ライフコラム

ヒット総研の視点

40代の働く女性、消費も仕事も「自分らしく」 日経BPヒット総研 佐藤珠希

2015/1/22

エンターテインメント、トレンド、健康・美容、消費、女性と働き方をテーマに、ヒット案内人が世相を切るコラム「ヒットのひみつ」。今を象徴するキーワードから、話題の理由、面白いワケなど、「ひみつ」を明らかにします。今回のキーワードは「40代の働く女性の消費意欲」。ビジネス界でも消費市場でも存在感を増す40代の働く女性たちのリアルな本音に迫ります。

労働市場における40代女性の存在感が増している。

総務省の「労働力調査」によると、2013年の女性の就業者数は、前年より47万人増え、過去最高の2701万人に到達。その内訳を年代別にみると、もっとも多いのが40代。その数640万人と、働く女性全体の約4分の1を占めている。

40代といえば、働き始めて20年が経ち、ちょうどキャリアの折り返しを迎える時期。一方で、更年期を控え体や心のコンディションにも変化が表れるなど、40代女性が抱える悩みや迷いは20~30代の働く女性たちとは違うステージにさしかかる。

日経BP社では2014年12月、40代からの働く女性をターゲットにした『日経WOMAN Soeur(スール:仏語で姉妹の意)』を発行、40代以上の働く女性1069人を対象に仕事やプライベートに関する意識調査[注]を実施した。そこで見えてきたのが、「働き続ける覚悟」を固め、仕事へのモチベーションを懸命に保とうとする40代女性たちのリアルな姿だ。

[注]調査は雑誌『日経WOMAN』の公式サイト上で実施、1069人から回答を得た。平均年齢44.7歳

■60歳を超えても働き続けたい

「何歳まで働き続けたいか」という質問に対する回答の平均は62.9歳。シングル女性の平均が63.1歳に対し、既婚女性は61.9歳とわずかに差がでたが、「定年まではしっかり働きたい」という女性が大多数を占めたのは、シングルも既婚も同じ。その理由を尋ねると「今の仕事にやりがいを感じているので、できる限り続けたい」(46歳・メーカー・企画)、「社会と接点を持ち続けていたい」(43歳・メーカー・事務)といった仕事そのものへのやりがいを理由に挙げる声も聞かれる一方で、目立ったのは老後の生活への不安を訴える声。「年金がいつからもらえるか分からないので、ずっと働き続けられる自分でいたい」(43歳・サービス・販売)、「体力的に可能な限りは、ずっと仕事をして稼ぎ続けたい」(42歳・IT・総務)といった意見が数多く寄せられた。

意外だったのは、こうした声は独身女性のみならず、既婚女性からも聞こえてきたこと。「特に40代前半世代は、就職氷河期に入社し不況続き。さらにリーマン・ショックも経験しており、非常に堅実。夫がいても、大企業に勤めていても、この先何があるか分からないという思いを持っている女性が少なくない」とキャリアカウンセラーの錦戸かおり氏は指摘する。

■40代からでもキャリアの「やり直し」は可能

ずっと働き続けるという覚悟を固める一方で、「会社にしがみつきたくない」というスタンスの人が少なくないのも40代女性の傾向だ。調査では、「これから転職や独立を考えている」と答えた女性が3割以上にのぼった。働き始めて20年、そして、これからあと20年。「40代」という折り返し地点を、これから20年働き続けるためのキャリアの再構築の機会ととらえる女性たちが増えているのだ。

かつては「35歳限界説」が常識とされた転職市場だが、足元の状況は大きく変化している。「2014年後半から40代の女性の転職決定が目に見えて増え始め、今では毎月コンスタントに一定規模の採用数が出ている。アラフォー女性の転職は、リーマン・ショック後の6倍以上の水準まで増えている」と話すのは、人材大手インテリジェンスの転職サイト「DODA」編集長の木下学氏。転職希望者の同社へのエントリー数に占める40代以上の女性の割合も増加を続け、2014年は女性全体の15%を超えた。

「転職決定事案を見ると、年収400万~500万円の層がボリュームゾーン。経理や人事などの専門スキルがあって正社員として転職が決まる、というケースが目立つ。先行きの人手不足感もあり、この傾向は今後も続くのでは」と木下氏は指摘する。

40代で非正規社員から正社員への転換を目指す女性たちも多い。「今の40代前半は、氷河期に正社員就職できないまま派遣社員としてキャリアを積んできた女性も多い。こうした女性たちが40代になって改めて安定的な雇用を目指し、正社員転職を試みるケースも少なくない」(錦戸氏)。活況な転職市場が、40代からのキャリアチェンジを後押ししている。

■「次の20年は“自分らしい働き方”をしたい」

20年間勤めた会社を42歳で辞め、北欧雑貨店「Fika」のオーナー専業に転じた塚本佳子さん

体力的にも厳しさを感じ始める女性が多い40代。がむしゃらに働きキャリアを築いてきたものの、40代で働き方そのものを見直し、新しいスタートを切る女性も少なくない。

20代、30代を編集者として多忙な毎日を過ごしてきた塚本佳子さん(42歳)も、40代で「自分らしい働き方」を手に入れた一人。

それまでは「仕事は生活のため」と割り切って働いてきたが、38歳で父親を亡くしたことをきっかけに、「人生は短いのだから、やりたいことをやろう」と決意した。大好きな北欧雑貨のネットショップを週末副業でやろうと考えていたものの、理想の物件が見つからず、店舗兼自宅の一軒家を4000万円で建てることに。建築家とやりとりを重ねる中で、自身の仕事観が大きく変化したという。「家づくりにかかわる人たちが楽しそうに仕事をしているのを見て、“私もこんなふうに働きたい”と心が揺さぶられました」

42歳で勤務先の会社を辞めて、北欧雑貨を扱うショップのオーナーに専念することになった。「予想していなかった展開だけれど、ようやく自分らしい働き方が見つかった気がする」と話す。

これから20年働き続けるのなら、自分が本当にやりたいと思える仕事を自分らしい働き方で実現したい――40代からの「やり直しキャリア」を決意した多くの女性が口にするのが、「自分らしく」というキーワードだ。「仕事でもライフスタイルでも、価値観が非常に多様化しているのが今の40代。40代の女性たちのキャリア相談では、自分はどんな生き方・働き方に幸せを感じるのか、“自分らしさ”を問い直すことから始めるケースが多い」と錦戸氏は指摘する。

■仕事へのモチベーションアップも「自分らしく」

自分らしく働き続ける覚悟を固めた40代女性たちにとって、最大の関心事が、「仕事へのモチベーションの維持」。今回の読者調査で、「仕事に関して知りたいこと」を尋ねたところ、「働き続けるためのモチベーションの保ち方」がトップにあがった。

組織での「昇進」や「出世」といった“ご褒美”では働く意欲をかき立てられない40代女性たちにとって、仕事のモチベーション維持はまさに「自己責任」。「40代にもなると、仕事でほめられることも少なくなり、20代、30代の後輩女性たちとも価値観が合わずにつらい思いをしている人も少なくない。そんな中でも頑張り続けるために、40代女性たちには、没頭できる趣味や習い事、ボランティアなど職場以外の居場所を持っている人が多い」と錦戸氏は指摘する。旅行や観劇など、仕事を離れリフレッシュできるイベントを定期的に生活に組み込み、そこへの出費はいとわないという声も多く聞かれた。

実際、日経WOMANで年代別にボーナスの使い道を調査したところ、40代の「自分へのご褒美」予算は約7万7000円と他の世代より高く、その内容も贅沢な旅行やエステなど、癒やしやセルフケアにお金を惜しまない傾向が浮かび上がってくる()。バブル経済を知っている40代後半世代はもちろん、就職氷河期世代の40代前半の女性たちも旺盛な「ご褒美消費」への意欲。その正体は、あと20年働き続ける覚悟を決めた彼女たちが、自らを鼓舞し、仕事へのモチベーションを維持するための戦略であるかのようにも思える。

「ずっと働き続ける覚悟」と「稼ぐ力」を手に入れた40代の働く女性たちの消費市場での存在感は、今後ますます大きくなる。消費においても「自分らしさ」を重視する彼女たちの心をつかむモノやサービスをいかに発信できるかが、女性マーケットでの成功の鍵を握る時代に入ったといえるだろう。

■年代別 働く女性のボーナス時の「ご褒美予算」
年代20代30代40代
予算平均6万2620円7万205円7万7272円
傾向◆低コストでお手軽→高級チョコ、焼き肉 ◆趣味のモノをオトナ買い→DVDや本のまとめ買い◆高品質のファッションアイテム→高級時計やジュエリー、バッグ ◆国内旅行→温泉女子旅◆リッチな旅→ビジネスクラスで海外旅行、高級リゾート ◆セルフケア→高級基礎化粧品、エステ、美顔器

表 調査は『日経WOMAN』公式サイト上で2013年10月に実施、648人から回答を得た

佐藤珠希(さとう・たまき)
日経BPヒット総合研究所上席研究員、日経BP社ビズライフ局長補佐。毎日新聞社、ベネッセコーポレーションを経て、2004年日経BP社入社。『日経WOMAN』『日経EW』『日経マネー』各編集部を経て、2009年『日経WOMAN』副編集長、2012年『日経WOMAN』編集長。2015年1月から現職。
[参考] 日経BPヒット総合研究所(http://hitsouken.nikkeibp.co.jp)では、雑誌『日経トレンディ』『日経ウーマン』『日経ヘルス』、オンラインメディア『日経トレンディネット』『日経ウーマンオンライン』を持つ日経BP社が、生活情報関連分野の取材執筆活動から得た知見を基に、企業や自治体の事業活動をサポート。コンサルティングや受託調査、セミナーの開催、ウェブや紙媒体の発行などを手掛けている。

日経WOMAN 2015年1月号増刊 日経WOMAN soeur

著者:日経WOMAN編集
出版:日経BP社
価格:680円(税込み)、Kindle版630円(税込み)

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