ヒット連発の黒人女性制作者 辣腕弁護士ドラマが話題
海外ドラマはやめられない!~今 祥枝
2014~2015年シーズンの海外ドラマの新番組は、全体的な印象からいうと好調なスタートを切った新作の健闘が目立っています。中でもヒットメーカー、ションダ・ライムズの新作『How to GetAway with Murder』が話題です。
黒人女性プロデューサーとして『グレイズ・アナトミー』とスピンオフ番組『プライベート・プラクティス』(2013年に終了)をヒットさせたライムズ。さらにポリティカル・サスペンス『スキャンダル』の大ヒットで、確固たる地位を築きました。『スキャンダル』の主人公オリヴィア・ポープは、姉御肌で頭が切れ、パワフルかつ美人でセクシーという新時代の強い女性の象徴的存在として絶大な人気を誇っています。
今回のクライム・ミステリー『How to~』の主人公アナリース・キーティングは、犯罪学専門の大学教授にして自ら経営する法律事務所の敏腕弁護士。強靱(きょうじん)な意志と優秀な頭脳を持ち、セクシーで繊細な一面もあるキャラクターは、前述のオリヴィアに似ています。演じるのは、映画『ダウト~あるカトリック学校で~』でアカデミー賞候補になったヴィオラ・デイヴィス。舞台でトニー賞に輝く演技派で、本作ではド迫力の目力と圧倒的な存在感を発揮して、批評家も絶賛、視聴者の心もがっちり捉えています。
目まぐるしく変わる展開
ロー・スクール(法科大学院)の新学期、授業でアナリースは生徒たちに「いかにして殺人罪を逃れるか」(番組名の直訳)が、このクラスで学ぶことだと宣言します。学生たちには、自分が弁護を務める公判中の刑事事件を傍聴させ、生徒個々に調査をさせて授業で事件の筋読みを発表させます。やがて、見る目ありと認めた5人の学生を選び、インターンとして法律事務所で働かせることに。平行して、学生たちが関わることになる別の殺人事件が断片的に描かれていきます。
1話の中で物語は何度も交錯し、時間を前後しながら複数の事件と複雑な人間模様がスピーディーに同時進行で描かれるという目まぐるしさ。この視聴者をぐるんぐるんと力技で振り回すような、ジェットコースター的なストーリーテリングがライムズならではの世界です。
現在、放送局のABCは木曜夜の19時から、『グレイズ・アナトミー』『スキャンダル』『How to~』と3時間続けてライムズ作品を放送しており、強豪CBSを上回る勢いで強さを見せています。黒人女性の活躍という意味でも注目を集めており、まさにライムズの黄金時代到来といった感があります。
………………………………………………………………………………
●今月のオススメドラマ
『FARGO/ファーゴ』
コーエン兄弟の映画を新たな装いでドラマ化
実際に起きた事件を基にした、ジョエル&イーサン・コーエン兄弟の傑作映画『ファーゴ』(1996)。そのテレビシリーズ版『FARGO/ファーゴ』は、コーエン兄弟も製作者として名を連ねてはいるが、映画の世界観を踏襲しつつも事件は違った展開を見せる。つまりオリジナルに大きく目配せをしつつ、テレビは独自の物語を描くという面白い趣向のシリーズだ。
舞台は、雪に覆われた極寒のミネソタ州の町ベミッジ。うだつのあがらない保険セールスマンのレスターは、口うるさく思いやりのない妻にうんざりしていた。そんなある日、放浪の殺し屋マルヴォと出会ったことから、事態はとんでもない殺人事件へと発展していく。女性警官モリーを中心とする捜査チームは、いかにして真相に近づいていくのか。
レスター役は、映画『ホビット』シリーズや『SHERLOCK/シャーロック』のマーティン・フリーマン。殺し屋を怪演するのは映画『スリング・ブレイド』のビリー・ボブ・ソーントン、警官役にコリン・ハンクスほか。
シーズン1は全10話で、2014年のエミー賞ミニ・シリーズ部門で作品賞ほかを受賞。映画とは違った展開と結末に、双方を見比べてみるのも一興だ。2015年には、別の事件を描くシーズン2が米国で放送予定だ。
映画&海外ドラマライター。女性誌、情報誌、ウェブ等に映画評やインタビュー等を寄稿。「BAILA バイラ」「eclat エクラ」「日経エンタテインメント!」映画サイト「シネマトゥデイ」などに連載中。著書に『海外ドラマ10年史』(日経BP社)。
[日経エンタテインメント! 2015年1月号の記事を基に再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。