マネー研究所

わたしの投資論

投資はつらく苦しい、でも逃げられない(小幡績)

2015/3/5

インターネット証券会社の台頭や少額投資非課税制度(NISA)のスタートで、投資は身近なものになってきている。ところが、行動ファイナンスの専門家である慶応大ビジネススクール准教授の小幡績氏は、安易な気持ちで投資を始めるのは危険だと指摘する。

■ずれているのはモデルの方

投資は難しいものです。「投資をすると勉強になるからやった方がいい」とよくいうけれど、そんな生易しいもんじゃないですよ。そんなつもりならやめておいた方がいい。やるなら本気でやらないと。

小幡績(おばた・せき)氏 1967年、千葉県出身。92年、大蔵省(現財務省)入省。2001年米ハーバード大学で博士号取得。03年から慶応大ビジネススクール准教授。10~14年、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用委員

初めての投資は大学生のときです。東大で根岸隆先生の授業を受けてミクロ経済理論の美しさを知り、経済を学んだら株を買わなきゃと思いました。競馬のオッズは小学生のころからチェックしていたし、ギャンブル的な興味もありました。

ちょうどバブルが崩壊した年で、株価が下がっていい頃合いかなと思って買ったら、まだまだ下がった(笑)。投資がどういうものかよく分かってなかったですね、あのころは。大蔵省(現財務省)時代にはミニ株にも投資しました。NTTドコモやセブンイレブン、消費者金融あたりはIT(情報技術)バブルでものすごく上がったんですが、さくら銀行とか住友銀行は値下がりどころか、合併でミニ株だったはずが単位株になってしまいました。

その後、米ハーバード大での指導教官がアンドレ・シュライファーという行動ファイナンスの第一人者だったのがきっかけで、投資家心理の研究も始めました。経済学では「合理的な人間」というモデルをよく使いますが、これでは現実の投資行動や市場を正しく分析できません。というのも、このモデルは理論体系を簡素にして分析しやすくするためのもので、人間という経済主体のもっとも大事な部分をわざと欠落させているからです。人間の行動がモデルからずれていると「非合理的」だというけれど、現実の人間こそが真実であって、現実をとらえていない合理的モデルの方が本当は非合理的なんです。

市場は合理的だというのも間違いです。もし本当に教科書がいう合理性がすべて成り立っているなら、すべての銘柄が適正な価格のはずだから、割高も割安もありません。自分のリスク許容度に合わせて銘柄を組み合わせれば、いつ買っても損じゃないということです。でもそんなことはありえない。実際には誰もがいつ何を買うべきか悩んでいます。

「それでも長期的には合理的だ」という解説もよくありますが、とてもそうは見えません。確かに極端なバブルはいつか崩壊します。でも、それがいつなのかは分からない。バブルは何年も続いたあとあっという間に崩壊して、回復するまでにまた何年もかかるわけで、市場が冷静で妥当だった期間、合理的な水準に収束して安定している期間なんてほとんどないんです。

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