アート&レビュー

クローズアップ

「ガンダム」アニメ化 奥深い物語、よみがえらせる 漫画家、安彦良和氏に聞く

2015/2/28

1979年にテレビ放送が始まり、現在に至るまで絶大な人気を誇るアニメ「機動戦士ガンダム」(通称・ファーストガンダム)。当時キャラクターデザイン・アニメーションディレクター(作画監督)を担った漫画家の安彦良和氏(67)が、改めてコミカライズした「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」が完結したのが2011年のこと。それから4年、この漫画のアニメ化(OVA、全4部)が始まった。今回も総監督として参加した安彦氏に、第1部完成を機に話を聞いた。

――ファーストの放映開始から35年以上がたった。今、漫画・アニメという形で「THE ORIGIN」を世に出す意義は。

漫画家 安彦良和氏

「長い時がたって、最初のガンダムがどういうものだったのか、多くの若い人も海外の人も知らないという状況になっている。何とか分かってほしいから、漫画を描いてほしい、というのが(漫画化の時の)最初の依頼だった。確かに、当時のアニメは見せるには時がたちすぎて賞味期限が過ぎている。過去のものにしないためには、リライトするしかないと思った」

「もっとも(漫画を始めた時点では)アニメ化は前提じゃなかった。ただ、漫画でリライトしただけでは、かつてのアニメの広がりに比べると狭い。今の技術・表現力で(アニメを作ったら)どうなるか。(ファーストガンダムの)リメークかと言われるとそうではないが、限りなくリメークに近い」

「そういう意味で、若い人や海外の人、ガンダムを知らなかった人たちがどう迎え入れてくれるか、非常に気になるところ。支持してもらえるなら、コミカライズ、アニメ化した大きな意義があったということでしょう」

「私はファースト以降のガンダムはほとんど見ていません。ファーストの映画が終わった時に、自分の中で一度整理をつけている。“続編の難しさ”というのは知らないでもない。そういうこともあって一抜けた、というわけです」

「けれど、ファースト以降のガンダムで違うメッセージが発信されていて、ファーストが誤読されるケースも出てきた。それをほっといていいのかという感じもありました」

――漫画「THE ORIGIN」では、ファーストガンダムでは描かれなかったシャアやセイラの過去を描いた。

「過去編を描くのは自分でも予定外のことでした。ただ、そこまで掘り下げないとガンダムという世界は表現できないのではと思った」

「(アニメ化の話を初めて聞いた時は)冗談でしょ、と思いました。すごい長大な物語で(漫画版のTHE ORIGINは全23巻)、どれだけの時間がかかるか。『やる人いませんよ、オレも嫌です』なんて言ってほとんど取り合わなかった。それが色々話が変わって、『過去編はどうか?』となった。過去編は(THE ORIGINのオリジナルで)手あかがついてないから、それはどうなるか見てみたかった」

――今回のアニメの「総監督」とはどんな立場か。

「最終的な責任を引き受けるということ。実際は原画を見て注文を出したくらい。あとはお任せです」

――25年ぶりのアニメ制作現場はどう変わっていたか。

「デジタルが入ってきて、セルがなくなったりと様変わりしました。変わっていないのはマンパワーがベースになるということ。アニメーターの作画は基本的に同じです」

「心配なところもある。今はお客さんが細かいところにこだわるようになった。マークが間違ってるとか設定が違うとか。スタッフも細かいところに気を使っている。ただそうなると、大きなところを見逃しがちになる。特に若い人は自由奔放でいいのに。そう教えられているんでしょう。これが続くと表現自体がやせてしまう」

――第1部を見た感想は。

漫画家 安彦良和氏

「満足しています。25年前にアニメの世界から離れるまで、20年ほどアニメを作りましたが、なかなか満足することができなかった。それが皮肉なことに、(アニメから)引退した今になって、満足することができた。私が現役の時はいろんな事情もあって、『僕の限界が作品の限界』という感じだった。今回は僕の力量以上のものができた。制作体制も昔とは比較にならないくらいバックアップされている」

――改めて、安彦氏にとって「ガンダム」とはどんな作品か。

「マンガを描いている間にしみじみ思いました。(ファースト)ガンダムは本当に大きく、奥深い物語だったんだなあと。いい仕事と巡り合えました。富野(由悠季)さんの原作のすばらしさですね。どこまで意図したかはわからないんだけど。実に素晴らしいです。(ファースト)ガンダム以来、一つの(架空)世界を構築してそこの物語を描くという作品は多く作られましたが、これほどしっかりした世界を作るというのはそうそうできることではない。だからこそガンダムは長命なんだし、長命でいいんだと思います」

(文化部 柏崎海一郎)

OVA第1部「機動戦士ガンダム THE ORIGIN I 青い瞳のキャスバル」は4月下旬発売。2月28日から、全国13の映画館にて2週間限定のイベント上映、先行販売あり。

アート&レビュー 新着記事

ALL CHANNEL