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ネット取引、「クレーム・返品お断り」法的に有効か 写真や説明文にない傷、売り手に責任

2015/2/28

 Aさんはインターネットのオークションでブランド品の中古バッグを注文した。ネット上に掲載された商品の写真を見る限りとてもきれいで、商品説明に書かれた「多少の傷」も判別できない程度だった。ところが手元に届いたバッグを見ると、写真に映っていない部分に大きな傷があった。説明には返品を受け付けない旨も書かれていた。どうすればいいだろうか。

 消費者問題に詳しい弁護士で東京経済大学教授の村千鶴子さんは「インターネットの普及に伴いネット取引のトラブルが増加傾向にある」と指摘します。人口に対するネット普及率は約80%です。国民生活センターの全国消費生活情報ネットワーク・システムに寄せられたネット通販に関する相談件数は約20万件と高水準が続いています。

 弁護士の上柳敏郎さんは「利用者がネット上の写真や説明文に依存しがちで、取引相手の実像を把握しにくいことがトラブルの背景にある」と言います。

 ネット上の取引では売り手側が説明文の中に「ノークレーム・ノーリターンでお願いします」などと記載しているのをよく見かけます。「商品の傷については十分説明するので、納得したうえで買ってください。苦情や返品は受け付けません」といった意味です。

ネットオークションなどで「ノークレーム・ノーリターン」と断っている商品は少なくない

 買い手側が合意する前提でこうした取り決めをするのは自由ですが、現実にはトラブルを引き起こす一因になっています。問題が起きたときは「法律上は民法や消費者法などに基づき解決を目指すことになる」と上柳弁護士は話します。

 解決法は売り手が個人か事業者かでやや違います。

 まず売り手が個人の場合です。事例でAさんは「バッグに大きな傷などあれば購入はしない」と考えていました。売り手との間の売買契約において重要な食い違いがあったと言えるでしょう。つまり、民法95条の「錯誤」(間違い)にあたる可能性があります。

 とりわけこの例ではネット上の情報に頼らざるを得ませんでした。Aさん側に「なにか重大な過失があったとはいえない」と司法書士の船橋幹男さんは言います。ですから、契約は無効であるとして購入代金の返還を請求できそうです。

 説明に書かれていなかった大きな傷は、「隠れた瑕疵(かし)」にもあてはまりそうです。売り手が傷を知りながらわざと傷が映らない写真を見せた可能性が高いからです。いくらノークレーム・ノーリターンを主張していても、民法570条の「瑕疵担保責任」は免れないでしょう。この面からも返金や損害賠償を請求できるでしょう。

 売り手が事業者だった場合はどうでしょう。「消費者契約法によりノークレーム・ノーリターンの主張はそもそも認められない」と村弁護士は話します。瑕疵担保責任の免除は無効で、契約解除や損害賠償を求めることができます。

[日本経済新聞朝刊2015年2月25日付]

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