今絶対飲みたい、うまい日本酒ベスト30

2015/4/1

こだわりOFF

長い間元気のなかった日本酒が息を吹き返している。造り手がこだわって醸す、個性的で素晴らしい日本酒が登場し、幅広いファンを魅了している。2015年の新定番、注目の成長株などのテーマに沿って、日本酒評論のトップ4人が、今絶対に飲みたいうまい酒30銘柄を選んだ。
左から、ジョン・ゴントナーさん、葉石かおりさん、山同敦子さん、松崎晴雄さん。日本酒界を代表する“目利き”が4人集まることはめったにない。それだけに今回のセレクションは注目度が高い

日本酒好きならこれを飲まなきゃ

日本酒が好きで、日本酒情報に誰よりも詳しい。そして、日本酒の普及に尽力する研究家やジャーナリストに、2015年に飲むべき30本を選んでもらった。今回選定に協力していただいたのは、日本酒伝道師のジョン・ゴントナーさん、エッセイストで酒ジャーナリストの葉石かおりさん、日本酒研究家の松崎晴雄さん、そして食と酒のジャーナリストの山同敦子さんの4人。さて、彼らが選んだその銘柄は…。

山同敦子さん。食と酒のジャーナリスト。新聞社、出版社勤務を経て独立。土地に根づいた酒をテーマに、全国の日本酒蔵、焼酎蔵、ワイナリーなどの取材を続けている。著書多数。JSA認定ソムリエ、SSI認定きき酒師

「日経おとなのOFF」編集部:今日は、2015年に飲むべき30本を選んでいただきたいと思います。まず、現代の日本酒を語る上で飲んでおきたい定番には何を挙げますか。

山同敦子さん(以下、山同。敬称略):「新政(あらまさ)」は外せませんね。

松崎晴雄さん(以下、松崎。敬称略):社長の佐藤祐輔さんは業界の風雲児ですね。次は何を仕掛けるのか、常にわくわくさせられる。

葉石かおりさん(以下、葉石。敬称略):若い蔵元さんたちがお手本にしていますね。

山同:影響力があるといえば、「醸し人九平次」。九平次を飲んで酒販店になった、居酒屋を開いたという人がたくさんいます。

松崎:「貴」もいい。蔵元の永山貴博さんは2015年で40歳。若手若手といわれていたが、ご本人も酒も成長して、評価が高まってきました。

山同:「冩樂(しゃらく)」も同世代ですが、安定したおいしさがある。会津を代表する酒の一つになりましたね。

若手の造る酒ベテラン杜氏が醸す酒

編集部:今伸び盛りの注目の若手が造る酒はいかがですか。

松崎晴雄さん。日本酒研究家。日本酒輸出協会会長。日本酒に関する執筆、セミナーなどで日本酒の普及に尽力している。純粋日本酒協会の利き酒コンテストで30回以上、名人に認定され「永久名人」として表彰された

松崎:「会津中将」は、平成26年度の東北清酒鑑評会純米の部で最優秀賞を受賞していますね。

山同:「会津中将」は、蔵元と酒販店による勉強会「仙台日本酒サミット」でも一般酒部門で2年連続最高評価ですよね。

葉石:私は「守破離」を推します。杜氏(とうじ)の松本日出彦さんは「醸し人九平次」で修業をした後、京都の蔵に戻り、京都の日本酒を変えています。

ジョン・ゴントナーさん(以下、ゴントナー。敬称略):試飲会で出合い、奥深い味に感動したのが「岩清水」。

山同:「山和」も魅力的です。

松崎:「山和」は、すっきりしてチャーミングですね。一方、ベテラン杜氏の酒といえば、現代の名工でもある能登杜氏の農口尚彦さん。80歳を機に鹿野酒造を引退されましたが、昨年「農口」を立ち上げ、復活した感があります。

山同:珍しさでは「会津娘 つるし」。予約の段階で完売してしまう。「十四代 角新 本丸 本生」もぜひ。「本丸 生詰」は通年で販売していて、十四代のなかでは比較的手に入れやすいのですが、本生は冬季しか出回りません。「而今」もいいです。甘みと酸とのバランスの良い“女酒”の代表です。

食卓を飾る酒手土産にふさわしい酒

編集部:パーティーなどのテーブルに置いて絵になる酒は?

葉石かおりさん。エッセイスト/酒ジャーナリスト。全国の蔵元を巡り、各メディアにコラムやコメントを寄せる。コンサルティングのほか、セミナーや講演も多数。女性ならではの視点を生かし、酒の文化やおいしさを伝える

山同:「三井の寿」のイタリアンラベルシリーズ。発売する季節ごとに酒質を変え、ラベルもポルチーニやてんとう虫などにする。“ジャケ買い”したくなるかわいらしさがあります。

松崎:西山酒造場の「小鼓」。ボトルのデザインがいい。

葉石:「日高見 純米大吟醸 弥助 ひょうたんボトル」。日高見の最高峰の酒を入れた、ひょうたん形のボトルがおしゃれです。

編集部:手土産にして相手をうならせる日本酒は?

山同:「雪の茅舎 山廃純米吟醸」。秋田県の山内杜氏の顔ともいえる高橋藤一さんの醸す酒は、通をうならせます。

ゴントナー:「やるな!」と思わされる酒なら「宝剣 純米吟醸」ですね。

松崎:「宝剣」は“男酒”。現代風の辛口ですね。愛媛の「石鎚」もいい。昨年夏に呑切りの酒を飲んでゾクッとした。

山同:「石鎚」は通にも初心者にも受けますね。緑ラベルがいい。

葉石:手土産ならスパークリングも喜ばれます。「獺祭(だっさい) スパークリング」なら間違いないです。

編集部:ところで、酒蔵巡りも楽しいですよね。

松崎:「黒龍」の店舗兼母屋は国の無形文化財に指定されています。永平寺を訪ねた後、趣のある店で日本酒を買うのはいいですね。

ジョン・ゴントナーさん。日本酒伝道師。日本酒輸出協会理事。海外の卸問屋やレストラン関係者向けの日本酒講座や、外国人旅行者を対象に日本の酒どころを巡るツアーを企画するなど、日本酒の普及を行う

ゴントナー:「天青」の熊澤酒造は楽しいですよ。大正時代の酒蔵を改装した和食レストランにピザハウスがあって、日本酒はもちろん、地ビールも充実しています。

山同:お土産に必ず天然酵母パンを買って帰ります。

葉石:東京からも近いしね。

山同:会津若松市内にある末廣酒造は、予約していなくても蔵見学ができ、丁寧に案内してくれます。

葉石:京都の藤岡酒造。隣接して「酒蔵バー えん」があって、そのカウンターから蔵の様子が眺められるんですよ。販売していない、テスト的なものも出してくれます。

編集部:もうすぐ花見の季節ですが、外飲みに向く懐に優しい酒はありますか?

松崎:「開運 祝酒」。おめでたいラベルだし。

山同:「澤の花」の本醸造をお薦めします。クーラーボックスで冷やさなくても常温でおいしい。

葉石:「群馬泉」の本醸造。燗(かん)するとさらに冴(さ)える酒です。

ゴントナー:私は「出羽桜 桜花吟醸」。吟醸でこの値段はすごい。

編集部:海外でも人気の酒はありますか?

ゴントナー:ニューヨークの酒店に聞いたら、菊水酒造の酒がよく売れているそう。

松崎:「くろさわ」の純米生酛(きもと)。そして、アメリカで話題になって逆輸入されたのが「COWBOY」。肉に合う酒として開発された、メリハリのある味が特徴です。

葉石:「COWBOY」、インパクトあるボトルですね。

松崎:日本酒を楽しむシーンがふえ、裾野が広がっていますね。

山同:今の蔵元は、横のつながりが強い。一緒にイベントを仕掛けたり、技術の共有をしたり。日本酒を楽しむ方法が広がって、ますます良い方向に向かっています

今飲みたい日本酒、2015年の新定番

30代、40代を中心に斬新な発想の醸造家が登場し、日本酒の世界をドラスチックに変えている。日本酒の“今”を語る上で外せない、世界市場からも注目される2015年の新定番ともいえる4銘柄を飲んでみよう。

※酒データの見方:「米」=使用米、「精」=精米歩合、「ア」=アルコール度


今飲みたい日本酒、注目の成長株

家業である酒蔵で、伝統を受け継ぎながらも、時代に合った、自分にしかできない酒造りを目指す若手醸造家たちが増えている。成長著しい注目の若い造り手による、個性豊かな4銘柄をピックアップする。



(ライター 金丸裕子、写真 竹中稔彦、矢幡英文)

[日経おとなのOFF 2015年3月号の記事を基に再構成]

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