融資の担保、自宅だけじゃない 奥の手とリスク親の不動産や上場株も

飲食店を営むAさんは、店を改築するため1千万円を借りるつもりだ。借金の担保にはマイホームを入れようと思い、信用金庫に相談したところ、難色を示された。5年前に大手銀行で組んだ住宅ローンの返済がかなり残っているからだという。どうしたらいいか。

個人事業主がまとまったお金を借りる場合、通常は金融機関から不動産の担保を求められます。返済が滞ったときに、金融機関はその不動産を売って貸出金を回収することができます。この権利を「抵当権」といいます。

Aさんの場合、事情は少し複雑です。住宅ローンを組んだ5年前、大手行が自宅に抵当権を付け、それが今も有効だからです。信用金庫としては、Aさんの自宅に抵当権をつけるにしても、「二番抵当」になってしまいます。

Aさんが返済不能になったときには大手行が優先して担保不動産を売って回収し、その後でないと、信用金庫は返済を受けることができません。金融機関が抵当権の順位にこだわるのはこのためです。

担保となる不動産を第三者から提供してもらうこともできます。これを「物上保証」といいます。よくあるのが親が所有する不動産です。例えばAさんに父親名義の実家があり、抵当権が付いていないのなら、父に頼んで物上保証をしてもらうのも、選択肢の一つになります。

留意すべき点もあります。Aさんが借金を返済できなくなれば、父が困るからです。返済不能に陥ったとき、金融機関はまずAさんと話し合ったうえで、担保である父の不動産を「任意売却」しようとします。

話し合いがつかない場合、金融機関が裁判所に「競売」を申し立てて、広く買い主を募ることもあります。いずれの場合も、売却代金だけで返済しきれなかった分は無担保の借入金として残ります。

実は借入金の担保は不動産とは限りません。西村あさひ法律事務所(東京・港)の弁護士、有吉尚哉さんは「金銭的価値があれば、知的財産権、特許権、商品在庫などなんでも担保になり得る」と言います。身近なところでは権利関係の登録制度がある上場株式や自動車などです。

上場株式は証券会社で手続きすれば「質権」という担保が設定できます。借入金を金融機関に約束通り返済していれば、議決権や配当金、株主優待などの権利はそのまま持ち続けられる仕組みです。

仮にAさんが法人であれば、取引先に対する売掛金が担保になるかもしれません。売掛金を簡便な手続きで担保にできる「債権譲渡登記」という制度があるからです。東京スター銀行が2009年に始めた「売掛債権担保ローン」は、小口の売掛金をまとめて担保にできるのが特徴で、約50億円の貸出残高があります。

[日本経済新聞朝刊2015年2月11日付]

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