健康・医療

日経実力病院調査

肺がん、胸腔鏡手術広がる 切開最小限に 日経実力病院調査2014

2015/2/25

日本人のがんによる死因のトップを占める肺がん。日本経済新聞の「実力病院調査」によると、胸腔(きょうくう)鏡手術など、患者に負担が少ない方法がとられるようになってきている。また、女性特有の子宮のがんでも、摘出手術や放射線を選択できる病院が増えている。
年間180回、原発性肺がんの手術をする岡山大学病院(岡山市北区)

肺がんは日本人のがんによる死因のトップで、増加が続いている。喫煙との関係が深いとされるが、たばこを吸わない人でも発症する。検診などで早期に発見されれば手術で根治が望めるが、肺がんと気づくのが遅れ、転移するなど進行した状態で見つかることも多い。

肺がんは、大きく「小細胞がん」と「非小細胞がん」に分けられる。小細胞がんは喫煙との関係が深い。増殖が速く、転移しやすく悪性度が高い一方で、抗がん剤や放射線治療の効果が得られやすい。

非小細胞がんは小細胞がん以外の総称。多くの異なる組織型があり、発生しやすい部位や進行速度などが異なる。腺がんは男性患者の4割、女性患者の7割以上を占める。喫煙との関係が深い扁平(へんぺい)上皮がんは男性の4割、女性の1割強で太い気管支に発生することが多い。

日本肺癌(がん)学会のガイドラインによると、非小細胞がんは通常は2期まで、時に3A期までは手術での切除が勧められている。より進行した3B期からは放射線治療と抗がん剤治療の組み合わせなどの治療が中心となる。

■同時に4本駆使

手術では胸腔鏡の活用が広がっている。今回の調査で「手術あり」が414例で全国で3番目に多い姫路医療センター(兵庫県姫路市)は胸腔鏡手術が9割。2人の医師が2本ずつ計4本の手術器具を駆使し、すべての操作をカメラで映し出されたモニター画面だけを見て切除する。1人の執刀医が助手の差し込んだカメラの映像を補助的に用い、切開した部位から直視で手術する方式に比べると、切開が小さくて済む。

姫路医療センターで行われる胸腔(きょうくう)鏡を使った肺がん手術(兵庫県姫路市)

宮本好博・呼吸器センター部長は「モニターだけの手術はトレーニングが必要だが、2人がほぼ対等の立場で協力する姫路式は初めて導入する施設もやりやすい」という。

肺は右肺が3つ、左肺が2つの「肺葉(はいよう)」に分かれている。進行度により、まれに片方の肺の全摘もあるが、通常は1つか2つの肺葉を切除する肺葉切除が中心だ。がんが小さい場合、肺葉の一部を切除する「部分切除」や「区域切除」などの縮小手術を選択する場合もある。同センターでは縮小手術の割合は2割程度という。

縮小手術の方が肺の機能を落とさないで済むため積極的に区域切除を選択する施設もある。ただ宮本部長は「通常、肺機能には十分な予備力があり、スポーツ選手でもない限り、区域切除と肺葉切除が生活の質の差として現れることは少ないだろう」という。一方でコンピューター断層撮影装置(CT)で「すりガラス陰影」で発見される高分化腺がんは転移の可能性が低く、「積極的に区域切除を選択する」という。宮本部長は「大切なのは肺がんを根治させること。肺の機能が許すならば原則的には区域切除よりも肺葉切除を選択すべきではないか」と指摘している。

■術前療法が威力

今回の調査で「手術あり」が230件だった岡山大病院(岡山市)は進行した3A期の肺がん患者を中心に、手術の2カ月前から化学療法や放射線療法を併用する「術前導入化学放射線療法」を積極的に導入している。三好新一郎呼吸器・乳腺内分泌外科学教授は「手術で切除できない小さな転移にも効果がある」と説明。術前療法を導入した2B~3B期の局所進行肺がんの患者の5年生存率は約80%で、導入しない患者に比べて20ポイント以上高いという。

一方で化学療法や放射線療法をとれば、合併症が発生する可能性が高まる。このため同大病院では手術予定の患者に周術期管理センターで受診をしてもらっている。理学療法士や歯科医師らが合併症のリスクが高まるような病気や体調不良が起きていないかを診察。例えば、たんが詰まりやすい患者がいれば、手術前にたんを出す動作を指導し、手術後の感染症などを減らすようにしている。

同病院は2010年に片肺を全摘してがんと周辺を切除し、再び体内に戻す「自家肺移植」に成功した。肺の機能を維持するため肺の血管に移植用保存液を入れて冷却する方法は国内初で、がんが気管支や複数の肺葉に広がる場合でも少しでも多く肺を残せるという。

1997年に日本で初めて肺移植を成功させて以来、約140例にのぼる豊富な肺移植の経験を生かしている。「右肺の全摘が必要」と診断された60代男性に対して実施して、45%程度に落ちるはずだった肺活量を約70%確保するなど5例の実績がある。

■肺がん治療の実力病院(50病院)

※(地域別詳細版)はこちらを参照

【調査概要】 調査は(1)症例数(診療実績)(2)医療の質や患者サービス(運営体制)(3)医療従事者の配置や医療機器などの設備(施設体制)の3つの視点で、病院選びの際に参考となる情報を、インターネット上の公開データから抽出して実施した。
診療実績 厚生労働省が2014年9月に公開した13年4月~14年3月の退院患者数を症例数とした。病名や手術方式で医療費を定額とするDPC制度を導入・準備中の全国1741病院を対象にした。表では「手術あり」と「手術なし」の合計の上位50病院を掲載した。症例数の前の*は0~9例の誤差あり。「-」は0~9例で詳細不明。
運営体制 公益財団法人「日本医療機能評価機構」(東京)が病院の依頼を受け、医療の質や安全管理、患者サービスなどを審査した結果を100点満点で換算した。点数の前の*は同機構の評価方法「3rdG」での結果が公表されている病院で、S=4点、A=3点、B=2点、C=1点として計算した得点を100点満点に換算した。
施設体制 医師や看護師など医療従事者の配置や、医療機器など、厚労省が定めた診療報酬施設基準を満たしたとして各病院が届け出た項目を比べた。14年9~10月時点での届出受理医療機関名簿を集計した。

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