きょう発表、「本屋大賞」候補10作品から本命を大予想日経エンタテインメント!

2015年1月21日にノミネート10作が発表された第12回本屋大賞。2014年11月1日からの約2カ月間、全国461書店580人による一次投票で絞られた候補10作に対し、「ラインアップに意外性はない」と本屋大賞を設立時から知る、書評家・ライターの永江朗氏は語る。

「本屋大賞は、書店員が『いちばん売りたい』本を選ぶ賞です。よく勘違いされますが、いちばん優れた本や面白い本を選ぶ賞ではありません。商売の鉄則が『売れているものを、さらに売り伸ばすこと』だと考えると、話題を集めたベストセラーが選ばれるのも仕方ないことですね」(永江朗氏)

直木賞とのW受賞はあるのか…

第5回あたりまでは、軽く読めてさわやかな読後感を与える作品が票を集めていたが、近年は2年続けて上下巻物が受賞を果たすなど、重厚な作品が選ばれる傾向がうかがえる。2015年の候補作も上下巻物が3タイトル、さらに『土漠の花』や『キャプテンサンダーボルト』など読みごたえのある作品が並ぶ。

そのなかで、永江氏は「受賞の可能性が高いのは、『鹿の王』『サラバ!』『キャプテンサンダーボルト』の3作だと思います。いずれも、すごい作品です」と、賞の行方を予想する。

永江朗氏。出版業界に詳しい書評家・ライター。本屋大賞は設立時から変遷を見守る(写真:鈴木芳果)

本命「◎」は、『鹿の王』。「著者の上橋菜穂子さんは、子どもの本のノーベル賞ともいわれる国際アンデルセン賞を日本人として史上2人目の受賞を2014年に果たしましたし、ファンタジーの分野では名前で売れる作家です。『こんなにすごい人なのに!』というファンのじれったさが得票につながれば、受賞できるでしょう。作家生活25周年の記念作品として、出版社から書店に大きく働きかけた影響も無視はできませんね。またビジネスとして、ファンタジー小説が大賞を取れば読者層が広がるので売り上げの向上も見込めます」(永江氏)。

対抗「○」は、『サラバ!』。「西加奈子さんも書店員好きする作家のひとりなので、本来であればこちらが大本命となるところですが、直前に直木賞を受賞したことが大きなマイナスポイントになりそうです。本屋大賞は『打倒直木賞!』としてスタートしたという経緯があるので、直木賞受賞作だというだけで推しにくくなります。それも含めて、受賞すると面白くなりますし、今後の本屋大賞に大きな影響を与えることになりますね」(永江氏)。

そして三番手「▲」は、『キャプテンサンダーボルト』。純文学とエンタテインメント小説という異なる文学シーンで活躍する作家がタッグを組み、発売直前まで全く情報が解禁されなかった話題作だ。

「この作品が世に出たのは、2012年に新設されたコルクという出版エージェントが2人の作家を結びつけたからです。書き上げてから出版先の会社を選ぶ手法は米国では一般的ですが、日本ではなじみがありませんでした。作品としての出来も素晴らしいですし、こういったやり方がどんどん進むと出版業界も変わるでしょう」(永江氏)

このように出版界の裏側を深読みするのも、本屋大賞の楽しみ方のひとつだと永江氏は指摘する。書店員の中にも、同じような物の見方をする人は少なくないという。

「候補作の出版社を見ても、今回は文芸大手の講談社の作品が1作も入っていません。その代わり、文芸はおろか、もともと雑誌専門で書籍は後発参入のマガジンハウスの作品が2点入っています。書籍の歴史が浅い出版社の作品が、どこまで健闘するかにも注目してみてください」(永江氏)

2015年2月末で締め切られた最終投票の結果が、いよいよきょう、4月7日に発表される。

(ライター 土田みき)

[日経エンタテインメント! 2015年4月号の記事を基に再構成]

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