行きたいところにたどり着かない 方向音痴のなぜ
地図もアプリも……
車を運転していたら、カーナビゲーションの調子が悪くて画面が動かなくなった。助手席の妻が「それじゃあ、私がナビしてあげる」と言い出した。嫌な予感がした。地図を手にした妻が指示する通りに運転したら、案の定、目当てのアウトレットモールにたどり着けない。ぐるぐる回るだけの珍道中になった。
こうしたエピソードを挙げ出したらきりがない。先日、旅行先で始発の特急電車に乗り込んだら、妻はいきなりガバッと座席の向きを変えた。乗り込む前に駅の大きな地図で現在地を確認したばかりなのに、進行方向を180度勘違いしたらしい。後ろの席に座っていた老夫婦が、向かい合わせになってニコッと笑いかけてきた妻にびっくりしていた。
どうしてあんなに方向感覚がないのだろう。大災害が起きたときに果たして家に帰ってこられるか。とても気がかりだ。全地球測位システム(GPS)を利用して目的地まで案内してくれるアプリを彼女のスマートフォンに入れてみた。だが全く使いこなせない。やむなく妻の勤務先から自宅まで歩いて帰る予行練習をしたら、基本的な帰宅ルートは理解してくれた。けれども、いざという時、本当に戻ってこられるかなあ。
私のせいじゃない
「お母さん、自分が回るんじゃなくて、行きたい方向に地図を合わせて回すんだよ」。地図が読めない私を気遣って息子がアドバイスしてくれたが、効果はなかった。駅の改札を出て目的地と反対方向に歩き出す、10回行った店に11回目に着けない。こんなことが日常茶飯事だ。
方向感覚にすぐれた人は「なんでそうなるの」と思うだろう。私だってわからない。もちろん努力はしている。出発前にはパソコンで目的地周辺の地図を検索し、印刷して持参する。さらに駅で周辺地図だって確認する。でも地下鉄の階段を上がって通りに出ると、もうどちらに歩き出せばいいかわからないのだ。
だいたい日本の街は方向音痴にやさしくない。通りに沿って歩いても番地はとびとびで不規則だし、建物の番地表示を確認しようにもなかなか見当たらない。○○通りと地図にはあっても、道に書いてあるわけじゃないから、どれがどの通りか分からない。
迷った時は恥をしのんで携帯電話をかける。「△△を背に右手にコンビニがありますので、その先の角を右に曲がって、××美容室を左折……」。説明してもらえればちゃんとたどり着ける。血の通った具体的な案内なら私だって理解できるのだ。
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