中学英語で十分、外国人から許諾をもらう依頼の方法
同時通訳者の英会話レッスン
今回取り上げるのは、英語で上手にお願いごとをするコツです。
社会の中では、人が1人で生きていくことはできません。職場でもプライベートな場でも、周囲の人にお願いをすることは避けて通れないものですよね。自分が仕事中にどんなことをしているかを考えてみると、実はその多くが「ほかの人へのお願い」であることに気付くでしょう。
自分の依頼を相手が快諾してくれれば、人生の多くの場面で物事がスムーズに進むようになるはず。実は、外国人を相手に英語で話す場合は、二つ返事で依頼を受けてもらうためのコツがあるんです。しかも、そのコツは中学校で習う英語で十分に使いこなすことができます。
具体例を挙げてご説明しましょう。私が通訳の仕事を始めて間もない頃のことです。セミナーの通訳をする際、登壇者の方がとても早口で困ってしまったことがありました。「ゆっくり話していただけませんか?」と言っても、話すスピードを落としてもらえなかったのです。ただ頼むだけでは、なかなか人を動かすことはできません。
ところが、「ゆっくり話してほしい」という依頼にちょっとした一言を加えてみたところ、相手の方が急に協力的になり、スピードを落として話してくれるようになりました。
このような依頼をするとき、魔法のように効果を表す言葉。それは"because"です。
私が登壇者の方に言ったのは、
"Could you speak slowly? Because if we cannot keep up with you, you lose the whole audience.(ゆっくり話していただけますか? 通訳が追いつけなければ、聴衆全員があなたの話を理解できないことなりますから)"
という言葉でした。
"because"を使ってしっかり理由を説明すると、相手が「頼まれた通りにすることで自分にどんなメリットがあるか」を理解しやすくなり、協力しようという気になってくれるもの。英語でお願いをするときは、"because"を使ってひとこと理由を添えるようにしてみてください。
より丁寧に理由を説明するなら、言葉の選び方に注意を
英語で理由を説明するときには、言葉の選び方に注意が必要です。「なぜなのか、理由を説明します」という表現を英語にしようとすると、"I will explain the reasons why."というように"explain"を使いたくなる方が多いかもしれません。でも、この"explain"という言葉、実は若干"上から目線"のニュアンスを含んでいます。
では、"explain"の代わりにどんな言葉を選べばいいのでしょうか? ここで使えるのが、"share"という単語。"I will share the reasons why."と言えば、"上から目線"ではなく、同じ目線の高さで情報を共有する・分かち合うというニュアンスになり、相手がより受け入れやすくなります。
さらに、この表現をより英語らしくし、相手が受け入れやすくなるコツもお伝えしておきましょう。文頭の"I will"の部分は、「私が~します」というように少し強い意思を示しますから、相手が受ける印象も強いものになります。押されれば引きたくなるのが人間の心理ですから、押しつけるような印象を少し減らしたいところ。
このようなときに使える表現が"Let me share"です。"let"は「~させる」で、"you let me share"の"you"を省略した形ですから、「あなたが私にshareさせてくれる」というニュアンスになります。"Let me share the reasons why.(理由を共有させていただきます)"と言えば、先にご紹介した"I will share the reasons why."という表現よりもフラットで押しつけがましくなく、相手が受け入れやすくなるでしょう。
もう一つ、相手が自分よりも立場が上で、自分がへりくだってお願いしたほうがよい場面で使える表現も押さえておきましょう。こんなときに使えるのは"allow"です。この単語は「許可する」という意味ですから、"Allow me to share the reasons why.(どうぞお願いですから、理由を説明させてください)"と相手を立てる表現にすることができます。
どうぞ、実際に依頼をする場面に応じて、そのシーンに合う表現を選んで使ってみてください。きっと、皆さんが望む結果を手にできるはずです。
同時通訳者。71年生まれ。実践女子短期大学国文科卒業、2004年早稲田大学社会科学部副総代で卒業。短卒後のTOEIC は280点。独自の勉強法で、半年後に805点を取得して英会話学校講師に抜擢。後、TOEIC 950点、英検1級を取得し、短大卒業から3年半で通訳者に。通訳した現場は、5000件以上。
(構成 千葉はるか)
[nikkei WOMAN Online 2014年5月16日付記事を基に再構成]
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