心臓弁膜症、「生体弁置換」普及 ブタやウシから作製

心臓には血液の逆流を防ぐため、大動脈弁、肺動脈弁、僧帽弁、三尖弁の4つの弁がある。これらの弁の閉まりや開きが悪くなり、血液の通過障害や逆流などが起きるのが心臓弁膜症だ。長年放置すると心臓に負担がかかり、最悪の場合、心不全を起こす危険もある。

肺で酸素を受け取った血液が心臓に戻ってくる左心房と左心室の間にある僧帽弁と、左心室から全身に血液を送り出す心臓の出口にある大動脈弁が治療の主な対象となる。心臓弁膜症の国内の患者数は患者の高齢化に伴って増えており、僧帽弁が緩んで閉じ切らない「僧帽弁閉鎖不全症」と、動脈硬化によって石灰化した大動脈弁が癒着して起きる「大動脈弁狭窄症」が圧倒的に多い。

従来は傷んだ弁を切り取り、炭素繊維やステンレスでできた「機械弁」やブタやウシの組織で作った「生体弁」に置き換える「弁置換術」が広く行われてきた。機械弁は半永久的に使えるが、弁に血液がこびり付くのを防ぐため抗凝固剤を飲み続ける必要がある。生体弁はこうした問題はないが耐久年数が15~20年しかなく再度置換術が必要になる。近年は生体弁の耐久性が高まるなどして使用率が増え、全体の7割強になった。

僧帽弁閉鎖不全症では、手術後のQOLに配慮して、患者本人の弁を生かして形を修復する「弁形成術」が増える傾向にあり、全体の過半数に上る。大動脈弁狭窄症治療では患者の体への負担が小さい「経カテーテル的大動脈弁植え込み術」(TAVI)が欧米で広がり、国内でも2013年から一部の施設で行われている。

日本胸部外科学会学術集計によると、国内の弁膜症手術数は年々増加し、12年は約1万8900件で、心臓大血管手術のほぼ3割を占める。手術成績の向上はめざましく、大動脈弁置換術(単独)の院内死亡率(術後30日以内)は2.0%と10年間で半減した。

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