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「逃げるが勝ち」が子を守る 登下校時の安全確保術 安全インストラクターの武田信彦さん

2015/2/25

 もうすぐ新入学シーズン。連れ去りなど子どもを狙う事件が後を絶たないなか、小学校に通い始める我が子に、身を守る方法を教えることが欠かせない。20年近く防犯活動に携わってきた安全インストラクターの武田信彦さんに、親ができる子どもの安全対策を聞いた。
たけだ・のぶひこ 独デュッセルドルフ出身、慶応大卒、37歳。大学在学中に犯罪防止NPOに参加し、2006年から自治体や学校などで安全教室を開いている。著書に「SELF DEFENSE 『逃げるが勝ち』が身を守る」(講談社)など。

 ――入学すると、子が1人になる機会が増えます。

 「私自身、小学校に電車とバスを乗り継ぎ40分かけて通っていました。自分で自分を守らなきゃ、と子どものころから意識していました。大切なのは子どもの『身を守る力』を引き出すこと。どんなに避けても、1人にならざるを得ない場面はある。子どもに『防犯って何?』と聞かれたら、自分で心や体を守ることだよ、と教えています。そのために、何に注意すべきかを教える必要があります」

 「今は『うさぎママのパトロール教室』と題して、小学校などで安全教室を開いています。教えるのは『逃げるが勝ち』の精神。脱兎(と)のごとく、といわれるほど逃げ足が速いうさぎが手本です。逃げるのは格好悪い、戦って相手をやっつけるべきだ、と思っている子は少なくない。でも子どもの力では大人に抵抗するのは到底無理。過度な暴力で対抗すると自分の方が加害者になる可能性もある。被害者にも加害者にもならないためには逃げるが勝ちなのです」

 ――上手に逃げるには。

 「まず、会話はできるが体を触られない距離を知ること。おすすめの道具が新聞棒です。新聞紙を広げ3枚重ねて上下に巻くと約80センチ。持つ手の部分を含めると約1メートルになり、大人の手は子どもの体に届かない。いざというときに逃げられます。子どもと2人で新聞棒の両端を人さし指で持ち上げる練習をすると、距離を体感できます」

 ――それでも体をつかまれることはありそうです。

 「対処法はあります。まず手首をつかまれた場合。片手では大人にかなわないので、両手と全身の力を使って相手の手を振り切ります。両手をしっかり握り、腰を回転させ両腕を頭の横へ振り上げる。手が取れたらダッシュで逃げます」

 「肩を抱かれたときは、相手のスキ、つまり自分が逃げられる空間を探して一気にすり抜けるのがコツ。相手の腕の外側がスキの一つです。後ろを振り返るような動作で体を回転させ、すり抜けたら相手の後ろ方向へ逃げましょう」

 ――危険を未然に避けることも大切です。

 「その通り。大事なのは危険を察知し、回避する予防力です。実はこの力、普段の遊びで身につけることができます。例えば『だるまさんが転んだ』。鬼になると、周りや後ろの気配を感じとる訓練になります。『ハンカチ落とし』もおすすめ。スキができやすい背後への注意力を磨けます」

 ――怪しい人だと判断できないこともある。

 「子どもを狙う不審者は『猫を探している』『お母さんが倒れたから病院に行こう』などと、あらゆる知恵を総動員して誘いをかけます。変だと思う誘い文句をきっぱり断る練習もしておきましょう。安全のためには『できません』と大きな声で言えることがとても大事です」

 「街の中の死角を知っておくことは予防力の基本です。駐車・駐輪場やビルの外階段など人目につかない場所は近づくのを避けたい。車から声をかけられたら車の進行方向と反対に逃げる。靴が脱げたら走って逃げられないので、しっかり履く。こうした安全を守るための方法を、入学前から親子で話し合っておくとよいでしょう」

(聞き手は編集委員 武類祥子)

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