「廃虚モール」からの復活 ピエリ守山、来店客の評判

日経トレンディネット

2008年9月のオープンから間もなく業績不振に陥り、「廃虚モール」として話題となった滋賀県守山市の商業施設「ピエリ守山」が、2014年12月17日のリニューアルオープン以降、順調なスタートを切っている。オープン初日は平日にもかかわらず、施設前に約2000人が並び、約4万3000人が来店。以降も大勢の客で賑わい、特に「ZARA」「ジーユー」「クリスピークリームドーナツ」「バーガーキング」などが人気を集めた。来店手段はクルマが7割以上を占めると見られるが、地元はもちろん京都ナンバーのクルマも多く、懸念されていた琵琶湖以西からの集客も順調なようだ。

10カ月ぶりに改装オープンした滋賀県守山市のショッピングモール「ピエリ守山」。閉館前にはたった2店舗が営業するのみで“明るい廃墟”とネットで話題になった

京都市左京区からクルマで来たという30代ファミリーは「京都にはオールドネイビーの店がない。普段は滋賀竜王のアウトレットで買っているが、以前からピエリのオープンが待ち遠しかった。またゆっくり来たい」とにこやかに話す。

京都市伏見区からクルマで1時間かけて来た母娘連れも「イオンモール草津や三井アウトレットパークにもよく行くが、ピエリ守山にはH&Mが入っているので来た。河原町にもH&Mの大型店がオープンしたが、駐車できないのでこっちのほうが便利」という。

将来的には温浴施設やホテルを作る構想も

ピエリ守山は琵琶湖湖畔に建ち、風光明媚(ふうこうめいび)な立地にあるのも強み。館内の飲食店やテラスからは琵琶湖大橋や対岸の比叡山、比良山地の山並みを望め、四季折々の景色が楽しめる。

オープンに際して守山市の宮本和宏市長は「この地はかつて昭和天皇が宿泊した由緒あるホテルがあった景勝地。守山の繁栄の象徴の地に、再び中核施設がオープンしたことは地元にとって明るいニュースと喜んでいる。地方再生の先駆けとなるよう多くの客でにぎわってほしい」と期待を寄せた。

オープン初日は人気の海外ファストファッションブランドに多くの客が殺到した
オールドネイビーでは、レジ待ち客の列が店の外まで続いた

また、再開発を手がけた不動産会社サムティの森山茂会長も「湖畔の立地を生かし、従来のSC(ショッピングセンター)とは全く趣の異なるものを作った。ようやく復活できたが、これからが始まり。二度と灯を消さないよう、もっとバリューを上げたい。将来的には温浴施設やホテルを作ることも考えている」と、抱負を語った。

オープニングセレモニーには、ピエリ守山のオリジナルキャラクターも登場。一見、華々しい幕開けとなったが、実は来店客の目にも明らかな不安要素が館内のあちこちに残ったままだ。

バーゲンシーズン直前の開業は見切り発車の感も否めず、オープン景気がいつまで続くのかすら予測できない。「明るい廃虚」と揶揄(やゆ)されたことで一躍有名になったピエリ守山だが、本当に汚名返上できるのか。

国内セレクトショップがない、ファストファッションには長蛇の列

まず注目は、リニューアルオープンの目玉でもある1~2階中央の外資ファストファッションゾーン。H&Mをはじめ、ZARAや「GAP」など海外の人気SPAブランドが集積し、全店舗面積の3分の1を占めるという一大ゾーンだ。サーキットモールのど真ん中にGAP、ZARA、H&M、オールドネイビーが大型店を構え、左右どちらの通路からも出入りできる施設構造になっている。

1階のメインストリートには「GAP」「ZARA」「H&M」「オールドネイビー」「ストラディバリウス」「ベルシュカ」といった世界的に人気のブランドがそろった
ショッピングモールの常連となっている国内ブランド「アズール・バイ・マウジー」は「オールドネイビー」の向かい側

クロスカンパニーはショッピングモールのターゲットに合わせて、若いファミリー向けのライフスタイル提案型ショップ「セブンデイズ・サンデイ」を出店
関西最大級の規模となるアウトドア用品専門店「ロゴスショップ」。テントはもちろん、ランタンやシュラフを試せるコーナーもある

なかでもH&MとZARAは店内にエスカレーターとエレベーターを設けた2層のメゾネットタイプで、商業施設のテナントとしては国内最大級の広さ。2階からも出入りできるので、そのシャワー効果で買い物客の回遊性向上を狙う。インディテックスグループは初めて、ZARAと姉妹ブランドの「ストラディバリウス」「ベルシュカ」が隣接して出店。サムティの森山会長が「心斎橋か表参道を持ってきた」と豪語する通り、1階東側の通路には都心の商業ビルに引けを取らない売り場が広がっている。

ピエリ守山と競合するイオンモール草津や三井アウトレットパーク滋賀竜王をも凌駕(りょうが)するこのゾーンにはオープン初日、大勢の客が押し寄せていた。H&Mとオールドネイビーでギフトカードなどが数量限定でプレゼントされたため、それぞれ500人ほどが開店前に殺到。その後もレジ待ち客が長蛇の列を作るなど、人気の高さをうかがわせた。

飲食ゾーンに海外の人気ブランドが出店しているのも見逃せない。2007年に日本上陸し、国内に87店舗を展開する世界第2位のハンバーガーチェーン「バーガーキング」のほか、2010年に日本再上陸した米国発プレッツェルチェーン「アンティ・アンズ」、そして米国発の人気ドーナツチェーン「クリスピー・クリーム・ドーナツ」が滋賀1号店をオープン。それぞれイートインスペースを備え、琵琶湖サイドに店を構えるバーガーキングでは景色も同時に楽しめる。

県内初出店の「クリスピー・クリーム・ドーナツ」を求めて長蛇の列ができていた
プレッツェルチェーン「アンティ・アンズ」も滋賀県初

一方、ピエリ守山には大手ショッピングモールに出店している国内の常連ブランドがきわめて少ない。2階に「ジーユー」の大型店、1階に「アズール・バイ・マウジー」がレディス、メンズ、キッズを展開するほかは、クロスカンパニーの「セブンデイズ サンデイ」とバロックジャパンの「ロデオクラウン・ワイルドボウル」が滋賀初出店、マルキュー系の「リズリサ」「ロイヤルパーティ」が関西初出店。カジュアル専門店「ライトオン」「マックハウス」は県内に複数店展開しているため、別業態や店名を変えて出店している。ただし、セレクトショップ系のテナントは1店舗もない。

これについてサムティは「競合他店と差別化を図るため」と説明するが、国内の大手アパレルが二の足を踏んだのではないかと思われる。海外ブランドと異なり、国内ブランドは一度失敗したショッピングモールへの出店に慎重だ。「外資は並びのブランドやマーケット規模、立地で出店を決めるが、国内企業は評判を気にする。不評のショッピングモールに出店するのはなかなか決裁が下りないのでは」と業界関係者は明かす。

ショッピングモールでは珍しい屋内動物園「めっちゃさわれる動物園」

ファストファッションゾーンの次に注目したいのが、屋内動物園の「めっちゃさわれる動物園」。名称通り、動物と直接触れ合える施設で、市内を拠点に移動動物園を運営する「堀井動物園」が開設した初の常設動物園だ。

地元の移動動物園が初めて開設した屋内の常設動物園「めっちゃさわれる動物園」。オウムや爬虫類などと触れ合えるのが楽しい

ジャングル風に演出した園内では鳥類や爬虫(はちゅう)類のほか、ワニやライオンなどの猛獣も飼育しており、フクロウやインコ、トカゲなどには気軽に触れられる。料金は高校生以上1000円、小人600円、0~2歳は無料と手ごろ。「閑散としていた時期にも子供を遊ばせるためによく来店していた」(草津市の30代女性)という家族連れが少なくないことから、人気を集めることだろう。ショッピングモールの屋内に常設動物園が開設されるのも珍しい。

ショッピングモールの最近のトレンドとして、地域特性や立地環境に合わせ、モノだけでなくコト消費を狙った施設づくりがある。ピエリ守山でも、リゾート立地を生かしてアウトドア体験施設を導入し、競合施設との差別化を図る。

まずフットサル施設運営のJFCが展開するF.C. JATSスタジアム「フットサルポイント」を導入し、屋外に人工芝のフットサルコート3面を開設した。2015年春にはバーベキュー施設も併設される。

熟成牛のステーキと新鮮野菜のビュッフェが食べ放題の「ゴッチーズビーフ」は滋賀県初。全席ソファで窓からは琵琶湖を一望
人工芝のフットサルコート3面を有するF.C. JATSスタジアム「フットサルポイント」

さらに、2015年4月にはフィールドアスレチック施設「びわこスカイアドベンチャー」(仮称)も開業する。約8381平方メートルの敷地に高さ4メートルと8メートルのアスレチックコースと、琵琶湖を眺めながら滑走するジップライン、8メートルの高さからダイブするミニジャンパーも登場する予定だ。

また、館内の琵琶湖側にはカフェや飲食スペースを設けており、2階のテラス席では琵琶湖の自然を感じながら食事を楽しめる。行楽シーズンには地元客だけでなく、観光客の集客も見込めるだろう。

2015年4月に開業するフィールドアスレチック施設「びわこスカイアドベンチャー」(仮称)の完成イメージ

優先すべきは、地元客の信頼回復

琵琶湖畔を代表する風光明媚な立地に人気の海外ブランドの集積、触れ合い動物園や体験型アウトドア施設の導入と、廃虚から復活したピエリ守山には話題が多い。これまでの経緯を間近で見守り、店舗が次々と撤退していくなかでも足を運んでいた地元客にとっては待望の再オープンとなった。

京都市の30代夫婦は「前回の開業時はタイミングが悪かったのでは。面白い店があれば客は来ると思う。子供を連れてクルマで遊びに来るには便利だし、有料の琵琶湖大橋を渡ってでもまた来たい」と好意的。イオンモール草津のある草津市から来た若い家族も「洋服はイオンモールか三井アウトレットパークで買っていたが、今日はオールドネイビーを見にきた。もう少し落ち着いたら、ほかの店も見に来たい」と話す。

一方、立地やテナントに対する厳しい意見も聞かれた。大津市の40代主婦は「ここは場所が悪いので、わざわざ来る感がある。イオンモールやアウトレットの近くにあればついでに行く気になるが、気軽には来られない」。また、H&M目当てで来店した京都市の女性も「イオンモール京都桂川や三井アウトレットパークは飲食が充実しているのでよく行くが、ここは店数自体少ない。以前からそうだが、アウトレット店や倉庫みたいな店もあり、イメージが悪い」と話す。

実際、館内にはシャッターが閉まったままの区画が目立つ(2015年1月現在)。約140店舗のうち、2015年春オープン予定のテナントは9店舗、期間限定店が5店舗、交渉中も含めて空白の区画が約13区画。営業中の店舗のなかにも簡単なじゅう器に商品を並べただけの、通常のショッピングモールにはあり得ない店舗も見受けられる。運営者側の話によると「テナントは順次入れ替えていく。不足している業種にもアプローチし、2015年のゴールデンウイークまでには全店オープンする予定」という。様子見だった国内の大手アパレルとも交渉中のようだ。

閉館前にも営業していた出戻り組のひとつ「ペットランドミクニ」。閉館後は対岸に堅田店を開業し、現在も営業中
2015年春開業予定のテナントはシャッターが降りたまま

それでも、一度裏切られたという思いを抱く地元客の不安はぬぐえない。「以前も近日オープンの貼り紙がしてあったが、オープンせずそのまま閉館になった。今回もホンマかなって思う。2階はテナントの顔ぶれがあまり変わっていないし、フードコートも期待外れ」と、30代夫婦は肩を落とす。そして「滋賀にはこれくらいのゆるい感じが合ってるのかなと」と苦笑いしていた。

ショッピングモールは買い物や飲食の場としてだけでなく、遊びや憩いの場としてあるいは地域コミュニティの場として、地元に根ざした存在であることが求められている。「脱・廃虚」をめざし、再オープンしたピエリ守山にとって、まず最優先すべきは地元客の信頼回復だ。再び失望感を与えないためにも、魅力あるテナントを早期に導入し、全館レベルで楽しめる施設づくりが急がれる。

(ライター 橋長初代)

[日経トレンディネット 2015年1月13日付の記事を基に再構成]