ガラリと変わった太陽系 2015年は冥王星に注目ホンモノの教養大事典

2015/2/22
ナショナルジオグラフィック日本版

教養って何でしょう。広辞苑では「単なる学殖、多識とは異なり、一定の文化理想を体得し、それによって個人が身につけた創造的な理解力や知識」と説明されています。時事ネタをたくさん知っていても、それだけでは教養になりません。時事ネタに触れたときに、その意味を読み解く力を与えてくれるのが教養です。欧米には「リベラル・アーツ」の伝統があり、ギリシャ・ローマの時代から教養がとても大事にされてきました。この連載では書籍『ビジュアル教養大事典』から、いま身につけておくときっと良いことがある知識を厳選して紹介します。今回はいよいよ探査が始まる「冥王星」について。

2015年、無人探査機ニュー・ホライズンズが史上初めて冥王星に接近する。2006年にNASA(米航空宇宙局)が打ち上げたこの探査機は、9年の旅を経て探査を開始する。

同機が打ち上げられた2006年といえば、それまで太陽系の一番外側の惑星とされていた冥王星が、国際天文学連合(IAU)での決定に伴い「準惑星」に格下げされた年。格下げはされたけれども、冥王星はその後も私たちの興味を引きつける魅惑の天体であり続けている。それどころか少しずつ姿が見えてきた太陽系の外縁天体を象徴する存在として、いっそう注目を集めるようになった。

探査機ニュー・ホライズンズのイメージ図。背景に冥王星とその衛星カロン (NASA/JHU APL/SwRI/Steve Gribben)

なぜ、冥王星は「格下げ」されたのか

冥王星が発見されたのは、1930年のこと。それ以来、ずっと惑星に分類されていた冥王星が、なぜ2006年になって準惑星に格下げされてしまったのか。それは近年、惑星と呼んでよいのかどうか判断に迷う天体が次々に発見されているからだ。大きさも、冥王星より大きなものから、小惑星や岩石と区別がつきにくいものまでまちまちだった(ちなみに冥王星の大きさは、直径およそ3480キロの月よりもわずかに小さい)。

そこでIAUは、どういう天体を「惑星」と呼ぶべきか、その用語を再定義することにした。

そこで決められた惑星に求める条件は三つ。(1)恒星の周りを回り、それ自体は恒星でも衛星でもないこと。(2)ほぼ球状であること。(3)太陽系の発展段階でその軌道近くから他の天体を排除していることである。

冥王星は(1)と(2)の条件を満たすけれども、(3)には合致しないことから、準惑星と呼ばれるようになったのだ。準惑星には、ほかに小惑星帯(アステロイドベルト)にあるケレスや、海王星の遠方を回るエリスがあるが、多くは海王星の外側で太陽を公転している。

私たちが子どもの頃と比べると、太陽系の辺境に対する認識はガラリと変わった。太陽系といえば、太陽と水星から冥王星までの惑星とそれらを回る衛星、そして火星と木星の間を漂う小惑星帯がすべてだった。今はその外側に多くの準惑星がある。さらに遠方にはオールトの雲と呼ばれる彗星(すいせい)の巣があると言われている。太陽から海王星までの距離は30天文単位(太陽から地球までの平均距離1億5000万キロの30倍)だが、オールトの雲はその3000倍の先、光の速さでも1~2年もの時間がかかる遠方に広がっているのだ。

海王星の向こう側に広がるこうしたさまざまな天体は、太陽系の新たなフロンティアとして天文学の重要な研究テーマになっている。ニュー・ホライズンズは冥王星の撮影を間もなく開始し、最接近するのは2015年7月とされている。これまで地球から望遠鏡で見るしかなかった太陽系の辺境の姿が、また少し明らかになる。

2006年9月、打ち上げられて間もないニュー・ホライズンズが42億キロの距離から撮影した冥王星 (NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Southwest Research Institute)

(日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック『ビジュアル 教養大事典』を基に再構成]

[参考]ナショナル ジオグラフィック『ビジュアル 教養大事典』では、グローバルに通用する教養を体系化。主に欧米で培われてきたリベラルアーツに関連する知識を項目ごとに整理し、「なぜそれが重要なのか」「それぞれがどう関連しているのか」といったことを、1テーマ1ページでビジュアルかつコンパクトに解説しています。

ビジュアル 教養大事典 (ナショナル・ジオグラフィック)

著者:デビッド・ワルチンスキーほか
出版:日経ナショナル ジオグラフィック社
価格:9,720円(税込み)

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