2014/12/13

Money&Investment

実際の投資にROEを上手に利用する方法はないのか。大和証券の吉野貴晶チーフクオンツアナリストは「持続性と変化率に注目すべきだ」と指摘する。

持続性とは、足元のROEが高く将来も水準を維持できそうなこと。グラフAの折れ線(3)は、過去にさかのぼってある時点にROEが上位10%以内に入り、3年後も10%以内だった銘柄を選びながら投資を続けたと想定した試算だ。日本企業のROEはブレが大きく、現実には3年後のROEを予想するのは困難だが、高ROEを持続する銘柄は確実に高リターンをもたらしてきた。

吉野氏は高ROEを維持する企業の条件として、(1)売上高成長率(2)自己資本比率(3)売上高営業利益率の高さを挙げる。売り上げの伸びが重要なのは、それが利益成長の源泉だから。高い自己資本比率は景気変動への抵抗力を示す。経費削減や市況回復などでROEが改善しても一過性で終わりかねないので、安定的で高い利益率が必要という。

■過剰な株主還元はNG

こうした条件を満たす主な企業を抽出すると、高い技術力やブランド力、独自のビジネスモデルを持つ企業が多かった(表C)。田辺経済研究所の田辺孝則代表は「高ROEを持続する企業は株価が高くても長期保有できる銘柄が多い。ROEは長期投資では大切な指標」と主張する。

ROEが大きく改善する企業の株価も上昇しやすい。ただ、これも将来のROEの予測が必要になる。

30年目線の長期投資をうたうコモンズ投信では、「独自の予測とともに企業の中期計画も重視する」(伊井哲朗社長)という。ROEの数値目標があれば、経営者が資本効率の改善を約束したと評価できるし、ROEの変化率を判断する手掛かりにもなるからだ。

今後を占ううえで注目されるのが、機関投資家に株主総会での議決権行使を助言する米企業が「過去5年の平均ROEが5%を下回る企業のトップ選任に反対する」との基準を取り入れたことだ。基準をクリアするため自社株買いでROEを高める動きが広がるのではとの見方がある。

これに対して田辺氏は「ROEは利益の再投資で高めるのが本筋。長期投資家は、過剰な株主還元を企業の成長力の低下と見なす」と手厳しい。改善度合いをみるときはその内容まで吟味する必要がある。

日本企業全体でみれば、ROE改善の動きは始まったばかり。広木氏は「今後はROEを活用した投資が成果を上げる時代になる」と予想している。(編集委員 北沢千秋)

[日本経済新聞朝刊2014年12月10日付]

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