マネー研究所

保険の新常識

宝くじ以下? がん保険の費用対効果を試算 保険コンサルタント 後田亨

2015/2/23

20~30代の罹患率の低さをみると、がん保険に入るなら40代以降がよさそうだと思った人もいるはずです。そこで男女それぞれ40歳と、男性の罹患率が大きく上がる60歳から亡くなるまで加入した場合の期待給付額と保険料総額を比べたのが表2です。各年代の余命は保険会社ががん保険などの保険料を算出する際に使っている「生命表」から、小数点以下を四捨五入して計算しました。還元率は最も高い40歳加入の男性でも42%、それ以外は32~34%程度であることが分かります。

表2.40歳または60歳からがん保険に生涯加入した場合の期待給付額と保険料総額、還元率
40歳から生涯加入60歳から生涯加入
男性女性男性女性
保険料総額143万7408円
(42年分)
133万5744円
(48年分)
177万6384円
(24年分)
123万8880円
(29年分)
生涯罹患率61%44%61%40%
期待給付額61万円44万円61万円40万円
還元率42.4%32.9%34.3%32.3%
(注)保険料総額の年数は「生命表」から、40歳からの男性余命41.92年、同女性48.29年、
60歳からの男性余命23.62年、同女性29.28年の小数点以下をそれぞれ四捨五入。
期待給付額と還元率の算出方法は表1と同じ

これらの還元率を妥当とみるか、低いとみるかは人それぞれでしょう。しかし2014年12月1日付「宝くじや競馬から考える『保険の還元率』」で取り上げたギャンブルと比べたらどうでしょうか。宝くじの12年度販売実績に占める当せん金の割合にあたる還元率46.9%に及ばないのです。このがん保険はファイナンシャルプランナー(FP)らの間でも評価が高い商品で、かつ罹患率が高まる年代から入った場合でもこの程度の数字にとどまるわけです。

2年に1回までは再発時にも100万円が支払われるので、期待給付額はもっと大きくなるかもしれません。しかし「2013年版 こんなにかかる医療費」(新日本保険新聞社)によると、再発率は罹患率が高い胃がんや乳がんでもそれぞれ23%、30%といったところです。

50代後半である私に言わせれば、向こう10年間の定期でも、二十数年の終身でも割に合わない還元率です。一時金にあたる100万円を貯蓄から自腹で賄えるようにしておけば、がん保険に頼る必要はないと思います(実際、私は民間の保険には何も入っていません)。

医療保険もがん保険もそうですが、人は入院や大病に必要なお金をどう確保するかという課題に対し、「不安への備え=保険」という図式に縛られすぎているのではないでしょうか。不安から解放され、安心を得ることを優先してしまうと、「そのお金は保険でなければ手当てできないのか」というそもそもの視点を見失いがちです。

特に冒頭のような「保険に入っておらず後悔した」、あるいは逆に「保険に入っていて助かった」という誰かの体験談は、損することを嫌う人間の心理に強いインパクトを与えます。だからこそ、保険の仕組みとは切り離せない確率論から目をそらすべきではありません。前回と今回の試算が、保険という不利な賭けに生涯で100万円単位のお金をつぎ込むことが得策だろうか、と立ち止まってみるきっかけになればいいと思っています。

後田亨(うしろだ・とおる) 大手生命保険会社や乗り合い代理店を経て2012年に独立。現在はバトン「保険相談室」代表理事として執筆やセミナー講師、個人向け有料相談を手掛ける。著書に「生命保険の『罠』」(講談社+α新書)や「がん保険を疑え!」(ダイヤモンド社)、「保険会社が知られたくない生保の話」「保険外交員も実は知らない生保の話」(日本経済新聞出版社)など。公式サイトはhttp://www.seihosoudan.com/とhttp://www.yokohama-baton.com/

マネー研究所 新着記事

ALL CHANNEL