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「日本語の楽しさや感動を広げたい」 小野寺牧子さん

2015/2/1

間違いやすい熟語、誤読しやすい漢字、面白い由来の表現方法。尽きることない「ことば」との出会い――。日本語研究家として、書物、講座などを通じて、日本語の素顔を発信している。

日本語研究者の小野寺牧子さん=写真 松渕 得之

日常表現の語源を知る楽しさは意外性に富んでいる。ふとした疑問を探る旅に出ては、不思議な語源を見つけ出す。

例えば「泥縄」。国会中継で「野党の対応はドロナワ的」という解説を耳にして、なぜ「泥」と「縄」なのかと疑問がわいた。「泥棒を捕まえたが縛り上げる縄がないため、慌ててワラで縄をつくる」との間が抜けた状況を指すことから「事態が起きてから慌てて準備する例え」として使われるようになったという。

夫は外科医で聖路加国際大学教育センター長。日本語研究に携わる一つのきっかけは「25年前、夫の留学に家族で渡英し、ロンドンの日本人学校の補習校で国語を教えたこと」。子どもたちに作文を書かせ、漢字を意識させるよう心がけた。「祖国の文化を忘れないよう自由に書いてもらった」。アルファベットが記号の組み合わせなのに対し、一つ一つの漢字に込められた深い意味をわかりやすく丁寧に教えて興味をわかせた。

ロンドンの日本人学校の補習校で国語を教えたのがきっかけで、日本語研究に興味を持った

帰国後、日本漢字能力検定協会の日本語教育研究所準研究員として日本語・漢字講座の講師を15年間担当。「無味乾燥なテキストで試行錯誤」しつつ、字源の「本質」を追い求めるようになった。

弁護士、企業の法務関係者、大学教授など法律専門家を対象に毎月発行するニューズレターに連載を持ち、正しく面白い日本語を紹介している。数多くの辞書、事典、文献と格闘し「丹念に意味を調べる地道な作業」だ。10年に及ぶその「旅」の記録は膨大になり、今なお続いている。

このほど、その記録をエッセーにまとめた。中でも和風、恵風、木の芽風など、心地よい空気を運んでくる「風」の記述は目を引く。「風」という漢字1つが、季節感を豊かに表現できる力を持っていると訴える。

「日本語の楽しさ、感動を色々な人に伝えたい。ことばと触れ合い、新しいことと出会い、豊かな気持ちになれれば」

(藤田 哲哉)

小野寺牧子(おのでら・まきこ) 日本語研究家。東京都生まれ。1977年東大経卒。三菱総研、日本漢字能力検定協会準研究員などを歴任。著書に「にほんご万華鏡2」(中央公論新社)など。60歳。

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