「粘土層」管理職、女性を生かす意識 浸透するか

トップが旗を振るだけでは会社は変わらない。女性社員を生かす経営戦略をいかに管理職に浸透させるか。染み込まない「粘土層」ともいわれる管理職の意識改革が成否を握っている。
豊田通商は多様性を生かす風土をつくるための研修を実施(東京都港区)

「輝き続ける一般職の女性を増やしたい」。グループごとに管理職の1人が投げかけた課題に、ほかの4~6人が質問しながら、解決策を引き出していく。

3月上旬、豊田通商の室長やグループリーダーら課長級40人近くが参加した検討会。性別や国籍などにかかわらず多様性を生かす会社風土にするための管理職研修の一環で、昨年秋の専門家による講演会に続くプログラムだ。さらに今後、個々に行動計画を練る。

参加した財務部IR室長の渋谷恭一さん(50)は話し合いを通じ「女性には女性の新しい働き方があり、それに合った期待の仕方で生かされる環境ができるのではと感じた」と話す。

同社は従業員の約3割の女性のうち8割以上が一般職で、課長級以上の管理職の女性比率は2%未満だ。

昨年6月に役員の経営課題検討会で「経営戦略として多様性が必要」とダイバーシティ&インクルージョン(多様性の受容、D&I)の推進方針を固め、7月には加留部淳社長が社内に向け「D&I宣言」を発信。D&I浸透元年と位置づけ、昨年秋から部長や室長ら管理職に研修を始めた。

トップの本気度を示すために、社長の「D&I宣言」を社員食堂や研修で繰り返し上映、社長が定期的にメールでメッセージを送るなどしている。萩原朗子ダイバーシティ推進室長は「上がやると言えば腹落ちせずともやるという面はあるが、役員と対話する機会も設け、ともに作り上げていく形にしたい」という。

経団連のセミナーでダイバーシティ・マネジメントを巡り議論する管理職ら(大阪市北区)

粘土層対策に経団連も乗り出している。1月下旬に大阪で開いた中間管理職の意識啓発が目的のセミナーには、90社の115人が集まった。女性が活躍する先進企業の取り組みを聞いた後、5~6人のグループに分かれ、どう働き方を改革していくか議論をした。

参加した日本軽金属大阪支社総務課長の宇津木隆行さん(56)は「女性の管理職を増やす取り組みを始めたところで、他社の話は勉強になった。もっと真剣に取り組まないととも思った」。昨年度から始めた計3回のセミナーにのべ231社、326人が出席。来年度も続けるという。

部下の評価や仕事の与え方に性別や国籍などの違いによる不利益があれば、女性が活躍できない。そこに着目したのが、アクセンチュアの取り組みだ。

「どのような人か思い浮かべて」と情報を次々挙げていく。「ロンドンオフィスで働く女性。入社3年目。子どもが2人」。「入社3年目」で新卒入社の若い人をイメージしていると、「中途採用」「45歳」という情報も追加される。

昨年から管理職向けに始めた「無意識のバイアスを取り除くトレーニング」の一場面。「勝手なイメージ作りに気づき、皆一斉に混乱する」とマネジング・ディレクターの稲垣雅久さん(50)。「研修前『私にはバイアスはありません』という人もいるが、誰にでもバイアスはあると気づく」(堀江章子執行役員)

アクセンチュアは「無意識のバイアスを取り除くトレーニング」に取り組んでいる。研修を推進するマネジング・ディレクターの稲垣雅久さん(東京都港区)

部署ごとに行う3時間半の研修は、VTRで専門家の講義を聞き、実際の課題に即して、どのようなバイアスがあるかやその背景を議論する。その進行役も部署ごとに決められた管理職自身だ。仕事上の意思決定や評価に無意識のうちにバイアスがかかっていることを認識し、互いのバイアスの傾向を知ることで、より公平で良い結果を出せるようになったという。

「女性を一概にくくるのは良くないと気づいた」稲垣さんは、自らの本部内で育児休業中の女性のネットワークをつくるなど「あの手この手で(女性活躍推進に)取り組んでいる」。

同社は2006年から全社的に取り組み始め、社員や管理職の女性比率もそれぞれ20%超、10%超に上がった。ただ世界の拠点の中では一番低い。「研修が部署ごとの女性活躍推進活動の契機にもなった」(同)といい、4月から研修する管理職の対象を広げる。

00年前後から強いトップダウンで様々な女性活躍推進策に取り組んできた帝人は、管理職に女性を後継者として育てる意識付けを始めた。部課長が年1回記入する後継者育成計画に、5年先をめどに女性の後継候補を必ず書く欄を設けた。

後継者育成計画自体は04年から始め、1年以内に引き継ぐとしたら誰か、3年以内では誰かをそれぞれ最大2人記したが、なかなか女性は挙がらない。そこで11年から女性欄を設けた。4年もたっていないため、候補の女性が引き継いだ例はまだないが「女性を候補に挙げることで育成意識が芽生え、女性の成長の機会も増える」(日高乃里子ダイバーシティ推進室長)

実際、ある男性管理職(56)は「以前は女性を挙げなかったが、1年、3年の欄にも女性を考えるようになったし、候補の女性のマネジメント能力を育てようとも思う」。ただ「書式だけの効果ではなく、これまで管理職研修や社内報などで女性の活躍推進を意識付けされてきたからだ」。

コンサルタントのパク・スックチャさんは「女性の活躍推進にトップの公約は重要だが、管理職の意識が変わらないと具体的行動につながらない。染みついた意識は簡単に変えられないので地道に続けることが大切だ」と指摘する。

(女性面編集長 橋本圭子)

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