活躍した女性を一挙紹介 ウーマン・オブ・ザ・イヤー2015
日経WOMANは、各界でもっとも活躍した働く女性に贈る「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2015」を12月5日に発表しました。
「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」は、(1)働く女性のロールモデルを掲示、(2)組織の中に埋もれがちな個人の業績に光を当てる、(3)活躍した女性たちを通して時代の変化の矛先をとらえるという主旨のもと、1999年から毎年実施するアワードで、本年が16回目となります。
「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2015」大賞に選ばれたのは、社会に変革を起こすリーダーを育てるという理念を掲げ、生徒の半数以上を海外から受け入れる日本初の全寮制国際高校「インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢(ISAK)」を2014年8月に開校した小林りんさん(40歳)です。
小林さんは、高校時代にカナダの全寮制インターナショナルスクールへ留学。帰国して大学卒業後、外資系企業、ベンチャー経営参画などを経て、ユニセフでフィリピンの貧困層教育に携わっているとき、「アジアのハングリーな次世代の人材を育てる学校」を日本で作るという構想にリーダーとして参画することを決意。2008年に帰国後、資金集め、土地探し、各種の許認可、生徒の募集や教師の採用など数多くの課題を乗り越えながら、日本初の学校の開校を実現させました。
学校の準備を開始した直後にリーマン・ショックの影響で、当初見込まれていた資金が白紙となり、寄付金集めに奔走。2010年から始めたサマースクールによって、学校の認知度と信頼度を上げることで、開校までの期間に100人近くから14億円の寄付を集めることに成功しました。また、世界各国から一流の教師陣を集め、課題を見つけて解決できる力を身につけるカリキュラムを実施しながら、日本の学習指導要領も踏まえて学校法人としての認可を受けることで、日本の高校卒業資格が得られる国内初の全寮制国際高校となっています。さらに、経済的に恵まれない生徒を受け入れるための返済不要の奨学金の原資として、軽井沢町のふるさと納税を活用できるようにするなど、数多くの画期的な取り組みが、日本の教育界に大きなインパクトを与えています。
準大賞には、コンピューターで人の手を動かす技術を開発・販売し、世界中の研究者から注目を集めるH2Lのチーフリサーチャー・玉城絵美さん(30歳)、トイレ愛好家として、衛生的で快適に使える無水トイレをケニアで普及する事業に尽力するLIXILの山上遊さん(36歳)が選ばれました。
大賞
こばやし・りん
学校法人インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢(ISAK) 代表理事
●海外から半数以上の留学生を受け入れる、日本初の全寮制国際高校を2014年に開校
●資金ゼロで準備を開始し、6年で100人近くから14億円の寄付を集め、学校設立を実現
●ふるさと納税で生徒の奨学金を確保するなど、地域を巻き込んだ学校運営に成功
「社会に変革を起こすリーダーを育てる」という理念を掲げ、生徒の半数以上を海外から受け入れる日本初の全寮制国際高校「インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢(ISAK)」を2014年8月、長野県軽井沢町に開校。日本の正式な学校法人格を取得した全寮制国際高校は国内初となる。
高校時代にカナダの全寮制インターナショナルスクールへ留学し、多様な国籍や経済事情の生徒と触れるなか「恵まれている自分の運を多くの人のために使うべき」と使命感を抱く。帰国して大学卒業後、外資系企業とITベンチャーでビジネスの基礎を磨いた後、国際協力や教育の分野にキャリアを絞り込む。ユニセフの職員としてフィリピンで貧困層教育に携わっていたとき、格差と汚職が渦巻く状況を前に「社会を変えるリーダーの育成が必要」と痛感。アジアの次世代を担う人材を育てる学校作りの構想を聞き、そのリーダーとなることを引き受ける。資金ゼロの状態から寄付金集めに苦労するも、2010年からサマースクールを始めたことで、教育理念が多くの人に伝わり、開校までの約6年間で100人近くから14億円の寄付金を集め、開校を実現。さらに土地探し、各種の許認可、世界各国からの生徒の募集や一流の教師陣の採用など、数多くの課題を乗り越えてきた。多くの人を巻き込み事業を推進するリーダーシップと、困難を打破する強い実行力が、働く女性たちに勇気を与えている。
準大賞<リーダー部門>
たまき・えみ
H2L株式会社 チーフリサーチャー
●人の手をコンピューターで動かす世界初の装置を開発して販売。2014年に単年度黒字化を実現
●最先端の技術を研究者に安価で提供。イノベーションを促すリーダーシップを発揮
コンピューターで手を動かす装置や仮想世界に触れる端末を開発
最先端の技術で世界の注目を集める「アントレプレナー研究者」
東京大学大学院博士課程在学中に開発した、コンピューターで人の手を動かす技術「PossessedHand(ポゼストハンド)」が世界中の研究者から注目され、博士号取得後の2012年に起業。翌年からポゼストハンドを1セット80万円という安価で研究機関向けに販売し、多数の研究者が購入。研究成果を共有するとともに単年度黒字化を実現した。今後は仮想世界に触れられるウエアラブル端末を発売するなど、最先端の技術で他の研究者を巻き込みながらイノベーションを起こしている。
準大賞<キャリアクリエイト部門>
やまかみ・ゆう
株式会社LIXIL 総合研究所 新事業創造部
グローバル環境インフラ研究室 主幹
●ケニアでの無水トイレ普及事業で中心的役割を果たし、現地の生活環境改善に取り組む
●学生時代からトイレを研究し、生産現場や社外活動で実績を積み、キャリアを開拓
「トイレ愛好家」として、インフラが未整備な地域でも
衛生的で快適に使える無水トイレの普及事業にケニアで奮闘
水も電気も使わず、快適に使える無水トイレをケニアで普及する事業を先頭に立って進める。同事業はJICAの「第1回開発途上国の社会・経済開発のための民間技術普及促進事業」に採択。学生時代から「いいトイレをつくりたい」と研究を続け、INAX(現LIXIL)に入社。英語力やトイレの知識を磨き、市民講座でトイレの講師を務めた実績などが認められ、ケニアのプロジェクトに参画。希望のキャリアを切り開いた現在は1年の半分をケニアで過ごし、現地での普及事業に尽力する。
入賞<リーダー部門>
ほった・さとこ
独立行政法人 労働政策研究・研修機構 研究員
超高齢社会を地域で支える医療・介護の実現に向け
現場と政策、研究を結ぶキーパーソンとして活躍
超高齢社会に必須となる医療と介護、生活支援を一体化した「地域包括ケアシステム」。その具体策を現場側と政策側で構想する会議を立ち上げ、存在感を発揮。オランダで急成長する在宅ケアの日本版事業推進の旗振り役も務め、最先端の取り組みをリードする。
入賞<リーダー部門>
もりもと・さきこ
株式会社ユー・エス・ジェイ マーケティング部 プロダクト担当部長
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの業績のV字回復に貢献
『ハリー・ポッター』の新エリアを大成功に導く
2014年7月にユニバーサル・スタジオ・ジャパンにオープンした『ハリー・ポッター』の新エリアをはじめ、アトラクションやイベントなどを一から立ち上げるチームを率いる。過去最高の年間来場者数の達成が見込まれ、業績のV字回復に大きく貢献。
入賞<キャリアクリエイト部門>
おおもり・ともこ
Go Go Curry USA, Inc. President & CEO
女優、トップ営業を経て、カレーチェーンの米国支社CEOに就任
2年で年商を約3倍に伸ばす
石川県発祥のカレーチェーン「ゴーゴーカレー」の全米展開を進める。高校卒業後に渡米し、女優やテレビ局のディレクター、フリーペーパーの広告営業を経て、ゴーゴーカレー米国支社CEOに就任。米国で5号店までオープンし、売り上げを伸ばす。
入賞<キャリアクリエイト部門>
みたらい・たまこ
株式会社気仙沼ニッティング 代表取締役社長
ボランティア活動やコンサルタントを経て、気仙沼で手編みニットをつくる会社を創業
外資系コンサルティング会社、ブータン政府の首相付きスタッフ(フェロー)を経て、東日本大震災後、宮城県・気仙沼で地元の編み手が手編みするハイエンドのセーターやカーディガンを販売する会社を創業。初年度で黒字化を達成した。
入賞<ヒットメーカー部門>
かわむら・ゆり
シャープ株式会社 健康・環境システム事業本部 調理システム事業部 商品企画部 係長
茶葉を挽き、栄養成分を丸ごと飲める
「ヘルシオお茶プレッソ」を開発。生産台数11万台超の大ヒットに
茶葉を内蔵の臼(うす)で粉末状にし、栄養成分をそのまま飲める画期的な家電を開発。月4000台としていた生産目標台数を約5倍と大きく上回る11万台超の大ヒットに。健康志向の高まりに応える新しい飲料家電として市場の注目を集めた。
入賞<ヒットメーカー部門>
こばやし・やすこ
脚本家
アニメ版『進撃の巨人』のシリーズ構成と脚本を担当
世代や国境を越えたブームの火つけ役に
諫山創氏原作の漫画『進撃の巨人』のテレビアニメ化にあたり、原作を再構成し、作品の魅力を高めた脚本を制作。放送後はキャラクターと作品の人気に火がつき、海外でも大ブレイク。DVDも大ヒットし、企業コラボやタイアップも続出した。
入賞<ヒットメーカー部門>
よこて・りか
ライオン株式会社 ヘルス&ホームケア事業本部 ビューティケア事業部
「汗ジミ対策」をうたった制汗剤「Ban汗ブロックロールオン」を開発
5カ月間で累計250万個を売り上げ、現代女性の悩み解決に貢献
制汗剤として画期的な「汗ジミ」防止を打ち出した「Ban汗ブロックロールオン」の商品企画からプロモーションまでを主導。発売2カ月で累計販売個数100万個、5カ月で250万個を突破し、市場を活性化した。
[nikkei WOMAN Online 2014年12月5日付記事を基に再構成]
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