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相続トラブル百科

不利な遺産分けでも「文句言わない」権利の使い道 司法書士 川原田慶太

2015/3/20

 自分がいずれ相続する立場になっても引き継ぐ気がない親の財産があり、ほかの相続人に譲りたいという人がいたとします。親が遺言を残せるのと逆のパターンで、相続する側が「遺産はいらない」とあらかじめ法的に有効な形で意思表示することはできないのでしょうか。相続権そのものを事前に放棄することはできませんが、「遺留分」を主張しない選択肢はあります。

不公平すぎる遺言などに対し、最低限の分け前として主張できる遺留分。親の生前から放棄することで円満に相続できるケースも考えられる

 A男の父が、2カ所の不動産を残して亡くなりました。1つは実家の土地・建物で、住んでいる母がそのまま相続。もう1つの土地には妹のB子が家を建てているため「B子が相続する方がいい。その代わり私が死んだらA男が実家を継げばいい」と母に説得され、押し切られてしまいました。しかし2月20日付「相続に『繰り越し』なし 安易な妥協は禁物」、3月6日付「親が生きてるうちから『遺産分け』する人の盲点」で説明したように、A男はこうした合意は危うい面があると分かり、B子にさらなる一手を迫ります。

A男「なあB子、母さん名義の実家は俺が相続するっていう約束の件なんだけどさ」

B子「またその話? この間それで結構ですって一筆書いて、ハンコも押したじゃない」

A男「そうなんだけど、あれはあんまり意味がないらしくて……。悪いけど、もう1つだけお願いがあるんだ」

B子「今度は何よ」

A男「裁判所で書類を出してきてくれないかな」

B子「えーっ、裁判所! そこまでしなきゃいけないの?」

 B子は実家を相続せずA男に譲る旨、書面にしたためたわけですが、母が生きている間に分け方を決めたところでその通りになる保証はありません。実際に相続が発生するまでは何が起きるか分からないからです。そこでA男は、B子が実家を相続しなくていいという意思を有効な形で残させたいのです。

 B子に相続させないよう強制することはできませんが、B子が自分の意思に基づいて裁判所で手続きすれば放棄できる権利もあります。それが遺留分といって、遺産分けで最低限保障される取り分です。

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