赤外線で撮るドラマチックなモノクロ写真[ナショジオ]世界一の動物写真

2015/3/22
ナショナルジオグラフィック日本版

『ワイルドライフフォトグラファー・オブ・ザ・イヤー』をご存じですか。イギリスで50年続く、世界で最も古く、最も権威のあるネイチャー写真賞です。その受賞作品を集めた本ができました。動物写真の黎明(れいめい)期から今日までの歩みが、すべてわかります。この連載では、本に掲載した写真の中から魅力的な珠玉の写真をいくつかピックアップして紹介していきます。
「ライオンを見張って」(チャーリー・ハミルトン・ジェームズ、2012年)

これは気鋭の若手写真家、チャーリー・ハミルトン・ジェームズによるモノクロ写真(赤外線写真)の傑作です。まず、左右対称に並ぶチーターをとらえた構図がすてきです。岩の上に座る2頭は、ライオンの群れを見つめています。しかし、それ以上にすごいのは光のとらえ方でしょう。この写真を撮影したのは真昼でした。この時間帯は頭上から光が当たるため、一般的には撮影には向いていない時間帯とされているのですが、赤外線で撮影することで平板になりがちな構図がドラマチックな光景に一変しました。特にチーターが座っている、岩肌の質感には驚くばかりです。

動物をこのようなモノクロで撮影する写真家は、もともとあまりいませんでした。『ワイルドライフ・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー』でも、1977年にモノクロ写真部門が設けられたのですが、当初の応募点数はごくわずかだったといいます。ところが、一部の写真家がモノクロ写真の可能性に注目し、90年代になると応募が徐々に増えていきます。さらにデジタル写真が浸透し、画像処理ツールが普及すると、モノクロ写真は動物写真の表現手段として定着するに至りました。この写真は、モノクロ写真のすごさを再認識させてくれる1枚です。

計算しつくされた構図

かつて野生動物を撮影する若手の写真家は多くありませんでした。その理由は、野生動物を撮影できる精度の高いレンズやカメラが高額で、手が出せなかったから。その状況が変わってきたのは、1980年代のこと。格安の撮影機材が手に入るようになったのです。折しも1981年には、若手写真家を対象とした『ヤング・ワイルドライフ・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー』が新設され、さらに1990年には18歳から26歳の写真家の作品を対象としたエリック・ホスキング賞も設立されました。

「緊迫の一瞬」(カトリオナ・パーフィット、2008年)

上の写真は、数少ない若手女性写真家の1人、カトリオナ・パーフィットが撮影したものです。舞台はナミビアの砂漠。ライオンにつきまとわれ、水場を目指していたキリンがパニックを起こしています。こちら側と向こう側にはオリックスがやじ馬のように集まり、この様子を見つめています。緊迫した一瞬をとらえたこの傑作で、パーフィットはヤング・ワイルドライフ・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。

(日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック『世界一の動物写真』を基に再構成]

[参考]ナショナル ジオグラフィック『世界一の動物写真』は、イギリスで50年続く、世界最高峰の写真賞「Wildlife Photographer of the Year」受賞作の中からえりすぐりの163枚を厳選して掲載した写真集。初めて撮影された歴史的な動物のモノクロの写真から、政治や写真史に影響を及ぼした有名な写真まで、時代を画した偉大な作品を一挙収録。ネイチャー写真がどのように生まれたのか、カメラの進化や撮影技術の発展に伴い作品がどのように進化したのか、その過程も詳しく解説しています。

世界一の動物写真

著者:ロザムンド・キッドマン・コックス
出版:日経ナショナルジオグラフィック社
価格:3,888円(税込み)

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