このモノがあふれている時代。単にスペックが優れていたり、安いだけではヒットは望めない。そうしたなか、独自のアイデアや技術を武器に、消費者の心をつかんでいる製品が数多く登場している。日経トレンディ編集部が家電やデジタル機器、日用品などから厳選した「究極の逸品」から、アイデアが光る製品を5回に渡って紹介する。連載2回目はヤマハ発動機のバイク「トリシティ125」を取り上げる。
ヤマハ発動機が2014年9月に発売した「TRICITY(トリシティ)125」は、前2輪、後ろ1輪という奇抜な形状ながら、発売3日で年間販売目標の半分を超える5000台以上を受注した注目モデルだ。
排気量は125ccで、原付バイク(50cc)と違って2人乗りができ、交差点での2段階右折も不要。タイで生産しているので価格が抑えられており、125ccクラスで販売数トップの「PCX」(ホンダ)より数万円高い程度と、割安感がある。
急カーブでも膨らみにくい
トリシティは他の3輪バイクと異なり、停車時は自立しない構造だ。ならば3輪にする必要があったのかという疑問を抱くが、実際に試乗するとその意味がよくわかる。
例えば、カーブを曲がる際の安定感の高さ。スピードを上げて急カーブを曲がっても外側に膨らみにくく、低速走行時も車体のふらつきが少ない。これは、前2つの車輪が、グリップ力が高いのに加え、車体の傾きと連動して動くためだ。前2輪のサスペンションは左右が独立しているので、ごつごつした石畳や道路の継ぎ目など、2輪バイクなら身構える路面コンディションでも安心して乗れた。
