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わたしの投資論

真の投資なら「もうかる」とは言わない(竹内幹)

2015/1/22

一橋大大学院准教授の竹内幹氏は実験経済学の専門家だ。経済学の問題に実験のアプローチを取り入れたこの学問の視点から市場や投資行動を分析すると、どんなことが見えてくるのだろうか。

人は商品を買うとき、できるだけ安く済ませようと考えるはず。これが経済学の基本的な考え方です。ところが、たとえばオークションに参加すると、価格がつり上がっても「ここまできたら後に引けない」という心理が働きます。実験経済学では、そういう「理論と現実のずれ」がどういうときに起こりやすいのか、条件を少しずつ変えながら実験します。現実から理論を導いて、それをまた現実に戻して検証していくわけです。

竹内幹(たけうち・かん)氏 1974年、東京都生まれ。米ミシガン大で博士号取得。2011年から一橋大学大学院経済学研究科准教授。2児の父。14年12月、日本経済新聞朝刊・経済教室面で「やさしいこころと経済学」連載

こんな例もあります。経済学では、人は自分の利益のために振る舞う利己的な存在だと想定します。その方がモデルとして扱いやすいからですが、人が常に利己的に振る舞うとは限りませんよね。信頼関係のもとで利益をシェアしようとすることもありますし、長期的にはむしろ利己的でない部分の方が重要なケースも存在するでしょう。もちろん、その中には「この人と付き合っておけばメリットがある」という利己的な要素もありますから、実験の条件を加えながら区別していきます。

実験では被験者自身のお金を使います。利益が出れば持って帰ってもらいますし、損をしてもお金は返しません。シミュレーションではなく実際にお金を出してもらうことで、心の動きが目に見えるようになります。社会全体の動きに法則性を見いだしてお金という尺度で分析するのが経済学ですが、そこに実験を取り入れることで、人の振る舞いや心も反映できるんです。

■心の弱さを前提に臨む

そうした知見をもとに投資行動を考えると、人はセルフコントロールが苦手だということを認識する必要があります。よく、お金を確実にためるために、給料の一部を天引きして別の口座に振り込みましょうといいますよね。そんなことをしなくても毎月いくら貯蓄に回すと決めておけばいいんですが、それができないからわざわざ別口座を使うわけです。意志が弱いからダメだというのではなくて、初めからそれを前提にしたやり方をすべきだということです。

メディアには投資で成功した人ばかりが出たがって、損をした人は話さないというバイアスがあります。そのため株や不動産はもうかるものだとつい思ってしまいますが、損をする人だってたくさんいます。特にセルフコントロールの弱い人ほど、売買のベストタイミングを自分で判断できると思い込んで、高値づかみやろうばい売りをしてしまいます。

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