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保険の新常識

医療・年金不安に流されない 保険との向き合い方 保険コンサルタント 後田亨

2014/12/22

「国や勤務先の健康保険、年金制度は今後どうなるか不安だから、民間の医療保険や個人年金保険で備えなければ」という声を現役世代の方からよく聞きます。確かに医療費や年金を取り巻く環境は厳しく、保険会社の商品に頼りたくなる気持ちは分かります。しかし民間保険を利用する価値があるかどうかは、「不安」とは切り離して考えることが大事です。

医療費や年金に対する不安は否定できないが、それを補完するための民間保険の利用価値はきちんと見極める必要がある

9月12日付の日本経済新聞朝刊によると、大企業の社員らが加入する健保組合の3分の2は2013年度に経常赤字だったそうです。高齢者の公的医療保険への拠出金が財政を圧迫しており、約4割の組合が保険料率を引き上げて収支を合わせているのが実情。健保組合連合会は今後も「団塊の世代が65歳以上になり、負担が相当な勢いで増える」とみており、加入者の自己負担部分を増やす動きが広がるかもしれません。

公的年金や企業の厚生年金基金の財政も厳しく、12月11日付の同朝刊は10月末時点で存在した全国の厚年基金のうち76%が将来解散する方針だと報じています。年金を受け取る側としてはこうした財政・制度の不安に加え、物価上昇が進めば受給額が実質目減りするという不安もあります。

だからといって、民間の保険に入れば安心とも言い切れません。加入者が払う保険料はすべて保険金や給付金の原資になるわけではなく、代理店手数料など保険会社の運営費が差し引かれます。その内訳はほとんど開示されていませんが、12月1日付「宝くじや競馬から考える『保険の還元率』」などで触れたように、運営費に取られる部分が50%を超えているとみられる商品もあるのです。

保険料に含む保険会社の運営費割合(付加保険料率)を唯一開示しているライフネット生命保険の場合、医療保険の還元率は80%程度です。生命保険業界では比較的コストが低い方だとみられるものの、いざというときに自腹を切りたくない8000円のお金を1万円かけて準備するようなものです。給付金を手にできればありがたく感じるでしょうが、いつ、いくら受け取れるか分からない「安心料」としては決して効率のいい手段ではありません。

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