マネー研究所

わたしの投資論

投資とは「考え抜く人」の証し(林康史)

2014/12/25

テクニカル分析の専門家として知られる立正大経済学部教授の林康史氏は、かつて金融機関で為替のディーラーとしても活躍した。無機質にも見えるチャートから、林氏はどんなメッセージを読み取ってきたのだろうか。

1985年のプラザ合意のとき、私はメーカーの工場で原価管理の部門にいました。急激な円高による為替差損で売上高が激減しましたが、当時は本社の財務部が為替を一元管理していて、現場でもどかしく感じていました。本社よりも自分の方がうまいに違いないと根拠もなく思っていたんです。本社の財務部に転勤願いを出すことも考えましたが、どうせ為替の取引をするならもっとポジションの大きい金融機関でディーラーの仕事をしたいと思って、転職を決意しました。

林康史(はやし・やすし)氏 1957年、大阪府出身。クボタ、住友生命、大和投資信託、あおぞら銀行を経て、2005年4月から立正大経済学部教授。新刊「トレーダーの発想術」など著書・訳書も多数

当時は転職なんてまだ珍しく、中途採用といえばどこも経験者限定でした。しかし私にはまったく経験もスキルもありません。都銀の面接では、人事課長に「採用したいが、未経験者を採って失敗したら私のリスクになる。君もサラリーマンだから分かるだろう」と言われました。そんななかでチャンスをくれたのが住友生命で、ついに念願だった為替ディーラーになることができました。

■チャートが描くのは市場の心理

仕事は非常に刺激的で、滑り出しはパフォーマンスも上々。こんなに面白い仕事はないと思いましたが、ビギナーズラックは続かず、次第に負けが込むようになりました。何が足りないのかと考え始めたころ、上司に、相場の動きを図にしたチャートから将来の価格を予想する「テクニカル分析」の知識を身につけろと言われました。当たるかどうかは別として、チャートを見て動いている投資家がいる以上、チームに1人はチャートが読める人間が必要だということでした。

チャートを勉強しろということは、実は最初から言われていました。そのときはそんなもので相場が分かるもんかと思っていたんですが……。上司は私が行き詰まるのを待っていたのかもしれませんね。

いざ勉強してみると、テクニカル分析は非常に興味深いものでした。市場がつける価格にはマーケットの心理が織り込まれています。過去の価格の動きを表すチャートは、市場心理そのものを描いているともいえるわけです。

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