つまみ充実、スシローの回らないすし店「ツマミグイ」

日経トレンディネット

中目黒駅から徒歩数分の「ツマミグイ」(東京都目黒区青葉台1-30-10)。すし店というよりカフェのような外観。2階には「いろは寿司」があり、道路をはさんで向かいには「築地すし好」がある。なぜあえてここを選んだのか…

回転ずし最大手の「あきんどスシロー」(大阪府吹田市)が2015年1月29日、東京・中目黒に新業態の回らないすし店「ツマミグイ」をオープンさせた。聞けばその名の通り“つまみ”に力を入れていて、1皿300円の前菜をカウンターから自由に取る形式だとか。さらに各テーブルにタブレット端末を設置し、タッチパネルで自分好みにすしをカスタマイズできる、新しいオーダーシステムもあるという。

酒飲みの筆者はすし店ではつまみ中心に食べ、最後にすしを軽くつまんで腹を満たすのが理想のコース。一方、家人は下戸のせいもあり、「値段を気にせず思う存分食べられる」回転ずしが大好きだ。こんな2人なのでこれまでは好みのすし店が一致しなかったが、この店ならつまみが充実していそうだし、スシローだから価格も安心。期待に胸を膨らませて席を予約し、オープン間もない週末に店を訪ねた。

デザインオフィスのnendoを起用したという店内。壁側がソファ席、中央がテーブル席になっている

300円の小皿のクオリティーに驚き

土曜日の17時とあって、既に店内は満席。広い店内の割にテーブルは狭く、喫茶店サイズ。ソファ席では、隣の客と体がくっつきそうなくらいの至近距離だ。でもラッキーなことに、案内された席は筆者が狙っていた前菜テーブルの目の前。数メートル先に光り輝く(ように筆者には見える)前菜の小皿の数々が並んでいる。家人は早速タブレットを手に、注文するすしの物色に余念がない。

前菜テーブルに載っているのは9種類の小皿。どれも盛り付けに高級感があり、300円とは思えない。「クリームチーズと酒盗」「北海道産甘えび長芋酒盗」「本ずわい蟹とワカメ」「ホタテとトマトマリネ」「北海道産生うにと生湯葉」「北海道産甘えびと数の子松前」「北海道産炙りさんまと香味野菜」「北海道産いくらと大根おろし」「まぐろアボカドバジルマヨ」――メニューを書き連ねただけで、酒好きの人はクラクラするのではないだろうか。これが全て一品300円なのだ。

店内奥にある「前菜テーブル」。一皿300円の小皿が9種類並んでいる

できれば全種類をテーブルに並べて酒を飲みたい。だがあのテーブルの狭さだとまずこれだけでいっぱいになり、家人のすしが載らないだろう。とりあえず3品をトレイに取ってテーブルに運んだ。

最初の一杯はビールを頼んだが、このつまみを見るとやはり、日本酒しかない。メニューを見て、スパークリング清酒「澪」を頼む。酒が来るのを待ちながら小皿のつまみを食べ、思わずうなった。生ウニもイクラも新鮮で、量もたっぷり。ユズの皮や木の芽などが添えられていて、盛り付けも繊細。生ウニと合わせた生湯葉には上品な下味がついている。たっぷりの酒盗をトッピングしたクリームチーズの下の角切りのアボカドも抜群の相性。まさに筆者が望んでいた“気のきいたつまみ”そのものだ。

普通の居酒屋ならこの2~3倍の値段でもおかしくないクオリティーだろう。この小皿料理だけをリピートして、ずっと飲み続けていたいと心から思った。

筆者が最初に取った3皿。左から「北海道産いくらと大根おろし」「クリームチー ズと酒盗」「北海道産生うにと生湯葉」
家人が頼んだすし。「生ほたて」(200円)、「ほっき貝」(200円)、「天然赤えび」(150円)、「剣先いか(塩すだち)」(250円)など。ご飯は小さめ、ワサビ抜きが基本で、皿に添えられたワサビを自分でつける

一方、家人の前に運ばれてきたすしを見ると、かなりシャリが小さめ。これならいろいろな種類を食べてもなかなか満腹にならないので、酒飲みにはうれしいポイントだ。ただしここのすしは、人を選ぶかもしれない。

まず、職人ではなくロボットが握っていること。そして全てのすしがワサビ抜きで、ワサビが刺し身のように別添えになっていること。「ワサビの量も含めて自分でカスタマイズしてほしい」という狙いらしい。家人が頼んだすしは、この価格としてはかなりクオリティーが高かったため、満足な様子。ただ「すしは職人が握らなければ」「サビ抜きなんてすしじゃない」という人には向かない店だろう。

サラダは少なめ、エビフライは大盛り…ボリュームの予想が困難

あまりの小ささにショックを受け、ついiPhoneと並べて写真を撮ってしまった「ごろごろ野菜のサラダ(2~3人前)」(780円)

おなかが落ち着いたので、あらためてゆっくりメニューを吟味。「パクチーのサラダ」(480円)、「軽く塩漬けした牛タンと淡路玉ねぎ」(880円)、「国産黒毛和牛ローストビーフと揚げアボカド」(1050円)があったりと、かなりの充実ぶりだ。ひとくちサイズで食べやすそうな「細かいパン粉で揚げた海鮮」(880円)を1人1皿ずつ、さらに「ごろごろ野菜のサラダ(2~3人前)」(780円)を頼んだ。

ここまでは何の不満もなかったが、運ばれてきたサラダを見てびっくり。780円という価格と「2~3人前」という表示から予想していたサイズより、かなり小さい。大きめの小鉢くらいのサイズだ。小皿料理のコスパの良さについ期待しすぎたか…。

細かいパン粉で揚げた海鮮はイカ、ホタテ、マグロ、エビ、サーモンのひとくちサイズの串揚げ。これもつまみにぴったりのサイズだったが、よくある素材を揚げただけなので、すべて予想がつく味。この価格なら、もうひと工夫ほしいところで、頼んだのを少し後悔。

酒を飲まない家人にはボリューム的に物足りなかったらしく、追加で「天然えびフライのタルタル」(680円)を注文していた。これまでの流れから、小さいサイズだろうと踏んだらしいのだが、これがまさかの大盛り。食べきれず、残していた。隣のテーブルに運ばれた肉料理を見ると、ケーキ皿サイズ。どうもこの店の料理のボリュームは予測しにくい。

「細かいパン粉で揚げた海鮮」(880円)。おいしかったが、女性向けにしては具に工夫がなく、男性向けにしてはボリューム不足と感じた
「天然えびフライのタルタル」(680円)。ほかの皿がつまみサイズなのに、これはボリューム満点で、ひとりで食べていた家人は途中で飽きて残してしまった。シェア向けメニューだろう

そろそろ二人とも満腹になってきたが、せっかくなのですしのカスタマイズをやってみることにした。方法は、タッチパネルから基本の6種類のすしを選び、トッピングしていくだけ。基本のすしは国産生本マグロ、活〆真ダイ、活〆ボイルエビ、メバチマグロ、天然赤エビ、生サーモン(国産生本マグロは300円、生サーモンは100円、それ以外は150円)。トッピングは北海道産ウニ、同イクラ、トビコ、アボカドのうち2種まで(50~200円)。ネタの炙りは無料だ。

タッチパネルによるすしのアレンジサービス。6種の基本のすしにトッピングとネタの炙り(無料)を組み合わせて、自分だけのすしを作ることができる。組み合わせをタッチした後で、注文の前にイメージ画像を確認できる

筆者は、天然赤エビ(150円)にアボカド(50円)、とびっこ(50円)をトッピング。面白かったのは、タッチパネルの下に「試す」というアイコンがあり、自分がトッピングしたすしのイメージがイラストで表示されること。それに気がついたのがオーダー後で、先に気がついていたらいろいろ試してみたのにと悔やまれた。総じてスタッフは説明が少ない(満席で忙しそうだから仕方ないのだろうが…)。

厨房の前の席なのでよく分かるのだが、目の前でひっきりなしにワインボトルが運ばれていく。ワインの注文率が異常に高いのは、土曜日の夜で店内の半分以上がカップルだからだろう。筆者の隣の30代前後とみられる落ち着いたカップルは、日本酒からワインに移行。そしてひたすら「ひとくちロールすし」(1皿2貫100~300円)をリピートしていた。横目で見ていたが、これがまさしくひとくちサイズで、バラエティー豊富。「牛タンねぎ塩ロール」(200円)、「西洋わさびロール」(200円)、「うなたまロール」(200円)など、ぐっとくるラインアップだ。後で調べたら、このひとくちロールすしがこの店の看板商品だった。それを知っていればと、リサーチ不足を反省。デザートメニューも充実していたので、「冷やしぜんざいと丹波栗、宇治抹茶アイス」(480円)を頼み、2人でシェアして食べた。

小皿とすしだけならコスパ良し、一品料理には注意が必要

当日のレシート。家人は「途中から1万円を超えるだろうと予測はしていた」と言う

総体的に筆者としては、「気のきいたつまみで酒を飲み、軽くすしをつまんでしめる」という理想のコースで大満足だったのだが、2人で約1万2000円弱というトータル金額に家人の不満が爆発。「この値段だったら普通の回らないすし店で落ち着いて食べられるところがいっぱいある」とご立腹だ。

レシートをチェックしてみると、すし自体は(もちろんスシローと比べると高いだろうが)500円の炙りキンメダイ以外は100~250円と決して高くない。全体の3分の1を占めているのは、「注文しなくてもよかったかな」と思った一品料理。あのサラダと串揚げとえびフライがなければ(筆者があの小皿料理を7品も食べ、生ビール2杯と日本酒の小瓶1本を飲んだにもかかわらず)2人で8000円程度で収まり、家人の感想も「まあまあ」というレベルだっただろう。使い方次第でコストパフォーマンスはかなりいい店なのではと思った。

土曜日とあってカップルが多かったが、カフェ風のインテリアなのでデートにも向いていそうだ。デートですしが食べたい、と言われた場合、同程度の金額であればせいぜい中クラスのすし店にしか行けず、女性が求めるスペシャル感、イベント感は薄いだろう。その点、この店なら安くても意外性がありおしゃれで、女性受けするのは確実。女性のひとり飲みや女子会、カップルの需要はありそうだ。

(ライター 桑原恵美子)

[日経トレンディネット 2015年2月23日付の記事を基に再構成]

注目記事
今こそ始める学び特集