他社と学び会う 女性活躍推進のノウハウ同業ライバルとも協力

2015/1/31
女性の活躍推進は経営戦略の一環とはいえ、他社と悩みを共有しやすい。時にライバルである同業者間でも、また異業種間でも、他社から学び、一緒に取り組む動きが広がっている。

「ヤフーのママ社員に教えてもらったり、サイバーエージェントを参考にして制度を導入したりしています」と話すグリー人事本部の斧佳代子さん(35)。昨年4月に育児休業から復帰すると、同社の両立支援などの制度づくりを任された。同社の平均年齢は31歳。出産する女性が一定割合になってきたのは最近で、手探りでの環境整備が必要だった。

社員と面談するグリーの斧佳代子さん(東京都港区)

在宅勤務を導入するか、月に何回認めるか。子どもの発熱などに対応できるようにするには、休暇の名目や頻度はどうするか。「社員の意見を聞きながら、他社のやり方を参考にした」(斧さん)。半年で様々な支援制度を検討・導入した。

昨年夏には本社にヤフー、サイバーのママ社員を呼び、仕事と育児の両立について語ってもらった。グリーが手掛けるオンラインゲームは夜の利用が多く、対応側も「不夜城」になりがち。「IT業界は働き方が特殊だと思っている社員が多く、一般的な女性活躍セミナーが心に響かない。同業で働き続けて活躍している姿を見せたかった」

サイバーに倣い、昨年10月から全社員ヒアリングを実施。約1200人の聞き取りをほぼ終え、管理職育成などの課題が見えてきた。今月、人事課題を役員合宿で議論する前にはヤフーの人事部と意見交換もした。3社は今後も連携する方針だ。

「各社で活躍する女性ロールモデルを業界で共有し事例集を作る」。昨年12月、印刷の業界団体の女性活躍推進部会が、男女混合の分科会でまとめた提言を加入企業の経営陣に中間報告した。

一社一社では女性管理職は少ないが、業界全体では工場の現場から内勤、営業まで様々な職種にいる。分科会のリーダー、広済堂の茅島葉子さん(48)は「女性には活躍したい意識が潜在的にあるはず。それを呼び起こしたい」と説明した。

印刷の業界団体の女性活躍推進部会メンバー(東京都港区)

「普段はライバル同士だが、このテーマでは隠し立てせずにオープンに議論ができた」と事務局長の小野隆弘・印刷工業会専務理事。分科会委員の一人、トーインの田中朝子さん(37)は「問題点を考える上で自社の社長や人事と相談したり、女性社員にヒアリングしたり貴重な機会だった。分科会での議論を自社で進めたい」と話す。

経営陣からは「他社の委員との議論で、委員自身が大きく成長した」「女性はすでに活躍している。会社の受け皿の方がしっかりしないといけない」などの声も上がった。部会ではワークライフバランスやマネジメント側の問題についても今後検討する方針だ。

異業種で連携する動きもある。同じ職種の悩みを共有しようと、リクルートホールディングス、サントリーホールディングスなど7社の営業職女性が集まった研修プログラム「新世代エイジョ(営業女子)カレッジ」。昨年11月には「営業で女性が活躍するための提言」を各社の営業担当役員らに報告した。

職種も越えて集まったのは、伊藤忠商事、野村ホールディングス、全日本空輸、日産自動車、資生堂。昨年11月、「働く女性の企業の垣根を越えたネットワークづくり」をテーマにした都内でのセミナーに5社の社員ら約100人が参加した。

初対面で関係をどう築き育てるか――。講師の助言を聞き、隣同士で自己紹介などを練習。成果を実践するために引き続き開いた交流会は、あちこちに話の輪ができ熱気に包まれた。日産の岸部鈴奈さん(25)は「人見知りなので講義が参考になった。同じ経理担当の他社の人とも話せて良かった」と話す。

ダイバーシティ担当者同士のつながりから始まった連携。2回目の今回はキャリアを積む上で女性こそ人脈作りが必要ではとテーマ設定した。

青山に本社を置く企業の社員が集まり議論(東京都港区)

「同業同士だと『それ、あるある』で盛り上がり、異業種だと『目からウロコ』」と伊藤忠人事・総務部の井上美緒さん(45)。「悩みも境遇も一緒の同業に対し、無理だと思っていたことに異業種からはブレークスルーが得られる」

井上さんの次の狙いは「ご近所」。ちょうど同じことを考えていた隣のビルの日本オラクルの担当者、川向緑さん(41)と、東京・青山で働く女性のネットワークを呼びかける準備中だ。

「青山でやりたいことを自由な発想で出し合いましょう」。20日、互いのオフィスを見学後、両社の約30人が集まった交流会。グループごとのテーブルの白い紙は、オリンピックや近隣の美術館に絡んだものなど、あっという間にカラフルな提案で埋まった。

伊藤忠商事の長沢茉莉さん(26)は「ランチの店など興味も近い。効率的な働き方の情報交換もして有意義な話ができた」。川向さんは「地域での関心が似ていて会話が途切れなかった。働く人が輝ける青山にしていきたい」と意気込む。井上さんとともに「化学反応」を期待する。

経済産業省の福地真美・経済社会政策室長は「ダイバーシティ経営の考え方はだいぶ浸透してきたが、実際に成果を出す段階で企業が横展開する動きは有益だ」と話す。

(女性面編集長 橋本圭子、井上円佳、栗原健太)