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「長寿年金」で考える 掛け捨て保険は本当に損か 保険コンサルタント 後田亨

2015/2/2

 「トンチン年金」という年金保険の仕組みをご存知でしょうか。17世紀にイタリアのロレンツォ・トンチという人が考えたとされ、長生きする加入者ほど一生涯にわたり、しかも高い金額を受け取れる「長寿年金」です。その代わり年金支払い開始年齢に達する前に亡くなってしまうと払い戻しがなく保険料が掛け捨てになるなど、「生き残りゲーム」のような側面があります。

「トンチン年金」は日本で商品化されていないが、いまの個人年金保険が本当に老後の資金準備に最適な商品なのかを考える題材にはなる

 一般の個人年金保険と比べると、違いがはっきりします。個人年金保険は確定年金の場合、加入者が60歳や65歳までに払い込んだ保険料を原資に、その後5年間や10年間の一定期間、定額の年金が毎年支払われます。保険料払い込み期間中や年金支払い開始前に亡くなっても返戻金が受け取れるほか、年金支払い期間中に亡くなれば残る期間分の年金額が指定された受取人に払い戻しされますから、掛け捨てにはなりません。

 これに対しトンチン年金では返戻金はなく、早く亡くなってしまえばその時点で掛け捨てになります。年金を受け取り始めてから亡くなっても、支払いはそこで終わりです。こうして亡くなった加入者に支払われるはずだった年金が、長生きした加入者に分配されるのです。加入者の年齢が上がるにつれて年金を受け取る人は減っていくため、長生きすればするほど、もらえる額も期間も有利になるわけです。

 少子高齢化を背景にした年金制度への不安などから「長生きはリスク」といわれるご時世。トンチン年金は長寿国かつ保険大国である日本で、もっと関心を集めてもいい仕組みだと思います。しかし商品化はされていません。米国では長寿年金として2004年から販売されており、商品のバリエーションも増えているようです。

 日本におけるトンチン年金普及のネックは、「掛け捨てはもったいない」と考える消費者が少なくないことでしょう。死亡保障自体は同じでも、保険料負担が比較的少なくて済む掛け捨ての定期型より、貯蓄機能のある終身型に根強い人気があります。また長生きした場合のメリットは分かるものの、ほかの加入者が亡くなるほど有利になるという仕組みには抵抗を感じたり、「そもそも自分が長生きできる保証はない」と損を嫌ったりする人もいるはずです。

 それでも子供がいない夫婦や単身世帯も増えるなかでは、日本でもトンチン年金を求める一定のニーズはあるような気がします。「『身寄りがいないので、自分が死んだ後はお金が戻ってこなくてもいい』という加入者を集めれば、例えば80代からは年利4%くらいの年金保険商品を作ることができるかもしれない」。保険会社で商品設計に携わっていた人から、こんな見方を聞いたことがあります。

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