健康・医療

日経実力病院調査

膝関節症、骨切り術で緩和 正座・運動…生活快適に 日経実力病院調査2014

2015/3/4

変形性膝関節症など膝が痛む疾患は、関節で骨と骨とをつなぐ軟骨がすり減るのが原因。加齢による場合が多く、患者の大半が高齢者だ。

膝関節症の治療で手術件数が522件と全国トップだったのが、豊見城中央病院(沖縄県豊見城市)だ。開院以来30年余りで累計8千件超の手術をこなしてきたが、件数が飛躍的に伸びたのは、現在副院長の新垣晃医師が1995年に着任してからだ。

年間500件以上の人工関節手術をこなし膝関節症治療で安定した実績を挙げる(沖縄県豊見城市の豊見城中央病院)

新垣医師は耐摩耗性の高い人工関節器具を使い、関節を支える靱帯はそのまま生かして膝を安定させる手術法に重点を置いた。痛みが軽減ししっかり歩けるようになるだけでなく、人工関節の摩耗も抑える。人工関節は通常15~20年で摩耗し、取り換えのため再手術するが、その必要がほとんどなくなった。

同病院で手術を受ける人の平均年齢は73.6歳。最高齢は94歳という。健康食品や薬の服用、注射など痛みを抑えるあらゆる手段を試し、「最後に手術を考える人が多い」(新垣医師)。

新垣医師が注意を払うのが、感染症の防止だ。手術の際に細菌が入れば再手術が必要になる。手術時間の短縮に努め、15年前は約2時間かかったが今は50分程度。入院期間も2週間だ。

東京医科大学病院(東京・新宿)の整形外科では、人工関節の手術前に、患者の状態を約1週間の検査入院でチェックする。手術なし件数83件は検査入院によるものだ。山本謙吾主任教授によると、患者の平均年齢は75歳と高く、約8割が何らかの内科疾患を抱えているという。

注意が必要なのは糖尿病だ。傷口が細菌感染して化膿(かのう)するリスクが高い。血糖のコントロール状態を示す「ヘモグロビンA1c」の値が7.0%を超える患者は、糖尿病の治療を十分行ってから人工関節手術に臨む。

また心筋梗塞など心疾患があると、麻酔に対するリスクが高い。術後の歩行訓練や筋力強化の負荷を軽くする必要があり、リハビリ期間が通常より長くなる。さらに肝機能障害を抱える患者は、血が止まりにくくなる場合がある。検査入院の結果をもとに、内科医と麻酔科医、整形外科医が相談して手術するかどうかを判断する。

検査入院中は毎日2~3時間、筋力強化のストレッチなども受ける。リハビリで体重がかかるバランスが改善され、「痛みが軽くなり人工関節手術を見送ることができる患者もいる」(山本主任教授)。

人工関節手術を受ける場合は、検査入院から約1カ月後に再入院する。東京医大病院では、手術中や手術後に患者にかかる負担が大きい両膝同時の人工関節手術は、原則行わない。片膝を手術してから体力の回復を待ち、3カ月以上空けて残りを手術する。片膝を人工関節にするともう片方の負荷が減り、痛みが軽くなって手術を回避できる患者もいるという。

骨切り手術後にリハビリを受ける患者(横須賀市立市民病院)

関節を人工関節に換えずに温存し、すねの骨(脛骨=けいこつ)を切開して角度を変え、膝の内側にかかっていた体重を外側にずらすことで痛みを軽くする「骨切り術」に取り組む病院もある。横須賀市立市民病院(神奈川県横須賀市)は、骨切り術の手術件数が全国1位だ。

従来の骨切り術は、脛骨の外側をくさび状に切り取るため、患者は骨が再び接合するまでは歩けず2~3カ月の入院が必要だった。

同病院関節外科センター長の竹内良平医師は脛骨の内側に切り込みを入れ、2~3年で自分の骨に置き換わる人工骨を挟んで角度を調節し、チタンプレートで固定するようにした。手術時間は内視鏡手術をあわせて約1時間半で、傷口は小さい。患者は手術翌日から立ち上がる訓練を始め、3週間後にはほとんどが歩いて退院できる。

2002年以降600例以上の実績があり、「患者の6割は正座ができるほど回復し、ジョギングやテニスなどスポーツを楽しむ人もいる」という。

骨切り術を選択するかどうかは、関節の軟骨の状態による。軟骨を検査し、内側のみが傷み、外側が比較的健全な場合は、骨切り術が適応する。内側と外側の両方が傷んでいる場合には、基本的には人工関節手術になる。

横須賀市立市民病院には神奈川県外からの患者も多い。島根県から訪れた男性(67)は昨年末、手術を受けた。術後5日目から歩行訓練を始め「30年近く悩まされた膝の痛みがなくなった」と喜ぶ。竹内医師は「膝の外側の軟骨が比較的正常なら、骨切り術の効果は大きい」と話す。

■膝関節症治療の実力病院(52病院)

※(地域別詳細版)はこちらを参照

【調査概要】 調査は(1)症例数(診療実績)(2)医療の質や患者サービス(運営体制)(3)医療従事者の配置や医療機器などの設備(施設体制)の3つの視点で、病院選びの際に参考となる情報を、インターネット上の公開データから抽出して実施した。
診療実績 厚生労働省が2014年9月に公開した13年4月~14年3月の退院患者数を症例数とした。病名や手術方式で医療費を定額とするDPC制度を導入・準備中の全国1741病院を対象にした。表では「手術あり」と「手術なし」の合計の上位50病院を掲載した。症例数の前の*は0~9例の誤差あり。「-」は0~9例で詳細不明。
運営体制 公益財団法人「日本医療機能評価機構」(東京)が病院の依頼を受け、医療の質や安全管理、患者サービスなどを審査した結果を100点満点で換算した。点数の前の*は同機構の評価方法「3rdG」での結果が公表されている病院で、S=4点、A=3点、B=2点、C=1点として計算した得点を100点満点に換算した。
施設体制 医師や看護師など医療従事者の配置や、医療機器など、厚労省が定めた診療報酬施設基準を満たしたとして各病院が届け出た項目を比べた。14年9~10月時点での届出受理医療機関名簿を集計した。

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