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第3回国際音楽祭NIPPON「諏訪内晶子&エンリコ・パーチェ デュオ・リサイタル」 日本で育ち、欧州で磨かれた技と“歌”

2014/12/5

「国際音楽祭NIPPON」が開かれている。芸術監督は世界的バイオリニストの諏訪内晶子。12月7、8日に横浜と名古屋でパーヴォ・ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマー・フィルハーモニー管弦楽団と協演するのをはじめ、「0歳児から聴くコンサート」やマスタークラス(公開レッスン)など、諏訪内個人の理想を反映した音楽祭だ。トヨタグループの支援を得て2012年に始まり、今年で3回目。11月30日、横浜みなとみらいホールでのピアノのエンリコ・パーチェとのデュオ・リサイタルを聴いた。

「国際音楽祭NIPPON」芸術監督の諏訪内晶子(11月30日、横浜みなとみらいホール)=写真 大杉 隼平

諏訪内は1990年チャイコフスキー国際コンクールのバイオリン部門で日本人初、史上最年少で優勝。パリに在住し、欧州を中心に国際的に活躍している。名実ともに日本を代表するバイオリニストの一人だ。そうした中で「このままソリストとして演奏活動を続けるだけでいいのか。音楽家として何か社会に貢献できないかと考えるようになった」と話す。そこで自ら企画したのが「NIPPON」と銘打った国際音楽祭だ。第3回は10月15日の福島県郡山市でのケント・ナガノ指揮モントリオール交響楽団チャリティーコンサートを皮切りに、横浜美術館の「ホイッスラー展」と連携した12月13日のコンサートまで続く。郡山、横浜、名古屋の3都市を会場としながらも、開催場所より諏訪内というアーティスト個人の思いを強く反映した音楽祭といえる。

なぜ「ニッポン」なのか。今でこそ幼少時からクラシック音楽の本場・欧州に移り住んで研さんを積む演奏家が出てきているが、諏訪内は桐朋学園の「子供のための音楽教室」を中心にバイオリンの演奏技術の基礎をすべて日本で身に付けた。もちろんその技術は欧米に渡ってからも磨きをかけられ、進化していった。それでも日本で技術をはぐくみ、世界に打って出た日本人バイオリニストとして、恩返しの気持ちが音楽祭の企画に込められているようだ。世界一流の音楽仲間との協演によって高品質の演奏を披露するとともに、12月11日には名古屋市のトヨタ産業技術記念館大ホールで「0歳児から聴くコンサート」を開催し、マスタークラスを名古屋や横浜で開くなど、教育プログラムにも力を入れている。

今回の横浜での開催を告げる11月30日の「諏訪内晶子&エンリコ・パーチェ デュオ・リサイタル」は、彼女が音楽祭の柱の1つに掲げる「トップ・クオリティー」を証明する演奏会の位置付けだろう。「10年くらい前にBBCラジオでパーチェさんの演奏を聴いて以来、ずっと協演したいと思っていました」と諏訪内は終演後のステージ上でのトークで語った。パーチェはイタリア生まれのピアニスト。1989年のフランツ・リスト国際ピアノコンクールで優勝した実力派だ。この2人によるリサイタルの演目はモーツァルト、フォーレ、リヒャルト・シュトラウスのそれぞれの「バイオリンソナタ」と、武満徹の「悲歌」の4作品。諏訪内がBBCで聴いたパーチェの演奏というのは、このうちR・シュトラウスの「バイオリンソナタ」のピアノパートだったという。

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