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米プロレス団体WWE 国際スーパースターを育成 人材発掘、マイクパフォーマンスも特訓

2015/1/3

米国最大のプロレス団体「WWE」が国際的なスーパースターの育成に乗り出した。日本やインド、欧州などの人材を発掘し、フロリダ州に新設した訓練施設で技の見せ方から体調管理、マイクパフォーマンスまでを特訓する。3カ国語を話すレスラーもおり、人材の国際化で海外のファン層の拡大につなげる狙いだ。

WWE NXTの試合で勝利を収めたヒデオ・イタミ選手とフィン・ベイラー選手(12月、フロリダ州オーランド)

「ヒデオ! ヒデオ!」――。和風の旋律で始まるテーマソングが流れると、観客からコールがわき起こった。12月12日、フロリダ州オーランド近郊にあるフルセイル大学のアリーナ。WWEの新人発掘団体「NXT」の試合で、日本でKENTAとして活躍していたヒデオ・イタミ選手(33)が、アイルランド出身のフィン・ベイラー選手(33)とタッグを組み、熱戦の末に勝利を収めた。

米フロリダ州のフルセイル大学の会場は小規模で、ファンが目の前で試合を観戦できる。

地元のファンの1人で、日本のプロレスも好きだというニコラス・ウエアさん(33)は「ヒデオの技は素晴らしいよ。成功してほしいが、スターになってここで見られなくなると残念な気もする」と語る。

NXTの選手らが未来のWWEスーパースターを目指してトレーニングに励んでいるのが、同大学近くにあるWWEパフォーマンス・センターだ。2013年夏に開設。エンターテインメントやメディア業界を目指す学生が学ぶ同大学と提携。同大で試合を収録する一方で学生の実習生を受け入れている。

同センターは広大な敷地に、新人が空中技を練習するための衝撃吸収マットを使った特別リングなど7つのリングを持つ。コーチは全米や世界各国から集まった約80人の選手を技量に合わせて教えている。「さらに上のレベルを目指すには最高の環境。世界規模のWWEで自分にどこまでやれるか試してみたい」。ヒデオ・イタミ選手はそう意気込む。

米フロリダ州にある練習用施設のリング上で特訓を受ける練習生たち
ジムでトレーニングに汗を流す練習生たち

WWEはプロレスの技だけでなく、筋書きに合わせた表現力も重視する。同センターでは週3回、元プロレスラーのダスティ・ローデス氏がマイクパフォーマンスやキャラクター作りを伝授している。

WWEは同センターや海外でも新人発掘のトライアルを実施している。インドではクシュティー、ブラジルではカポエイラといった各国の伝統格闘技の使い手など、レスラー以外の人材も発掘しているという。

NXTチャンピオン(12月12日時点)のサミ・ゼイン選手(30)はシリア系カナダ人で、英語、フランス語、アラビア語に堪能だ。中東での試合ではアラビア語で観客に語りかけ、大きな声援を浴びたという。「昔はアラブ系といえば悪役ばかりだった。特に若い世代にポジティブなメッセージを伝えたい」と話す。

タッグ・チャンピオン(12月12日時点)はメキシコ系米国人のシン・カラ選手(37)とカリスト選手(28)。米国で増えるヒスパニック(中南米系)層にアピールするスター候補だ。メキシコのプロレス「ルチャリブレ」スタイルのマスクをかぶり、空中殺法で人気を集める。英語とスペイン語のバイリンガルだ。

メキシコ系米国人レスラーのシン・カラとカリストの両選手

シン・カラ選手は「プロレスは老若男女みんなで楽しめるエンターテインメント」と世界共通の魅力を語る。カリスト選手は「ルチャ(ファイト)!ルチャ!の掛け声には、頑張ればどんな夢もかなう、というメッセージを込めている」と話す。

女性レスラーの育成にも力を入れている。女子チャンピオンのシャーロット選手(28)は米プロレス界の大御所リック・フレアー氏の娘だ。メーンイベントの試合もこなし「お飾りではないことを証明し、女子プロレスに革命を起こす」と胸を張る。選手の活用で実績を積み上げてきた日本の女子プロレスも研究しているという。

WWEは2月から課金型インターネット映像配信サービス「WWEネットワーク」を始めた。欧州や香港、オーストラリアなど世界各国にサービスを拡大している。国際スターの発掘・育成も、ビンス・マクマホン最高経営責任者(CEO)の世界戦略の一環だ。同社の戦略が海外での市場拡大にどれだけ効果を上げるのか。エンターテインメントやメディア業界も注目している。(フロリダ州オーランドで、芦塚智子)

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