広島・黒田が日銀・黒田総裁をアシスト?経験則でみる ふしぎ経済学 第12回(宅森昭吉)

球春到来。プロ野球公式戦がセパ両リーグともに3月27日から始まります。プロ野球と景気との関係を示す過去の経験則の中で、私が今シーズン特に注目している球団が広島です。広島が優勝したり優勝に絡む好成績を残したりした年は景気拡大局面のときが多いのです。米大リーグから移籍した黒田博樹投手(40)の活躍で広島が飛躍することで日本経済の名目成長率がアップし、物価目標達成に悩む日銀・黒田総裁の思わぬアシスト役になるかもしれません。

[表1]広島Aクラスと名目GDP暦年成長率の関係
優勝
(6回)
1975年平均7.4%
最高10.5%(75年)
最低4.9%(86年)
79~80年
84年
86年
91年
Aクラス
(21回)
1975~76年平均5.8%
最高12.3%(76年)
最低1.0%(94年)
78~81年
83~91年
94~97年
2013~14年
2位6回平均5.9%
3位9回平均4.6%
全期間1975~2014平均3.3%
最高12.3%(76年)
最低▲6.0%(2009年)

注)内閣府資料などをもとに宅森氏が作成。▲はマイナス

表1」は内閣府などの資料をもとに名目GDP成長率(暦年)と広島がリーグ優勝またはAクラス(1~3位)になった関係をまとめたものです。

データは古葉竹識監督の采配で初優勝した1975年から2014年までを対象にしました。

まず同40年間の名目GDP成長率は平均3.3%でした。

それが広島が優勝したりAクラス入りの成績を残したりした年は不思議と成長率が高いのです。まず最も高かったのは75年初優勝の翌年、76年(3位)の12.3%でした。初優勝した75年も10.5%の高い伸びです。

この期間で成長率がもっとも低かったのは、2009年のマイナス6.0%。この年は08年9月のリーマン・ショックの影響でした。09年の広島の順位は5位でした。

黒田の活躍による広島Aクラス入りに期待が高まる=共同

広島が同期間にAクラスになったのは21回あり、この21回の平均GDP成長率は5.8%でした。中でも優勝した6年(75、79、80、84、86、91年の6回)の成長率は平均7.4%、2位(6回)も5.9%、3位(9回)で4.6%と上位になるほど、GDP成長率も高いのがわかります。

広島の成績と景気との関係でもうひとつ特徴的な年が1997年でしょう。その年、広島は3位でAクラス入りを果たしましたが、プロ野球の日程終了後に発生したのが、山一証券と北海道拓殖銀行の破綻でした。この金融不況後の日本経済の停滞に歩調をそろえるように、広島も翌98年の5位転落から長期低迷が続きます。再びAクラスに浮上したのは2013年(3位)でした。12年12月の総選挙による政権交代と、アベノミクスで景気が上向くと広島も上位復活、14年も2年連続のAクラス入り(3位)を果たしました。

今年は米大リーグから移籍した黒田投手と前田健太投手の二枚看板投手力は期待できそうです。

しかし米球界から8年ぶり復帰の黒田投手の男気には、個人的には巨人ファンの筆者も感動しました。昨シーズン、ヤンキースで11勝をあげて残留だと年俸約20億円を掲示されたのが、年俸4億円プラス出来高払いで古巣の広島と契約した、と伝えられています。

広島は黒字経営を維持している球団としても注目されています。かつては「黒字達成を優先するばかりに投資が抑制され、長期低迷を招いている」という批判があったこともありました。しかし、近年は、経費の抑制だけでなくコンテンツの魅力を高める経営戦略を進めて新たなファン層拡大やグッズ販売の伸びなどが黒字経営に貢献しているようです。カープ女子などの新しいファンの動きも話題です。黒田投手の復帰によりチームが活躍することで、経験則上は日本経済の成長拡大につながるのを期待しています。黒田投手はオープン戦でも好投してその実力を見せつけました。今から楽しみです。

広島・黒田投手は同じ名字の黒田・日銀総裁の強力な応援役となるのではないでしょうか。

日銀・黒田総裁が物価安定目標に掲げる前年比2%の消費者物価指数(CPI)上昇率について「2年程度」という目標時期達成に黄信号がともっているからです。

経験則通りなら広島がAクラス入りすると名目成長率は高くなります。物価2%を掲げている黒田日銀からすれば、何とか名目成長率を押し上げていきたいところでしょう。

日本球界に復帰した広島・黒田のマウンドでの活躍とともに、広島の景気拡大への貢献についても目が離せません。

宅森昭吉(たくもり・あきよし) 1957年東京生まれ。80年慶応義塾大学経済学部卒業後、三井銀行(現・三井住友銀行)入行。調査部、市場営業部などを経て、94年11月さくら証券、2001年4月さくら投信投資顧問、02年12月三井住友アセットマネジメント。現在、同社理事チーフエコノミスト。著書に「日本経済『悲観神話』はもういらない」(中公新書ラクレ)、「ジンクスで読む日本経済」(東洋経済新報社)。
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