元祖は鉄道会社か 知られざる株主優待のルーツ

2015/2/19

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大人気の株主優待だが、欧米を始め海外株式市場ではほとんどお目にかかれない。いつ、どの会社がなぜ優待を始め、どのような経緯でここまで広がったのか。ルーツを探った。

一大ブームとなった株主優待だが、実はその起源や歴史ははっきりしない。「お歳暮のように感謝の気持ちを物として贈る習慣から来た」「株主総会のお土産がいつの間にか制度化されていった」など諸説ある。「世界的にもここまで普及しているのは日本だけ」(大和インベスター・リレーションズの松永聖祥さん)という優待の生い立ちを探った。

「株主優待第1号は一体どの会社なのか」──。こんな疑問を多くの関係者にぶつけてみたが、回答はいずれも「分からない」。古い日本経済新聞を調べると、1970年代には既に「○○会社が株主優待を導入」などの記事があるので、少なくともそれ以前からあったようだ。壁を感じながらも取材を進めると「鉄道会社が戦前からやっていると聞いた」との情報をキャッチした。

鉄道から始まった?

結論から言うと、記録が確認できた範囲で最も古い優待は東武鉄道だ。同社の社史には「明治32年(1899年)、優待株数300株以上、範囲は鉄道全線、優待株主数41名」の記載がある。戦前どころか19世紀だ。

当時は鉄道など、大規模インフラの整備のための資金調達手段として株式会社が多く生まれた時期。戦後は百貨店や航空会社など、富裕層に近い人々を対象に広がっていったと推測できる。

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