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沢村一樹さん 「すし屋の海老天」の思い出

2015/2/6

(さわむら・いっき)俳優。1967年鹿児島県生まれ。雑誌モデルを経て、29歳でドラマデビュー。初の連続ドラマ主演は09年の「浅見光彦シリーズ」。ここ数年は立て続けに連ドラ主演でひっぱりだこ。「DOCTORS3」は1月から放映中。 【最後の晩餐】誰とと聞かれて奥さんと答えようか、見ず知らずの若い女の子か。前日にかみさんに相談してみます。僕とがいいと彼女が言えばそうするし。かみさんは「体がとろけるような高級な肉」って言うと思う。僕はおいしいお茶漬けでいいんだけど。いやいや、辛口の日本酒とカラスミ、それにお茶漬けをさらさらっと。やっぱりそれがいいです。 =写真 編集委員 葛西 宇一郎

食の原点は生まれ育った鹿児島の海の幸だ。種子島出身の母が得意としたのは魚の煮込み料理。だが、テーブルにしょっちゅう上る皿を見て「また魚か」とがっかりしたものだ。代わりに好きだったのはホワイトシチュー。甘くて独特な「おふくろの味」だった。

■母の教え「魚は骨以外残すところがない」

正月は父がブリを釣ってきてさばいた。母から「魚は骨以外残すところがない」と教えられてきたおかげで、食べ方はとても上手になった。最初に食べるのは目玉の周り。キンキやタイのような大きな魚の「ぷる~んとした目の部分はたまらないごちそう」なのだ。

刺し身は、海の幸だと値が張るから実家では地鶏だった。10歳ぐらいのときのこと。父親が鶏をもらってきた。狭いぼろアパートながら庭はある。ペットのつもりで鶏と遊んでいた。

1週間ほどした日曜日、遊びから帰ってくると、父親が昼間から酒を飲みながら地鶏の刺し身を食べている。「食うか」と言われて食べたら「これがまたうまかった」。ふと庭に鶏がいないのに気づき「逃げたよ!」と叫ぶと「ふわっはっは。おまえの胃袋の中に入っているよ」。そういえば父が珍しく朝から台所に立っていた。不思議とショックはなく、「命はおいしく大事にいただくものなのだ」とそのときに教わった気がする。

そんな父が程なく家を出て行った。両親の離婚。父のこしらえた借金が母の両肩にのしかかる。母は夜遅くまで働き、女手一つで2人の子を育て上げた。

留守番をする自分と4歳下の妹にとって、ごちそうだったのが海老(えび)の天ぷらだ。アパートの隣がすし店で、よく天ぷらの盛り合わせを出前で頼んだ。ある日、「海老だけ盛ってもいいよ」と店主に言われて大喜び。注文は海老の天ぷらに切り替わった。数カ月後、高額な請求の理由を母に知られて怒られた。唯一のぜいたくだった「すし屋の海老の天ぷら」にはそんな思い出がある。

20歳のとき、アルバイトで必死にためた18万円を手に「稼げるようになるまでは帰らない」と固く決意して単身上京。モデルの仕事を始めた。ようやく里帰りできたのは雑誌「メンズクラブ」の表紙モデルになった26歳のころだ。ふるさとでは、母がキビナゴの刺し身で迎えてくれた。小さい魚を一つ一つ刺し身にする。「すごい手間がかかるのよ」と言いながら、帰るたびによく作ってくれた。

■急ぐ家路、妻の手料理「何でも好き」

テレビドラマに初めて出演したのが上京して9年後の29歳。遅咲きだったが、同年に連続ドラマ「続・星の金貨」に出演したのをきっかけに、順調にステップアップを重ねている。それを陰で支えてくれているのが、モデル仲間だった妻だ。つき合って4年半、俳優で食べていけるようになった33歳で結婚した。

財布のひもを握るのは妻。税込み収入の1割をお小遣いとしてもらい、クレジットカードの明細も全部チェックしてもらう。「お金はかみさんに管理してもらった方が楽」。それで不便を感じたことはない。

失敗はしょっちゅうするのだが怒らない。妻が祖母から引き継いだ大事な鍋を真っ黒焦げにしてしまったときもそうだった。「温めておいてね」と頼まれても、ガス台の前でじっとしていられない性分だ。ほかのことに没頭し、焦げたにおいで異変に気がついた。しっかり者で動じない妻に遊ばせてもらっているのかもしれない。

大好物だった「おふくろのホワイトシチュー」の味の記憶は薄れ、今は妻のシチューが取って代わりつつある。鳥のスープ、豚の角煮……。「かみさんの料理は基本的に何でも好き」

仕事が終わると自宅に急ぐ。明るく社交的なイメージからは意外だが、共演者と食事に行くことはほとんどない。「酒を飲みながら仕事の話をするのがすごくイヤなんです」。早く終われば夕食は家族と一緒、飲みに行くときは子どもたちが寝てから――。結婚してからはそんな生活だ。中学2年生と小学5年生、4歳の3人の息子はまさに育ち盛り。「子煩悩なわけじゃないけれど、今しか見られない光景だから、子どもたちを眺めているだけで楽しい」

放映中の連続ドラマ「DOCTORS3 最強の名医」(テレビ朝日)では、外科医を演じている。「これからは経験したことがないほどきつい収録スケジュールが続きそう」。3食「ロケ弁」の生活では、米の摂取量を調整したり、特に野菜はよくかんで食べたりと気を使う。消化がよくなるよう、よくかみ、ゆっくり食べるのが沢村流だ。

胃腸をいたわるのは「大好きな酒をこの先長く飲み続けたいから」。次の日がオフならば、1人自宅で映画を見ながら朝まで10時間もビールを飲み続けられるほどのビール党。天気のいい日に自宅のベランダで飲む昼間のビールは「プシュッ」「グビッ」がたまらない。そんな至福のときも、この先しばらくはお預けになりそうだ。(福沢淳子)

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■日本酒の最高の供「カニの大名詰め」

寿矢のカニの大名詰め(東京都世田谷区)

飲み仲間や家族ともよく訪れるのが、東京・経堂駅前の「経堂美登利寿司 寿矢(としや)」(電話03・3439・1408)。常連になって4~5年がたつ。

一手間かけた江戸前ずしに1品料理も多い。お気に入りは「カニの大名詰め」。「甲羅にカニの肉が詰まっていて日本酒には最高」。ただ何の酒でもビールと同じペースで飲んでしまうので二日酔いする。だから翌日夕方まで寝ていられるときでないと、日本酒と一緒に頼めないのが残念なのだとか。

フグやタケノコの空揚げにタラノメの天ぷらなど、旬のものを少しずつ盛り合わせる。いろいろ食べたい人に人気だ。

1階はにぎやかだが、2階はカウンターで落ち着いた雰囲気を楽しめる。ディナータイムの目安は1階が税込み6000~8000円、2階が8000~1万円だ。

[日経プラスワン2015年1月31日付]

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