健康・医療

日経実力病院調査

肝臓がん、「電熱」選択肢 切除・転移部分逃さず 日経実力病院調査2014

2015/2/18

日本で患者数が多い肝臓がん。日本経済新聞の「実力病院調査」では、患者の状態に合わせて複数の治療法から適切なものを選べるようになっている実態が分かった。再発防止には、肝炎など原因となる疾患を治すことも重要だ。また、脳腫瘍は、外科手術と抗がん剤、放射線を組み合わせるのが一般的で、新しい治療法も登場している。
早期がんでは切除とともにラジオ波焼灼療法でがん細胞を焼き切る(虎の門病院でのラジオ波焼灼療法)

肝臓がんは肝臓自体から発生する「原発性」と、他の臓器から転移する「転移性」に大別できる。原発性の95%は肝細胞がん(肝がん)とされる。

肝がんの発症原因の8割はB型、C型を中心としたウイルスの持続感染による慢性肝炎や肝硬変だ。脂肪肝や過度のアルコール摂取などを原因とする患者も増えている。治療と経過観察で早期にがんを発見することが重要だ。

治療方法は(1)手術による切除(2)ラジオ波焼灼(しょうしゃく)療法(3)肝動脈塞栓療法の3つが主流だ。肝機能の状態(肝障害度)と、腫瘍の大きさや数により決まる。

日本肝臓学会の治療ガイドラインによると、肝障害度が比較的軽く、腫瘍の直径が3センチ以内で数も1~3個の場合は切除かラジオ波を選択する。3センチ以上で2~3個ならば切除か肝動脈塞栓療法が効果的という。

今回の調査で、肝切除に加えラジオ波も含む「手術あり」が910件と最多だった東京大学病院(東京・文京)の国土典宏教授は「肝がん治療では切除が基本となる」と話す。「切除手術では検査では見つけることのできない転移部分まで取り除くことができ治療効果が最も高い」という。

東京大学病院の手術実績は国内で最も多い

同病院では2007年以降、コンピューター断層撮影装置(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)による画像を使い、開腹前に綿密な切除計画を検討している。

調査で「手術あり」が524件で全国で7番目に多かった熊本大学病院(熊本市)。14年に実施した肝切除手術103件のうち、4分の1にあたる26件が腹腔(ふくくう)鏡手術だった。

腹部に数カ所の小さな穴を開け、腹腔鏡や鉗子(かんし)を差し込んで腫瘍を取り除く。開腹手術に比べ手術の傷が目立たず、「術後の入院期間も10日(中央値)程度で済む」(馬場秀夫副病院長)。ただ腹腔鏡手術では術後出血などの合併症を引き起こすリスクもある。病院ごとの実績を見極めることが必要だ。

切除とならび、肝臓がんの代表的な治療法がラジオ波だ。AMラジオなどに近い周波数の熱で、がん細胞を焼き殺す。皮膚の外側から太さ1.5ミリ程度の針状の電極を刺し、超音波画像で腫瘍の位置を確認しながら行われる。体力が低下して切除が難しい高齢者や合併症の患者なども受けられるのが特徴だ。

04年に保険適用となり、普及が進んだ。虎の門病院(東京・港)では早期がんで切除とラジオ波の療法の選択肢がある場合は「1対2の割合でラジオ波を活用する」(池田健次肝臓科部長)。

ラジオ波は9割の確率で腫瘍を焼き切ることができるが、がん細胞の一部が残ることがある。虎の門病院は保険適用されている4種類の電極すべてを使って適切な手法を選ぶ。12年に保険適用となった電極「バイポーラー」を使った治療では5センチ程度の大きな腫瘍も対処できる。電極を腫瘍に触れずに取り囲むように複数本刺して焼き切るため、「がん細胞が周囲に飛び散ったりする危険性も回避できる」(池田部長)という。

腫瘍が大きかったり、数が多かったりする場合に多く実施されるのが肝動脈化学塞栓だ。がん細胞に栄養を送る肝動脈の血管に、抗がん剤を染み込ませたゼラチンスポンジをカテーテルを通じて詰め、腫瘍を“兵糧攻め”にする。

金沢大学病院(金沢市)の金子周一肝臓センター長によると、肝動脈化学塞栓は医師の技術によるところが大きい。ゼラチンスポンジを詰める際の圧力の加え方などで差が出るという。昨年発売されたエーザイの「ディーシービーズ」など、ゼラチンスポンジの代わりにビーズ状の形をした製品もある。

金沢大学病院では、カテーテル治療を用いて腫瘍内の血流を止め、その後にラジオ波を使う治療も行っている。「治療成績のよい医療機関は、特定の治療法にこだわることなく、柔軟に治療法を組み合わせている」(金子センター長)

化学療法では肝臓がんの内服薬として09年に初めて国内で承認された分子標的薬「ソラフェニブ」がある。がん細胞を狙い撃ちし、従来の抗がん剤よりも副作用が少ない。腫瘍が4個以上の進行がんで服用する場合がある。

■肝臓がん治療の実力病院(50病院)

※(地域別詳細版)はこちらを参照

【調査概要】 調査は(1)症例数(診療実績)(2)医療の質や患者サービス(運営体制)(3)医療従事者の配置や医療機器などの設備(施設体制)の3つの視点で、病院選びの際に参考となる情報を、インターネット上の公開データから抽出して実施した。
診療実績 厚生労働省が2014年9月に公開した13年4月~14年3月の退院患者数を症例数とした。病名や手術方式で医療費を定額とするDPC制度を導入・準備中の全国1741病院を対象にした。表では「手術あり」と「手術なし」の合計の上位50病院を掲載した。症例数の前の*は0~9例の誤差あり。「-」は0~9例で詳細不明。
運営体制 公益財団法人「日本医療機能評価機構」(東京)が病院の依頼を受け、医療の質や安全管理、患者サービスなどを審査した結果を100点満点で換算した。点数の前の*は同機構の評価方法「3rdG」での結果が公表されている病院で、S=4点、A=3点、B=2点、C=1点として計算した得点を100点満点に換算した。
施設体制 医師や看護師など医療従事者の配置や、医療機器など、厚労省が定めた診療報酬施設基準を満たしたとして各病院が届け出た項目を比べた。14年9~10月時点での届出受理医療機関名簿を集計した。

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