アベノミクス3年目、想定外の円安株安を懸念(安東泰志)ニューホライズン キャピタル会長兼社長

2015/1/11

カリスマの直言

「ドルベースでの日本の国際的地位の低下も気がかりだ」

安倍首相が「アベノミクスの是非を問う」として実施した2014年末の総選挙は与党の大勝利に終わった。第3次安倍政権は国民の信任を背景にアベノミクスの継続を図る。実際、第2次安倍政権の発足以来の株価の上昇には目を見張るものがあり、また、有効求人倍率など幾つかの経済指標も好転している。とはいえ、原油価格の急落や再燃したギリシャ問題などを背景に、足元では神経質な相場展開となっている。そんな中、一見盤石に見えるアベノミクスに死角はないのか、そして、今後注力すべき課題は何かについて考えてみたい。

国債のほぼ全額を消化する日銀

14年10月31日、日銀の政策決定会合で、量的・質的緩和の大幅な拡大が行われた。長期国債については、マネタリーベースが年間80兆円増加するように買い入れ、上場投資信託(ETF)やREIT(不動産投資信託)の買い入れも3倍にするという強烈なものだ。国債の買い入れ額は新発利付債のほぼ全額に相当する。つまり、日銀は、直接ではないとはいえ、国債のほぼ全額を消化してしまうことになる。

そもそも大胆な金融緩和というのは、インフレ目標実現に向けての日銀の強いコミットメントをもって人々の「期待」に働きかけることによって、期待インフレ率を上昇せしめ、かつ、国債の大量購入によって市場金利を低位に安定させ、実質金利(市場金利-期待インフレ率)をマイナスにすることで民間の資金需要を喚起しようというものだ。

一方、金融緩和で実際に起きることは、日銀が銀行から大量の国債を買い上げるために、日銀当座預金、すなわち「マネタリーベース」が膨張することだ。期待されているのは、マネタリーベースが膨張すれば、民間預金である「マネーストック」も増えるので、民間の経済活動を刺激する、ということだ。しかし、近年、マネタリーベースとマネーストックの連動性を疑う声も多い。すなわち、マネタリーベースがいくら増えても、それは銀行が日銀に預けているお金(日銀預け金)が増えるだけで、ただちに民間活動に使われるわけではなく、マネタリーベースとは関係なく、規制緩和などによって民間活動が活発になれば、その「結果」としてマネーストックの上昇につながるのではないかという意見も根強い。今後の行方が注目される。

3年目を迎えたアベノミクス、死角は……

また、日銀が大規模な金融緩和を行い、自国通貨である円の価値を毀損させる意図を陰に陽に明らかにしている状況が続くと、円の信認は失われる。これは、大幅な円安と、それを通じたハイパーインフレーションの危険さえもはらむものといってよかろう。また、一般に国力の比較がドルベースで行われる中、日本の国際的地位の低下も懸念される。そして、筆者は、このままいくと、遠からず、人々の想定をはるかに超える円安に陥る可能性を指摘しておきたい。今は半ば人為的に維持されている株価の反応も気掛かりだ。

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