えた結果、3歳以降の預け先探しに苦労する状況を指す。4月に始まる子ども・子育て支援新制度では、さらに低年齢児向けの保育施設を増やす計画。3歳以降の受け皿問題が深刻化する可能性もでてきた。

幸ケ谷幼稚園では預かり保育を充実させ、保育園出身の3歳児を受け入れている(横浜市)

幸ケ谷幼稚園では預かり保育を充実させ、保育園出身の3歳児を受け入れている(横浜市)

「0歳や1歳ならともかく、3歳でも認可保育園に入れないとは」。2月中旬、都内に住むAさん(45)の家に封書が届いた。昨年末に申し込んだ息子(2)の認可保育園への入園が断られたことを示す「不承諾通知」だった。

育児休業あけの1歳で申し込んだ認可保育園には入れなかった。都が基準を定める認証保育所(認可外)で空きが見つかったが、園庭がなく動きが活発になる3歳以降の環境が心配になった。

まさかの「落選」の理由は、自宅から通える範囲で認可保育園の新設がなかったのに加え、複数ある既存の園も2歳から進級する子で定員が埋まっていたためだった。

待機児童の8割以上は0~2歳児。乳児に比べ手間がかからない3歳児以上になれば、認可保育園の定員が少し増え、希望園に入れるというのが通説だった。しかし低年齢児を中心に受け入れる認可外の保育園が増え、転園先が見つからない「3歳の壁」の存在がささやかれ始めた。特に最近目立つのが、待機児童対策でつくられた0~2歳児のみの保育施設に通った結果、3歳以降の預け先が見つからないケースだ。

都内在住のBさん(34)は長女(2)を2歳児まで預かる保育施設に通わせている。3歳児になる今春、認可保育園への転園ができず、認証保育所に移ることに。今の施設に預けたのは1歳で認可保育園に入園できなかったため。「1歳での保活の失敗をずっと引きずることになるとは」と悔しがる。

4月に始まる子育て新制度では、0~2歳児向け小規模保育施設が新たに認可施設になる。今後、施設が増えるとみられるが、その分3歳以降の預け先を探さねばならない親も増えることになる。

東京都武蔵野市で保活に取り組む親でつくる「保育園増やし隊@武蔵野」が2月に実施した調査では、認可保育園への転園を希望するケースが95%に達した。0~2歳児向けの施設に子を通わせる親からは「預け先のメドがたたない」との声が多く挙がった。

では3歳の壁はどう打破したらよいのか。認可保育園をつくる財源が限られるなか、自治体の中には私立幼稚園に働きかけ、受け皿づくりをするケースが出てきた。

横浜市の私立幸ケ谷幼稚園は、近くにある0~2歳児向けの横浜保育室「たいせつ保育園」と「たいせつ横浜ポートサイド保育園」の園児が2歳で卒園後、優先的に入園できる仕組みを設けた。

横浜市は待機児童対策として0~2歳児を受け入れる「横浜保育室」を整備してきたが、3歳以降の受け皿が課題になっていた。そこで私立幼稚園に呼びかけ、横浜保育室の卒園児を受け入れてもらうモデル事業を始めた。

幸ケ谷幼稚園はこの事業に参加。現在、毎年15人ほどの横浜保育室出身の子どもが3歳から入園してくる。横浜市では、午前7時30分から午後6時30分までと保育園並みの時間で子どもを預かる私立幼稚園に対し補助をしており、保育園出身の子でも受け入れやすい土壌があることも大きい。「働く家庭の支援になるし、長い目で見れば、確実に園児を確保できるメリットがある」と木元茂園長は語る。

東京都練馬区は、2015年度から私立幼稚園向けに新たな認定制度「練馬こども園」を創設する。保育園並みに長時間の預かり保育をする幼稚園に対し、運営費などを区が独自に支援。主に2歳児までを対象とする認証保育所や小規模保育施設と卒園児の受け入れに関する提携を促し、3歳児以降の受け皿を確保する。

認定申請を予定する私立白ふじ幼稚園では、4月から現在午後5時30分までの預かり時間を延長し、午後6時30分までにする。尾崎誠一教務主事は「幼稚園にも働く家庭の子どもが増えている。できる範囲で対応したい」と話す。

子育て新制度では、小規模保育施設を運営する事業者に対し、3歳以降の預け先となる連携施設を確保するよう求めた。小規模保育施設を運営するNPO法人フローレンス(東京・千代田)の駒崎弘樹代表理事は「3~5歳児を中心に預かる保育園の開設も検討したい」と話す。幼稚園の活用に加え、事業者の取り組みを後押しする行政の仕組みづくりが、3歳の壁を取り除くために必要になりそうだ。(編集委員 武類祥子)

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