役員登記は妻の姓の「西端」、青野・サイボウズ社長旧姓・新姓 規則改正で併記可能に

結婚して妻の姓になる夫婦は3.8%(2013年)と少ない。戸籍上は妻の姓であるサイボウズの青野慶久社長に、仕事で旧姓を使っている経緯や問題点、姓に関する考えを聞いた。

――戸籍上は妻の姓で、「青野」は旧姓ということですが、結婚した時になぜ妻の姓にしたのですか。

あおの・よしひさ 1971年愛媛県生まれ。大阪大卒、松下電工(現パナソニック)に入社。97年にサイボウズを設立し、2005年社長。2児の父。43歳。

「妻の希望です。変えたくないと言うので、納得した訳ではありませんが、仕方なく妻の姓『西端』にしました。結婚したのは会社が上場した後だったので、仕事上はそのまま『青野』を使っています。ただ、役員の登記や代表者印は戸籍名の『西端』です。変えた当初はプレスリリースなどにも(本名・西端)と併記していました」

――何か不都合などありましたか。

「(戸籍上の姓が変わったことで)持っていた株式の名義の書き換えに数百万円かかりました。今は電子化されていますが、当時は無理にでも青野を通せば良かったと思ったくらいでした。新しい判子を作らなければいけないとか、銀行口座の名前を変えるとか煩雑でした。何の価値も生まない作業ですよね」

「海外出張した時、(戸籍上の姓が違うことを知らない)社外の人がホテルの予約を『青野』でしたのですが、パスポートと名前が違うと言われ、泊まる場所を失いそうになりました。青野名義のクレジットカードを見せたり、説明したりして納得してもらいました」

「最初に切り替えるのは面倒臭かったですが、最近はホテルの予約とか何が危ないかがわかってきたので慣れてきました」

――2つの名前を持っていて、良かったことはありますか?

「自分が使いたい時に使うことができます。競合他社のセミナーに申し込む時に『西端』を使うとか。プライベートは『西端』です。上の子どもが5歳になって、私が『青野』と呼ばれているのを聞いて、『青野って誰?』って。『それもおれ』と答えました」

――商業登記規則の改正を受けて、登記している役員名に旧姓を併記しますか?

「なぜ併記なのでしょう。併記は中途半端で、より一層面倒臭くなるのでは。どうするかはメリットなどもよく考えて決めたいと思います」

――結婚して、どちらかの姓を名乗ることについて、どう思いますか。

「基本はどちらかの姓ではなく自由につけられたらいいと思います。姓には『家』という概念がつきまといます。妻の姓にすると言うと、私の親は『青野の名前が途絶える』と言い、妻の親は『継いでくれた』と。家を守るという考え方や、夫婦別姓に反対する気持ちもわからなくはないが、無理やり押しつけることはないと思うし、そのような考え方は廃れていくと思います」

「姓は認識の符号として、夫婦2人で決めたらいい。その方が楽しいし、そのような時代が来ると思います。私が生きている間は無理かもしれないけれど、間違いなく、そう向かっていくと断言します。結婚相手も仕事も選べるようになったのと同じ。過去に選べなかったのは、選べると困ることがあったからです。家を守るということは昔の日本には必要で意味があったと思いますが、その役割は終わりました。マイナンバー制が導入されれば、識別にはマイナンバーの方が役立ちます」

――選択的夫婦別姓制度が導入されたら、どうしますか。

「1回変えたら、大した問題ではないです。選択制でなくて、自由に姓をつける方を選びたいですね。絶滅危惧名字もあって、姓は減る方向です。子どもの名前などは多様になっているのだから、姓も自由にしたらいいと思います。名前って何?と問い直してみては。自分らしく、自分がこうありたいという名前を考えればいい。20歳になる時、選べるようにすれば、一生懸命考えると思います」

(女性面編集長 橋本圭子)