ライフコラム

生きものがたり

「四六のガマ」ヒキガエル 指の本数を調べてみた

2015/3/14

啓蟄の6日、東京都江戸川区の公園で見つけたヒキガエル

3月6日は啓蟄(けいちつ)であった。暖かくなって、冬ごもりしていた虫が地中からはい出てくる日である。そのせいか近所の親水公園を犬と散歩していたら、夕闇の中で1匹のヒキガエルに出合った。

■大道芸「ガマの油売り」でおなじみ

家にカメラを取りに戻ってもジッとして動いていなかったのは、変温動物なので、夕方から急に寒くなったことで体温が低下したからだろう。数枚撮影した後、この際長年の疑問を晴らすため、バケツに入れて動物病院にお連れした。

「さあさあお立ち会い、何にでもよく効く筑波山麓ガマの油だ。ガマはガマでも四六のガマだよ」。大道芸のガマの油売りに出てくる前脚の指が4本、後脚の指が6本という「シロクのガマ」の真相を確認したかったからである。

ヒキガエルは日本全国に分布し、これから暖かくなると繁殖期を迎え、池や水田、水たまりなど毎年同じ場所に産卵する。親ガエルは生まれ出た池周辺の臭いを覚えていて、嗅覚を頼りに水場に向かう。雌が少なく、雄が何倍も多いので、1週間くらいの繁殖期間には雄が雌を背中から抱きかかえる「抱接」を巡り、カエル合戦とよばれる雌の奪い合いが起こる。

ふ化した幼生がオタマジャクシで、童謡にあるように「やがて手が出る足が出る」の後、上陸する両生類である。小学生のころ、オタマジャクシを小川ですくって洗面器で飼育観察していたら、だんだん尾が短くなり、ある日全匹とも家の中で逃げてしまい、母親に怒られた。近ごろでは、区立保育園で飼育している動物種のアンケートで、オタマジャクシが魚類に分類されていたので、イエローカードを2回も出している。

■第6の指は後脚にある小さな赤い突起

ヒキガエルの後脚。赤い突起を「指」と数えれば6本になる

さて、四六のガマの由来だが、確かに上から見ると前脚の指は4本である。ところが、後脚の指は上からでは5本にしか見えない。この種の動物が大好きな動物看護師に抱えてもらい、後脚の裏を観察すると、親指にあたる第1指骨の内側に小さな赤い突起があり、これが指のようにも見えるのである。念のためにレントゲン撮影をしたら、前脚にも第1指骨が小さく残っているし、突起にもなっている。

レントゲン撮影をすると、骨の様子がよく分かる

パンダの手首の骨の部分が出っ張って竹をつかむ機能まで持ち、通称「第6の指」と言われているのと似たようなものだと思えば問題がなかろう。修正すればどちらも5本になってしまい夢がなくなる。ここは堅いことは言わず「四六のガマ」に白黒つけないことにしよう。

ヒキガエルはスタッフの手に抱えられていたら体温上昇したのでにわかに動き出し、気持ちよさそうに鳴きだした。協力に感謝し、記念写真も撮り、元いた場所に丁寧に送りかえした。

(帝京科学大学教授・獣医師 桜井富士朗)

桜井富士朗(さくらい・ふじろう) 1951年生まれ。専門は臨床獣医学、動物看護学。77年、桜井動物病院(東京・江戸川)開設。臨床獣医師としてペットの診療、看護にあたるとともに、大学で人材育成を手掛ける。2008年より現職。共著に「ペットと暮らす行動学と関係学」、監著に「動物看護学・総論」など。日本動物看護学会理事長。

※「生きものがたり」では日本経済新聞土曜夕刊の連載「野のしらべ」(社会面)と連動し、様々な生きものの四季折々の表情や人の暮らしとのかかわりを紹介します。

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