新姓・旧姓、職場で使うのは? 旧姓派も4分の1既婚女性1000人調査

会社の役員登記が、結婚前の姓も併記できるようになった。日本では妻が夫の姓にするのが大半だ。働く既婚女性は旧姓、新姓をどう使っている?

民法では結婚すると夫婦は夫か妻どちらかの姓にしなければならず、厚生労働省の人口動態調査(2013年)によると、96.2%が妻が夫の姓に変えている。仕事ではどうしているのか、日本経済新聞社はクロス・マーケティングに依頼して2月14~15日、全国の20~50代の働く既婚女性1000人にインターネットでアンケート調査した。

新姓に切り替えた人が全体の7割を超えた。年代別にみると30代が他の世代に比べて少なく、7割を切った。新姓を使っている理由を聞いたところ(複数回答)、4割近くが「変えたかった」。「自動的に変えた」が続き、「今の職場(会社)に入る前に結婚した」も4人に1人いた。

横浜市の薬剤師、樋口裕紀子さん(32)も2月に別の病院に転職したのを機に新姓を使い始めた。昨年10月に結婚し、前の病院では旧姓で続けた。「周囲の人に名字が変わった理由を説明するのが煩わしかった」ためだ。また新姓が浸透するまで自分のことだと認識されず、業務上混乱を招きそうだと考えたのも旧姓を使い続けた理由だ。新しい職場に変わることで、こうした懸念が解消されたため、新姓に切り替えたという。

新姓に変えて不便を感じたり困ったりした経験は旧姓を使っている人に比べると少ないものの、「仕事関係者に説明する」ことや「名刺やメールアドレスを変える」ことを挙げた人が多かった。「その他」の中には「自分が慣れない」「色々な名義を変えるのが面倒」などの声があった。

「取引先などに新しいメールアドレスを送ったり、名刺を配り直したり、想像以上に苦労はあった」と話すのは、三菱地所の法務・コンプライアンス部で働く恵梨絵さん(35)。02年に入社し、オフィスビルの開発を担う部に配属された翌年の03年に結婚し、名前を変えた。

結婚後に姓を変えて働く恵梨絵さん(東京都千代田区の三菱地所)

「まだ仕事を始めたばかりでそれほど影響がないだろうと思った」と振り返る。社内に既婚女性が少なく、相談する相手もいなかったという。煩雑さはあったが、大きなトラブルはなく、「彼女の旧姓を思い出せないほど今の名前が定着している」と同期の男性も話す。しかし人脈も広がりキャリアも積んだ今、もし結婚するなら「旧姓を選択すると思う」(恵さん)。

今回、ためらわずに新姓にした人が多かったのは、回答者の4割が事務職だった上、職種別では公務員(87%)や、経理・財務(78%)、事務(73%)といった内勤系で新姓使用が高率だったことも反映しているとみられる。

アンケートで4人に1人強が旧姓を使っていたが、職種では研究・開発(40%)や販売(39%)、営業(35%)など、個人の実績が重視されたり対外的な仕事が多かったりする分野が高い傾向だった。

産業技術総合研究所の上級主任研究員の佐藤縁さん(48)は大学院の博士課程を修了し就職した3年後に結婚した。「自分の研究分野も確立し、論文も他の研究者に引用されていたため、仕事上は旧姓のままにしたいと考えた」

結婚後も旧姓で仕事を続ける佐藤縁さん(茨城県つくば市の産業技術総合研究所)

当時は研究所が通産省の傘下で、パスポートは戸籍名を使う公用旅券。結婚した年に海外の学会に出席する予定があったため、半年ほど入籍せずにいた。子どもがほしいと思い、帰国後に入籍した。現在職場では自分で旧姓を使う範囲を選べ、給与明細や職員証も旧姓だ。現在のパスポートは「SEKI(SATO)」と旧姓を併記。研究所の先輩たちから教わり、海外の学会の招待状や佐藤名の論文を提出して申請した。

病院やジムで、また2人の娘の母親としては「関さん」と呼ばれる。「プライベートと切り替えられる便利さもあるが、2つの名前を持つのは煩わしいと言えば煩わしい」

アンケートでも、旧姓を使っている人の方が不便や困った経験のある人が多く、その4割超が「2つの名前を使い分けるのが面倒」と答えた。仕事で旧姓を使っても、会社の人事書類や給与明細などは新姓という場合も多く、「認識されない」といった混乱もあるようだ。旧姓使用・併記できたらいいと思うものが「ない」とした割合も新姓に比べ20ポイント以上低かった。

国家資格などで、登録は戸籍名だが旧姓使用を認めるというケースもある。税理士の本登録の書類を作成中という芝尊子さん(36)は戸籍名で登録するが、実務では旧姓を使えるよう承認申請書を一緒に提出する予定だ。

2005年に税理士試験に合格し、本登録をせず会計事務所で実務経験を積んだ。08年に結婚して戸籍上は姓が変わったが、仕事では旧姓を使用。「セミナーでの講演依頼も増え、より信用力が高まる税理士の看板を掲げられるようにと本登録を考えた」。10年以上築き上げた顧客との関係から旧姓使用を決断。建築士の母が旧姓を使っていたため違和感もなかったという。

弁護士も職務上使う氏名を届け出る形。ただ仕事で使う銀行口座の開設時に旧姓使用をなかなか認めない金融機関もあるという。戸籍名しか使えない職場もまだあり、旧姓使用が社会的に浸透したとは言い難いのが現状のようだ。

選択的夫婦別姓制度 働く既婚女性は77%が賛成

アンケートでは、働く既婚女性の77%が、夫婦が望む場合に結婚後も夫婦がそれぞれ結婚前の姓を名乗ることを認める「選択的夫婦別姓制度」に賛成と回答した。実際に同制度が導入されても「すでに同姓にしているので別姓には変えない」女性が約半数を占めたが、仕事を持つ既婚女性に限ると世論調査に比べて制度導入に好意的な結果となった。

選択的夫婦別姓制度に賛成は77%、反対は23%。年代別では40代の8割が賛成と最も高かった。現在仕事で旧姓を使っている人に限ると賛成は83%にのぼった。2013年に内閣府が発表した世論調査では、20歳以上の男女の36%が容認、「同じ姓を名乗るべきだが通称として旧姓を使うのを認める」一部容認派を合わせても6割だった。

制度が導入された場合、約半数を占めた「今からは別姓に変えない」派以外は、「別姓にしたくない」19%、「別姓にしたい」16%、「わからない」17%と分かれた。

(女性面編集長 橋本圭子、高橋里奈、松浦奈美、杉垣裕子、三木理恵子)

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