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男が変わらなければワーママの問題は解決しない

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日経DUAL
武蔵大学社会学部助教の田中俊之さんが、「男性学」の視点から共働き家庭の問題を解き明かします。今回は、男性の抱える問題を直視することがなぜ重要なのか、についてです。

男性のうわべの変化に惑わされてはいけない

若い男性が変わってきている。それは確かなようです。例えば大学生を対象にした調査では、昭和生まれの世代には理解できない男子学生の意識やファッション感覚が浮かび上がってきます。食事は男性がおごるべきだとは考えていない。割り勘ですらなく、自分で食べた分だけきっちり払う。自分が700円のパスタを注文し、彼女が800円のドリアを食べたのならば、ちょうど半分の750円払うのはおかしいというわけです。

ファッションについては、眉毛を整えるのは常識で、タイトな服装を好む。太っているわけではないのに、さらに細くなろうとダイエットをする。トクホ(特定保健食品)のお茶を飲んでいるのは、肥満に悩む中高年男性だけではないのです。

総じて言えば、最近の男の子は女性的になったという印象を受ける人が多いでしょう。

上記の変化はいかにもメディアが取り上げそうな話題ですが、男性の抱える問題を扱う「男性学」を専門とする立場から言わせてもらえば、さして重要な変化ではありません。若い世代に対して違和感を抱く理由は単純で、私たち30~40代の世代が若者の流行についていけなくなったから、です。それだけのことを大げさに取り上げる意味はありません。

流行ではなく「変わらない問題」を見つけ出す

かつて「不良」的な行動やファッションがカッコイイとされていました。当時の大人は認めていなかったでしょうし、まったく理解できなかったはずです。いまの学生に暴走族の映像を見せると、本当にこんなことをしていたのかと笑いが起こります。現代の若者にとって暴走族とはコントに登場するキャラクターなのです。

こうした表面的な部分は移ろいやすいものです。共働き世帯に限らず、男性に着目した議論を有意義なものにするためには、うわべの変化に惑わされないようにする必要があります。男性について論じる際に注目しなければならないのは、むしろ「何が変わっていないのか」です。

それでは、男性学の視点から「共働き世帯の男性が抱える問題」について考えてみましょう。男性学を専門にしている身としてはとても悲しいのですが、この学問の知名度はほぼゼロでしょう。そのため、まずは男性学とはどのような学問なのかを紹介しておきます。

男性学とは「男性が男性だから抱えてしまう問題」を扱う学問です。日本では1980年代後半から議論が始まりました。男性学にはすでに30年近くの歴史があります。女性学からの影響を受けて男性学は成立しました。

男性学と女性学は、「男女の不平等な関係性の解消」、そして、「性別にとらわれない多様な生き方の実現」を共通の目的にしています。そのうえで男性学の役割は、これまであまり注目されてこなかった「男性問題」の輪郭を明確にし、解決の糸口を見つけ出すことです。

問題は「男性は40年間フルタイムで働くもの」という前提

例えば、結婚や出産を機に仕事を辞めて、子育てが一段落してからまた仕事を始める人が少なくないため、女性の労働力率はM字型のカーブを描きます。有名な話なので聞いたことがあると思います。

ところで、男性の労働力率がどのような形になっているのかをご存じでしょうか。男性の労働力率は台形です。学校を卒業後に働き始め、定年退職の年齢に達するまでほぼ水平な直線を描いています。男性学の視点からすれば、こうした男性の働き方が問題として認識されていないことが問題です。

「男性問題」と「女性問題」はつながっていることを、私たちは理解する必要があります。どちらか一方だけを解決することはできません。共働き世帯で家事・育児分担がアンバランスになってしまうのは、「男は仕事、女は家庭」というルールが現代の日本社会に根強く残っているからです。

仕事中心の男性の生き方を変えなければ、女性の家事・育児の負担を軽減していくことはできないのです。

働く女性が増えています。だからといって、働く男性は減りませんし、労働時間が短くなる気配もありません。表面的には変化が著しい若い男性ですが、彼らも男性であるからには卒業後はすぐに定職に就き、家族を養っていかなければならないと考えています。こうした共働き世帯の増加に対応するためには、男性でも育児休業の取得や時短勤務の選択を当たり前のこととしてできるようにする必要があります。

いま、男性の働き方の根本的な見直しが求められています。男性は40年間フルタイムで働くという前提を変えていかなければならないのです。

平日にぶらぶらする男性は「怪しい」か

例えば、長期の育児休業を取得した男性について考えてみましょう。彼らは平日の昼間に地域で活動することになります。しかし、いざ公園に子どもを連れていくと、そこにはお母さんたちばかり。公園の隅でちょこちょこっと遊んで、急いで帰宅。これではせっかく育児休業を取得した意味がありませんね。多くの男性が平日の昼間の行動に居心地の悪さを感じます。これを単なる被害妄想で片付けてしまうのは安易な発想です。

我々は「普通の男性」はフルタイムで働いているという社会的な「常識」を抱いています。そのため、平日の昼間にぶらぶらしている大人の男性を、私たちは怪しいと思ってしまうのです。実際、事件のニュースを見ていて、犯人の男性が無職だったり、職を転々としていたりすると「やっぱり」と思う人は多いでしょう。「性別にとらわれない多様な生き方の実現」を達成するためには、こうした明文化されていない社会のルールに切り込んでいく必要があります。

いまの日本に「男性問題」は山積みです。しかし、だからこそ、改善していける余地が大きいとも言えます。現在、育児休業を取得する男性は2%程度しかいないので「変わり者」と思われてしまいます。ですが、これが10%に上がると、身近でも育児休業を取得する男性が目につくようになるでしょうし、20%にまで増えれば、育児休業を取得する男性が増えたと人々に明確に認識されるはずです。男性の育児休業取得が当たり前になるまでには時間がかかりそうですが、着実に一歩一歩進めていけば必ずイメージは変わっていきます。

目には見えない社会のルールに男女とも縛られている

ともすると私たちは、家庭の問題は自分たちで解決できると考えてしまいます。もちろん夫婦での話し合いは重要です。しかし、それだけですべてを解決できるわけではありません。社会全体が男性と女性をどのようなものとしてイメージしているのかが、個々の男女の行動や意識を縛っています。男性学の立場から、こうしたジェンダーの問題を男性に当事者として考えてもらう工夫をしていくつもりです。

最も大切にしたいのは、共働き世帯の男性が置かれている現実を正確に把握することです。仕事や家庭に関する議論は、原因は何か、どのような対策があるのかとすぐに話が展開する傾向があります。しっかりとした現状認識を欠いたままでは、議論が無意味なものになるばかりではなく、感情論へとシフトしてしまう危険も高くなるのです。男性の働き方を根本的に見直すために、なかなか変わらない男性の現状を冷静に捉える。「男性問題」を解決するための道は、ここからしか始まらないのです。

田中俊之さん
1975年、東京都生まれ。武蔵大学社会学部助教。博士(社会学)。専門領域は男性学、キャリア教育論。著書は『男性学の新展開』(青弓社)、『大学生と語る性』(晃洋書房、共著)、『ソシオロジカル・スタディーズ』(世界思想社、共著)、『揺らぐ性/変わる医療』(明石書店、共著)など。近刊は『男がつらい(仮)』(KADOKAWA中経出版)。

(日経DUAL編集部)

[日経DUAL 2015年2月4日付の掲載記事を基に再構成]

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