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大野和士指揮都響12月公演 緻密な構成力で聴かせたシベリウス

2014/12/24

2015年4月に東京都交響楽団の音楽監督に就任する大野和士が12月、その都響の2種類の公演を指揮した。演目はバルトークとフランツ・シュミット、シベリウスの作品。とりわけ来年生誕150周年のシベリウスの作品を集中的に取り上げた12月13日の公演は、「交響曲第5番」などで緻密な構成力を示し、このコンビの相性の良さを印象づけた。

2015年4月の音楽監督就任を前に東京都交響楽団を指揮する大野和士(12月13日、東京芸術劇場)=写真 堀田 力丸、提供 東京都交響楽団

来年は生誕150周年のジャン・シベリウス(1865~1957年)が最も注目を集める作曲家になるだろう。北欧のフィンランドという国そのものといえるシベリウスの作品は日本でも早くから愛聴され、渡辺暁雄や岩城宏之ら多くの指揮者が得意としてきた。12月13日、東京芸術劇場(東京・池袋)での都響「『作曲家の肖像』シリーズVol.100〈シベリウス〉」と銘打った公演。現在はフランス国立リヨン歌劇場首席指揮者で、来年4月から都響、同9月からはスペインのバルセロナ交響楽団の音楽監督も兼任する大野和士。自らがこのシベリウス公演の3演目を選んだ。大野の都響音楽監督と、シベリウス・イヤーの両方の先行きを占う意味で、試金石となる興味深い演奏会だ。

1曲目は交響詩「レンミンカイネンの帰郷 作品22の4」。フィンランドの民族叙事詩「カレワラ」から題材を採った4つの交響詩から成る「レンミンカイネン組曲(4つの伝説)」の終曲に当たる作品だ。その3曲目の有名な「トゥオネラの白鳥」の次に演奏頻度が高い。大野は都響の繊細で緻密な音色を生かしながら、奔放で快活な響きを引き出す。「カレワラ」では、1度死んだ若者レンミンカイネンが母親の尽力でよみがえり、故郷へと帰る。その荒くれの無鉄砲ぶりや純朴な無邪気さが良く出たエネルギッシュな演奏だ。

シベリウスの「バイオリン協奏曲」を演奏する大野和士指揮都響とバイオリン独奏の三浦文彰(12月13日、東京芸術劇場)=写真 堀田 力丸、提供 東京都交響楽団

弦楽が非常に速いビートを絶えず刻み続け、金管が滑稽なほど大げさなファンファーレの合いの手を入れる。ハリウッド映画の西部劇風でさえある。一般受けするスペクタクルな俗っぽさが程よくある。それでいて、口ずさめるようなはっきりしたメロディーがほとんどないのもシベリウスらしい。次々に新しい音響のかけらが点滅しては過ぎ去っていく。馬に乗って猛スピードで森の中を駆け抜けていくような音楽だ。こうした曲を最初に持ってくるところに、シベリウスの音楽を大いに楽しもうという大野の庶民的で柔軟な考え方が出ている。「シベリウスは初期の作品ほど管弦楽編成が大きく、後期になるにつれて編成がどんどん小さくなる。コンサートでも最初に最も編成が大きくて華々しい『レンミンカイネンの帰郷』を持ってきた」と言う。この曲を最初に聴けば「シベリウスって面白そう」と思う人も増えるはずだ。勝ちどきの大音響を上げて7分ほどの交響詩が華やかに終わった。

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