こじらせ・ギター・プロレス 2015年にくる3つの女子日経BPヒット総研 品田英雄

エンターテインメント、トレンド、健康・美容、消費、女性と働き方をテーマに、ヒット案内人が世相を切るコラム「ヒットのひみつ」。今を象徴するキーワードから、話題の理由、面白いワケなど、「ひみつ」を明らかにします。今回のヒットワードは「3つの女子」。2015年、エンターテインメント界が注目する「女子」を紹介しましょう。

1.こじらせ女子

まず、テレビ界が注目しているのが、「こじらせ女子」人気だ。

2014年の秋の連続ドラマで、視聴率1位はテレビ朝日の『ドクターX』(主演:米倉涼子)だったが、それに次いだのが日本テレビの『きょうは会社休みます。』(主演:綾瀬はるか)だった。ドクターXのようにシリーズとしての実績はないうえ、裏にはフジテレビが春に深夜枠で放送し、人気となった『ファーストクラス』(主演:沢尻エリカ)をぶつけてきたため、視聴率で苦戦するのではないかと予想されていた。それがふたをあけてみれば、平均視聴率は16%とダブルスコア以上の圧勝となった。

人気となったのが、綾瀬はるか演じる花笑さんの“こじらせ”ぶりだった。こじらせ女子とは、流行やファッションに疎く女性としての魅力に自信がもてない若い女性たちのこと(AVライターの雨宮まみが2011年に出版した『女子をこじらせて』以来、徐々に広がって来た)。

ドラマは、恋愛経験のない30歳のOL花笑さんが、同じ職場でアルバイトに来ていた大学生田之倉くん(福士蒼汰)と恋をするようになる。だが、つきあい方は不器用でときに自意識過剰。その様子が女性たちの笑いと共感を集めた。

世間では、婚活が普通の言葉として定着し、二十代から戦略的に相手を探さないと結婚はむずかしいという意識も出て来た。その一方で、男性の草食化が進みなかなか恋愛に発展をしない。女性たちのいらだちと自虐ぶりがヒットの要因のようだ。

2015年も月曜夜9時には『デート~恋とはどんなものかしら~』(主演:杏)が始まる。テレビドラマの素材として「こじらせ女子」の可能性は大きい。

「デート~恋とはどんなものかしら~」 1月19日から毎週月曜21時(フジテレビ系) 『リーガルハイ』の古沢良太が書くオリジナルドラマ(左:杏 右:長谷川博己)

2.ギター女子

音楽業界の期待を集めるのが「ギター女子」だ。

大原櫻子。2014年11月に『サンキュー。』でソロデビュー。第56回日本レコード大賞の新人賞を受賞

2013年、ブレイクして紅白歌合戦に出場したmiwa以来、ギターを抱えて歌う女の子たちが来るぞ来るぞという声は業界内に多かったが、2014年はそうした女性たちが一気に顔を揃(そろ)えることとなった。

レコード大賞で新人賞を受賞したのは大原櫻子。彼女は1996年1月10日生まれ。東京都出身。女優でもあり、2014年はフジテレビの連ドラ『水球ヤンキース』でヒロイン役を務めた。

住岡梨奈は1990年2月15日生まれ。北海道出身。フジテレビのリアリティ番組『テラスハウス』にも出演して、「りなてぃ」として知名度も高い。

片平里菜は1992年5月12日生まれ。福島県出身。TOKYO FMが主催する夏フェス「閃光ライオット2011」で審査員特別賞を受賞したことがデビューのきっかけとなった。

山崎あおいは1993年8月28日生まれ。北海道出身。ヤマハが主催する音楽コンテストで注目され、デビューするに至った。

新山詩織は1996年2月10日生まれ。埼玉県出身。ユニコーンやスピッツを手がけた笹路正徳がプロデュースしている。

ほかにもギターを弾きながら歌う女性たちが次々とデビューしている。その多くに共通するのは、若い女性たちが共感する歌詞と、今はやりのダンスミュージックとは一線を画したメロディーだ。

洋楽でもテイラー・スウィフトに代表されるギターを抱えたカントリー系歌手が人気を集めるようになっている。日本でも「ギター女子」への期待は大きい。

3.プロレス女子

興行界が注目しているのが「プロレス女子」。男性ファンばかりと思われていたプロレスに女性ファンが増え、試合会場には女性たちの歓声が響くようになった。2015年1月4日に東京ドームで開かれた新日本プロレスの大会では約3割が女性客だったと言われる。

プロレスの女性ファンが増えたのにはきっかけがある。約3年前にカードゲーム会社の大手ブシロードが新日本プロレスを買収し、女性客の開拓に力を入れたからだ。

新日本プロレス。創立40年を越える老舗プロレスが、ここ2年でネット配信やグッズ販売で売り上げを倍増させている

まず、“イケメン”レスラーの棚橋弘至、オカダ・カズチカ、中邑真輔らを全面的にフィーチャー。コスチュームもそれまでの黒のタイツばかりでなく個性的でおしゃれなものにした。ハンサムな顔、引き締まった肉体、彼らの写真集も売れるようになった。

また、興行全体をショーアップし、試合に詳しくない人にも楽しめるようにした。選手の入場は生演奏にレーザー光線が飛び交う。演出はももいろクローバーZも手がける佐々木敦規が担当している。試合というよりコンサートのようだ。さらに、ニコニコ生放送やユーストリームで配信して会場に来られない人にも楽しめるようにしている。

ほかにも、関西を拠点にする「ドラゴンゲート」や東京に拠点をおく「DDTプロレスリング」が、イケメンレスラーとエンターテインメント性を売りにして女性たちの心をつかんでいる。2015年はおしゃれなプロレスが女性の力で人気になると予想する。

=一部敬称略

品田英雄(しなだ・ひでお)
日経BPヒット総合研究所 上席研究員。日経エンタテインメント!編集委員。学習院大学卒業後、ラジオ関東(現ラジオ日本)入社、音楽番組を担当する。87年日経BP社に入社。記者としてエンタテインメント産業を担当する。97年に「日経エンタテインメント!」を創刊、編集長に就任する。発行人を経て編集委員。著書に「ヒットを読む」(日経文庫)がある。
[参考] 日経BPヒット総合研究所(http://hitsouken.nikkeibp.co.jp)では、雑誌『日経トレンディ』『日経ウーマン』『日経ヘルス』、オンラインメディア『日経トレンディネット』『日経ウーマンオンライン』を持つ日経BP社が、生活情報関連分野の取材執筆活動から得た知見を基に、企業や自治体の事業活動をサポート。コンサルティングや受託調査、セミナーの開催、ウェブや紙媒体の発行などを手掛けている。
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