2014/12/25

舞台・演劇

長老世代の活躍が輝いた1年であった。中でも蜷川幸雄が、肺の水を抜く入院などを余儀なくされながら演出しつづけた。すさまじい気迫といえる。ことに若い役者集団で上演した「カリギュラ」(カミュ作)は青春の孤立を描き続けた演出家の到達点。最近のいくつかの蜷川演出は、死者と対話するかのような深い境地に達している。高齢者劇団さいたまゴールド・シアターの「鴉(からす)よ、おれたちは弾丸をこめる」(清水邦夫作)がパリ、香港で公演したのは快挙だった。彩の国さいたま芸術劇場の芸術監督として、これ以上ない仕事だろう。

新劇と呼ばれた芸術運動としての演劇で育った役者はやはり覚悟が違う。無名塾「バリモア」で初の独り芝居に挑んだ仲代達矢の軽み、可児市文化創造センター「黄昏(たそがれ)にロマンス」で見せた平幹二朗、渡辺美佐子の絶妙の間合い、文学座「夏の盛りの蝉のように」の加藤武が聴かせた江戸前のセリフ、加藤健一事務所「請願」の三田和代が演じた女の決意の深さ、民芸「バウンティフルへの旅」で主演した奈良岡朋子の喪失感と哀感。これらに、白石加代子が打ち上げた一人語り「百物語」を付け加えておこう。

歌舞伎は父を失った勘九郎、七之助がニューヨーク公演、コクーン歌舞伎、新派「鶴八鶴次郎」客演とめざましい。演技も進境著しい。染五郎は「弁慶」初役を見事に演じた。菊之助も気力充実。スーパー歌舞伎の継承、先代の演目の再構築に余念のない猿之助が大車輪の働きだ。これに海老蔵を加えた一群が今の歌舞伎をになう。

先行世代も芸を競った。休養していた仁左衛門が復帰し、藤十郎、菊五郎、幸四郎、吉右衛門、玉三郎らが重厚な仕事をみせた。決定的な新作が生まれないのが課題となろう。

文楽は住大夫、源大夫が引退した今が転機だ。咲大夫が元気なのは頼もしいが、その後続世代が鍵をにぎる。好反響だった新作「不破留寿之太夫(ふぁるすのたいふ)」は練り上げて財産としたい。

ミュージカルの世界は宝塚100年の話題で盛り上がりをみせた。新作「眠らない男ナポレオン」(小池修一郎作・演出)が大作になった。ミュージカルも自前の新作がますます求められる。宝塚の底力を生かしたい。

来日公演はシアターオーブで上演された「ウォーホース」「SINGIN’IN THE RAIN」が舞台芸術の粋を感じさせる大作だった。

舞台美術家の朝倉摂、俳優の高橋昌也、米倉斉加年、松本典子、蟹江敬三、斎藤晴彦、中川安奈が亡くなった。肺がんと闘いながら演出を続けていた演出家の深津篤史も。関西を拠点にした深津は人間の孤独を見すえるまなざしの深き演劇人だった。(編集委員 内田洋一)

注目記事